平成24年4月
もうだいぶ暖かくなってきましたね。
ああ、桜の季節でもあります!なぜか嬉しいですね。
うちの隣りの公園にも桜の木が植えてあってそれはそれは綺麗なこと、仮設住宅が立ち並んでいますが、きっと住人の皆さんも嬉しいことでしょう。
ところで、嬉しいと言えば…
当店では今月『被災地に着物を贈ろう』というプロジェクト(と言っても、これは私が呼びかけて勝手に立ち上げたのですが 笑)により、被災したみなさんに着物を贈るという配布会を致します。
これは震災以降、全く着物を無くしてしまった方たちの落胆ぶりを見続けた中で、思いついたことなのです。
まず始めの1枚があったなら…
腰紐の1本もないという状態のままだと、もう一度全てを揃える気にはならないみたいなのです。
どんなに好きでも、どんなに着物を着たくても、です。
着物を着ていただきたい、といつも願っている私にとって、それはとても辛いことでした。
そんな時、上京した際にこんな話を聞いたのです。
『リサイクルショップに下取りに出すとタンスひと棹がたったの千円』と…。
何が入っていてもです!
これは大変なショックでした。
そこに結城や大島、金彩の留袖、友禅の訪問着が入っていてもです。
着物はたとえ着なくても捨てられないものです。
そういう意味ではたとえ千円でもただ廃棄したということにはならないから気持ちが落ち着くのかもしれませんね。
なんというもったいないこと、被災地では大事な着物が津波にさらわれてみんな悲しんでいるというのに…
と、ここではっとしました。
そうだ、その着物を被災地にいただこう!と
そして着物の醍醐味である『受け継ぐ』文化も大事にしようと!
そこで満点スリップの販売店や知り合いの呉服屋さんに呼び掛け、もう着なくなった着物を集めていただくことをしています。
頂く時には『お繋ぎカード』という、差し出して下さる方のお名前と住所がわかるカードを付けていただき、頂いた方にはお礼のおハガキを必ず出してもらうのです。
着物によって人と人が繋がる、なんて素敵でしょう。
着物というものに染み込んだ『想い』を繋ぐことが、実は私達の仕事なのかもしれません。