平成28年4月
最近、小学校の卒業式を袴姿で迎えるというのが全国的に流行っています。
お下げやおだんごに大きいリボンの女の子、本当に可愛らしいですね。
幼さの残るあの学齢だからこその袴姿は、成人式の華やかさとはまるで違う意味での愛らしさが際立っていると思うのは私だけではないでしょう。
だからこそ、こんなにブームになっているのだと思います。
最近ではそれに加えて、ちょっと大きい紋付を照れ臭そうに着ている男の子も増えてきましたね。
これはバレンタインデーのように、業界が意識的に仕掛けた、というものとはまるで違うブームだと私は考えています。
だいたい今の呉服業界ならいざ知らず、十年前の呉服業界はまだまだ売り手市場で、お客様のニーズに応えようなんて殊勝なメーカーや問屋はほんの一握りでした。
ましてや業界が横並びで手を携えて、新たな市場ニーズを生み出そうなんて考えてるお偉いさんはまずいなかったと思います。
今の着物ブームはエンドユーザーから湧き上がったものだと言えます。
業界はただそれを慌てて追いかけて来ました。
その着物ブーム(本当はブームとは言いたくないですが)のお陰で死に絶えていたと思えたお召しや銘仙、木綿着物など、日常着物が少しずつ復活して来ましたね。
ではなぜ湧き上がったきたか…。
それはあまりに世の中から消えつつあった「着物姿」に対して、逆に「着物着たい!」「着物に触れたい!」欲求がムクムク芽生えたためと私は考えています。
なぜなら、着物が日本人の体に染み付いていたからに他ならないと思うからです。
着物姿のおばあちゃん、参観日のお母さんの着物の柄、晴れ姿のお姉ちゃんの着物の艶、色、ツノを隠した親戚の花嫁さん。
家に帰ってくると着物に着替えてくつろぐお父さん。
そして時折着せられる着物の感触、その時感じるなんとも言いがたい高揚感…。
当たり前にあったものが失われつつあったからこそ、内なる奥底から湧き上がってきて欲した事が、今の着物ブームなのだと私は感じています。
そう、これが大切なのです。
だからなるべく幼いうちから着物に触れること、着物に包まれること、この経験をどれだけ体に通せるかが、今後の着物の行く末にかかってくるのだと思います。
掛け衣装から始まり、ひな祭り、夏の浴衣、七五三、そして小学校の入学卒業など、日常的な洋服では得られない特別感が何より大切で、またその経験は日本人としてのアイデンティティを育むことにも繋がるはずです。
着物を通して「特別な高揚感」を得て、お子さんのみならず、男性も女性もみんな日本人であることをも味わって欲しいですねぇ。