令和3年9月

きものよきもの

たかはしは、和装肌着や小物のほかにもいろいろな商品を作っています。
OEMで着物ハンガーや洗濯ネットのような工業用品も作っているし、先月は「和乃か」という香炉と練香のセットを発売しました。
練香は茶道の世界では当たり前のお香ですが、一般的ではないものでした。
ですが、この香りを家でも楽しみたいと願っていた結果の商品化です。

実はそのような思考経路でずっと形にしたいと思っていたものを2年前に商品化しました。
モノがモノだけに宣伝もしていませんが「びゃくえ」という白装束です。
びゃくえは大人用、嬰児用、ペット用の3タイプがあります。
それぞれ作った理由は別にありますが、共通で願っているのは

『人生最後に着るものは上質でありたい。また、上質なもので見送ってあげたい。』

ということです。

私の元の仕事(今もやっていますが)は京染悉皆で、きものの組成を視ることが仕事の一部です。
触ってもわからないものがあれば、時には燃やしてみるのです。

見分けるのは、天然繊維である絹、綿、ウール、麻、それに化学繊維です。多くの布を燃やしてきました。
その経験の中で、それぞれの燃え方、炎の燃え上がる感覚や臭い、温度など全ての点で絹がずば抜けて良いということを感じ続けてきました。
化学繊維は燃え方が何もかも最悪で、ぼぼーッと燃え上がる炎とともに異臭がします。
そして、その燃えカスを触るとタール状の、本当に熱いものがべっとり張り付いてきて火傷をします。

その点、綿やウールの場合、炎は小さく、ふわふわっと消えてゆきます。
絹は小さな炎とともに、燃えカスが線香花火の玉のように丸くできるのですが、触るとホロホロとほどけるのです。

もちろん、亡くなっているのに熱いと感じると思っているわけではありません。
でも、タール状のものに全身包まれるのは、私も大切な人もなんだか嫌だなぁと考え続けてきました。
大人用は自分や家族のため、嬰児は親御さん、ペットは飼い主さんのためです。

終活という言葉があります。
そのブームのずっと以前から実は死装束を作っていました。
終活、わかりやすくていい言葉だなぁと思います。
死は忌み嫌うものではなく、必ず誰にでも訪れるということを自覚することが今の生を良いものにすると思っています。