
お仕立てのこだわりポイント!きものに柄を活かす裁ち合わせとは?
たかはしで、墨流し作家・恭平さんの墨流し染めで縦に柄が分かれているタイプの反物を発売しました。
同じように反物の右と左で柄が違う反物を見かけたことがあると思いますが、その反物からきものやコートを仕立てるとき、どのようにされているでしょうか。
たとえば、何も考えずにお任せして、仕上がってきたきものが自分の想像とは違ったものに仕上がってきたら…。
せっかくお金をかけてきものを仕立てるならば、満足してたくさん着たくなるような仕上がりにしたいですよね。
今回は、右と左で柄が違う反物をどのようにして柄を合わせていくのかについてお伝えします。
たくさんの組み合わせがある柄合わせ
たかはしのウェブ担当がこの商品を出すと言ったとき、「お客さんが柄合わせに困るよね」という話になりました。そのため、柄合わせをどのようにすればいいのかを説明する表を作ることにしました。
するとものすごい数の組み合わせがあって、その中からこのパターンで作りたいですと選んでもらうための表です。実際に作ってみたら結構な量になったので、作った本人もびっくりしていました(笑)
柄合わせを考えていくとき、大枠で気をつけたいポイントは3つ。
まずひとつめは、反物の幅の中でどこを背中にするのか、どこを身ごろにするのかを考えることです。背中や脇のラインにどんな柄をもってくるのかによって印象が変わります。
ふたつめは、衿と衽です。どちらにどの柄をもってくるのかによっても違ってきます。
三つめは、小紋テイストにしたいのか、粋なパーティー着テイストにしたいのか。
さらにはっきりと気をつけたいことは縫い込み部分です。昔に比べて今は反物の幅が広くなっています。
たとえば、細身の方の場合、反物の縫い込みがとても多くなります。そのため、どこが縫い込まれるのかも考えます。
背中心にどちら側の柄をもっていくのかにもよりますが、たとえば、たくさん出したい色柄の部分があったとき、柄の多い側を背中心にもってくると、脇に柄の少ない側が縫い込まれます。
仕立てる際に、背中心はだいたい約1cmぐらい縫い込まれます。反物の幅が標準で30cmぐらいのため、脇で7~9cmぐらい、細身の方の場合、10cmぐらい縫い込まれます。そのため、柄の少ない無地場が減って、柄の多いところが全体に対して多くなります。
逆に、柄を少なくしてスッキリした印象にさせたい場合、背中心に柄の少ない無地場をもってくれば、柄の多い部分が脇で縫い込まれるため、まったく反物の見え方が違ってきます。
昔、一般的と言われていた「追っかけ」という色柄の濃淡を繰り返す合わせ方があります。
たとえば、柄の強い部分の隣には必ず柄の薄い部分がくるようにして、右の袖口に柄の強い部分が欲しいとなったら、濃淡濃淡濃淡濃淡となります。
逆に、左の袖口に濃い柄が来るようにすると「追っかけ逆流れ」になります。
ほかにも、ぼかしや縞でもグラデーションで薄い縞から濃い縞になっていく粋な柄もあると思いますが、同じように柄の強い部分が縫い込まれるのか、無地場の部分が縫い込まれるのかによって、柄の出方がかなり変わります。
もし「追っかけ」の合わせ方がよければ問題はありませんが、柄の強い部分をたくさん出したい場合には、合わせ方を変える必要があります。
たとえば、背中心に柄の強い部分を合わせると柄が強く出る部分が多くなります。袖は両袖口に柄の薄い部分をもっていくことで、柄の強い部分を体の中心に寄せる合わせ方もできます。
逆に両袖口に柄の強い部分をもっていくことで、肩のところで無地場の部分が重なり、肩から袖と背中に向かって色がふわっと濃くなる作りにすることもできます。
こんな風に柄合わせを自分で考えて楽しんでもらえたらいいかなと思います。
お仕立ての際に黙ってお店に任せてしまうと、どんな風に仕立てられたとしても文句の言えないところです。指定しなかった点や店側もきちんと希望を聞かなかったということもあるとは思いますが、自分が買ったものに対する責任があると思います。もちろん、それを売ったお店の責任もあります。
たかはしでも、うっかりして柄合わせを聞かないまま注文を受けて、後からLINEで打合せをしたりということもあります、すみません。
反物を買うときには、柄合わせも考えて、気をつけたらいいかなと思います。
身ごろと袖の合わせ方を、右から追っかけるのか左から追っかけるのか、柄を寄せてくっつけるのか、柄を離してくっつけるのか、背中はくっつけたけど袖は一方に寄せるのか、組み合わせはいっぱいあります。
たかはしの販売ページでは、身ごろと袖の柄のパターンを選ぶと柄合わせを決めることができるので参考にしていただければと思います。
もうひとつ大事なことは、衽と衿が反物のどちら側になるのかということです。
きものを仕立てる際、衿・衽は反物を、衽のラインと衿のラインで真ん中で裁ちます。
たとえば、衿に色柄の弱い側を持ってきたいのか、色柄の強い側を持ってきたいのかで全然印象が変わります。こちらもどっちがいい悪いではなくあくまで好みです。
それから背中に反物のどちら側を持ってくるのかによって、前に生地が繋がっているので、前面の印象も違ってきます。
たとえば、全体をスッキリとした印象にしたいために、背中に無地場を合わせたとします。その場合、前身ごろも同じように無地場が全面に来ることになります。
脇に縫い込みがだいぶ入ることになると大人しい印象になるところに、衿に色柄の強い方を合わせると、衿と脇に色柄の強い部分が見えるだけとなります。
そのため、前身ごろとのバランスも大きく関係します。
一番重要視しているのは衿元に反物のどちら側を持ってくるかです。
その次に大切に考えたいのが、衽に反物のどちら側を持ってきたらいいのかです。
たとえば、無地場を前に持ってきたとして、そこに無地場の衿が付いていたら、少し寂しい印象になりますよね。
衿に色柄の強い側を持っていきたい場合、柄目が変わっても影響が少ない反物であれば、生地を逆さに合わせることもできたりします。
柄合わせを考える時、一番は反物でどの部分を見せたいかによって脇と背中の縫いをどちらに連れてくるのかを決めることです。二番目に衿の顔映りを考えること。そして、三番目に衽と前身ごろの合わせ方がどうかを考えて「裁ち合わせ」を決めていくとよいと思います。
以上の3つを考えることで、反物の柄をきものにどう生かすかを決めることができます。柄合わせを考えることで、仕立て上がりを待つ間のワクワク感も高まります。
反物を買うときには、なにもかもお店に任せきりではなく、お店の人と一緒にどう仕立てるかも考えて、満足の行く仕立て上がりにしてください。ご参考になれば幸いです。
女将による詳しい裁ち合わせの動画はこちらをご覧ください。
【きものがもっとワクワクする!お仕立てでこだわりたいポイント!「裁ち合わせ」どうしてる?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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