平成30年10月

きものよきもの

きものとの関わりは小学生の時に日舞を習ったことが始まりでしょうか。
いえ、その前に母と祖母がほぼ毎日きもので生活しているという姿がありました。
中学で日舞をやめてしまってからはあまり袖を通すこともなく、二〇代半ばで急遽家業である京染悉皆店を継ぐことになってしまいました。

特に興味もなかった仕事のうえ、正直いやでした。
お店に入ってからしていたことは、きものを解くこと、端縫いすること、袋帯の千鳥掛け、車の運転手、荷物持ち、そんなところでしょうか。
接客もなんとなく覚え、そばで仕事を見ているうちにだんだんに覚えていき、見立てができるようになってからやっとやりがいが芽生えたのを今でも鮮明におぼえています。
一人で見立てができるまで三年、なんとなくの不安が消えたのは五年目でしょうか。
それでも毎回が勉強で、今でも迷うことはよくあります。

初めに疑問を持ったのは、はたして若い人たちはきものを着たい!と思っているのだろうか、ということでした。
よく買ってくださる母の年代の方たちも買う割には着る回数が少ないことも気になりました。
半衿つけるのが面倒、出すのが面倒、仕舞うのが面倒、お金がかかりすぎる等々、せっかく買っても着ないのは本末転倒です。
 
是非、着てほしい!
せっかくあるのにタンスの肥やしにしないでほしい!

これが肌着を作るきっかけになりました。
それからの私は「着てほしい、そのためには何をすればいいだろう。」がすべてでした。

着た後に高額のお手入れが待ってるというイメージを払しょくするため丸洗い、シミ落としのセールを始めたのも、全ては着てもらうためです。
最短少額で覚えられる着付け教室はその最たるものです。
いかに、簡単で楽で、それでも綺麗に見える着付けを目指しました。
手を抜いてもクオリティを下げない着付け、そればかり考えていたおかげで新たな商品も次々生まれました。
 
そしてこのたび、手ほどき七緒ということで
『たかはしきもの工房 高橋和江さんの 十人十色の「補整」術』という本が今月五日に出版されます。
ただ愚直に追求してきただけのことですが、このような形になることは本当にうれしいです。
ぜひ読んでやってください~