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きもののお仕立て代、安い?高い?

きものを着はじめてすぐはあまり気づきにくいかもしれませんが、少し着慣れてくると着るきものによって着ごこちが違うことを感じることもあると思います。 たとえば、この違いは生地の問題なのか、袷だからか、単衣だからだろうかと考えるうち、仕立ての重要性に気づく人が増えてきています。 今回は、きもののお仕立て代の考え方や選び方について、お伝えします。 着ごこちを作る反物を大切にする仕立て ここ10年で、きものを着る人が増えましたが、それまできものを着ない時代が長かったため、その間に仕立てに対する認識が相当衰えたと感じています。 お仕立ての仕上がりがキレイであることはもちろん大事ですが、たかはしで一番大事にしているのは着ごこちです。 仕上がりがキレイではないけれど着ごこちがよいきものは存在しません。キレイな仕立てでありつつ、着ごこちも考慮してくれる和裁士さんや仕立てを大切にしたいと考えています。 京染め屋としては、反物に傷をつけないことがとても大事だと思っています。 きものが仕立てられて納品されるときには見えませんが、何十年も後になってから生地に傷がついていることに気づくことがあります。 たとえば、寸法を5分広げようときものを解いてみたら、生地にチャコペンで線が引いてあったり、ヘラで傷つけられていたりして、洗い張りしても修復できない傷が見つかることがあります。 これは反物への愛のなさの表れだと思います。きものは、着まわしたり、仕立て直したり、代々受け継ぐことができます。だからこそ、反物を大事にする和裁士さんや仕立て屋さんを大切にしたいと思っています。 きものは、裁ち落としで余分なはぎれが出なければどこも欠けていないので、解いて一枚の反物に戻すことができます。 洋服の場合、型紙に合わせてカットしてしまうため、生地に戻すことはできません。生地をカットすることで余分を無くし、体に沿うラインを作ります。 きものは直線だけで作られるわけではありませんが、たとえば、衿元がキレイに畳みこんだ中でぐちゃぐちゃにならないようにも配慮しながらつけられています。繰り越しを切って裏表どちらに返しても問題がないようになど、きものは、いろんな工夫がされています。 一枚の反物を無駄にすることなく工夫がされてきたきものなので、仕立ての際に、印で傷が付けられてしまうのは悲しいです。 仕立て直さないと決めたものは、どうでもいいと考えるのもひとつだと思います。 たとえば、ミシン仕立てにするか、腕のいい仕立て屋さんにするか、そこそこの仕立て屋さんにするのか、選択できるのであれば、自分はどうしたいのか、考えましょう。 たかはしでは、直接仕立て屋さんと繋がっていて、Aさん、Bさん、Cさんと振り分けながら仕立てを頼んでいます。もし万が一、何か問題が発生しても対応できるような仕組みを作っています。 業者さんに一括して依頼するお店もありますが、業者さんの個性を信頼して依頼する場合もあります。それぞれのお店や業者さんによって違うので、仕立てについて考慮した上で、どこに依頼するかを選んでほしいと思います。 たとえば、安く仕立てたいのであれば、とにかく値段が安いところにお願いすればいいですし、着ごこちを重視したり、反物を大事に考える人にお願いしたいのであれば、そういう和裁士さんやお店を探して繋がることも大事だと思います。 きものの仕立て代が安すぎると言える理由 足かけ7年、和裁職人大賞を東京キモノショーで発信していて、星獲得者を毎年輩出しています。 和裁士さんの数が減少していることや和裁士さんを取り巻く環境が懸念材料としてあって、ずっと何かで発信したいと思っていて実現しました。 最近では、YouTubeやFacebookでも、和裁職人を守ろうという動きが見られますが、これは本当に大事なことです。 和裁士さんは高価な反物にはさみを入れるリスキーな仕事で、技術を身につけるためには学校で4年間学び、その後も一人前になるまで格安で使われるような修業期間があり、プロへの道は厳しいです。 国家資格でもあり高い技術を持ちながら、時給1000円に満たない賃金で働いている和裁士さんが多いのが現状です。 縫製工場でも、時間当たりの生産量が重視されますし、手も荒れてしまうことが多いです。 早く縫うことを優先すると粗雑になってしまったり、丁寧さを優先すると一枚当たりにかかる時間給が高くなる問題を、せめぎ合ってどこに落とし込むのかがお店や業者の手腕にもなります。 では、きもの一枚を縫うのにどれくらいの時間で縫えると思いますか。 反物によっては耳がつっていたり、地の目が曲がっていたりすると、地のしに1日をかける方もいらっしゃいます。 切って済むのであれば時間がかかりません。反物はものによって、ラッキーと思える素直な反物と、強情っぱりな反物と当たり外れがあると思います。 おそらく一枚のきものに平均20時間から30時間はかかると考えています。一日8時間週5日とするとひと月平均172時間働いて、一枚25時間かかるとするとひと月で6枚から7枚です。 一枚の仕立て代を25,000円もらったとしても、月15万~20万円です。 これが高いか安いかは意見が分かれると思いますが、全然安いと思います。なぜなら、正社員として雇用されているならいざ知らず、個人で請け負っている場合がほとんどですから、雇用保険も社会保険もなく、電気水道光熱費を払って、保障もないわけですから。 もし和裁士さんに30万~40万円を手にしていただくとなると、仕立て代が5万円になるわけです。 反物に対しての愛のない人で仕立ての腕がいい人はいないと思っています。 考える力のある人、創意工夫ができる、クリエイティブな力を持っている人、課題や物事に対して掘り下げがきちんとできる人が腕がよくなっていきます。 そんな素晴らしい人たちが世の中にいるのに、その人たちに仕立てをせずに、安い仕立て代をもらうより他所で働いた方が儲かると言われないような金額にしていく必要があると思います。 たかはしも業者さんとの間に入ってお仕立ての仲介をしますが、その際、お店の手数料として2割ぐらいをいただいています。この金額を多いか少ないか妥当と思うかはそれぞれだと思います。 お店でも人件費がかかります。検品したり、伝票を書いたり、きものをたとう紙に入れたり、いろんなことをします。お仕立てに手数料2割いただいても実は赤字ですが、サービスの一環として考えています。 この組み立てをよく考えた上で、お仕立てを和裁士さんに直接お願いしたい場合は、ネット上で発信している和裁士さんと直接繋がるといいと思います。 ただし、万が一、裁ちミスがあったり、汚れ・シミがついてしまった、思っているように仕立てあがらなかった場合などには、間に立つ人間が居ないため、和裁士さんと話し合うなど、ご自身で対応する必要がでてきます。 お店として間に立つ場合は、仕立て屋さんも守る、お客様も守るという立ち位置をきちんと守った上で手数料をいただく分には、2割が3割でも4割でも5割でもいいと思っています。 ここまでの話を踏まえても、現状の仕立て代ではあまりにも安いのではないでしょうか。 たかはしでは、仕立て代をランク分けしていて、ハイテクミシンを含めて一枚の値段が2万円から5万円までの4段階に分かれています。仕立ての腕によって金額が異なる方式を取っています。 きもののお仕立てに限ったことではありませんが、すべて人任せにすると、満足いきません。 たとえば、とくに希望も伝えず仕立てをお任せしますとお店にお願いした結果、こんなこと頼んでいないとトラブルになるケースを出先のお店でも聞くことがあります。実際、対応するとなると困ったお客様だと思います。 やはり任せる側には任せた責任があって、大人同士のお付き合いや取引の中には、その責任を受け止める覚悟が必要です。お金を払う側が偉いとか何を言ってもいいわけではなく、相互で信頼しあう関係性を築いていくのに尽きると思います。 ぜひ、自己責任で楽しんでください。 女将による仕立てや和裁士さんへの愛ある動画はこちらをご覧ください。 【聞きたいけど聞けない、きもののお仕立て代を紐解く!お仕立て代、高い?安い?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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お仕立てのこだわりポイント!きものに柄を活かす裁ち合わせとは?

たかはしで、墨流し作家・恭平さんの墨流し染めで縦に柄が分かれているタイプの反物を発売しました。 同じように反物の右と左で柄が違う反物を見かけたことがあると思いますが、その反物からきものやコートを仕立てるとき、どのようにされているでしょうか。 たとえば、何も考えずにお任せして、仕上がってきたきものが自分の想像とは違ったものに仕上がってきたら…。 せっかくお金をかけてきものを仕立てるならば、満足してたくさん着たくなるような仕上がりにしたいですよね。 今回は、右と左で柄が違う反物をどのようにして柄を合わせていくのかについてお伝えします。 たくさんの組み合わせがある柄合わせ たかはしのウェブ担当がこの商品を出すと言ったとき、「お客さんが柄合わせに困るよね」という話になりました。そのため、柄合わせをどのようにすればいいのかを説明する表を作ることにしました。 するとものすごい数の組み合わせがあって、その中からこのパターンで作りたいですと選んでもらうための表です。実際に作ってみたら結構な量になったので、作った本人もびっくりしていました(笑) 柄合わせを考えていくとき、大枠で気をつけたいポイントは3つ。 まずひとつめは、反物の幅の中でどこを背中にするのか、どこを身ごろにするのかを考えることです。背中や脇のラインにどんな柄をもってくるのかによって印象が変わります。 ふたつめは、衿と衽です。どちらにどの柄をもってくるのかによっても違ってきます。 三つめは、小紋テイストにしたいのか、粋なパーティー着テイストにしたいのか。 さらにはっきりと気をつけたいことは縫い込み部分です。昔に比べて今は反物の幅が広くなっています。 たとえば、細身の方の場合、反物の縫い込みがとても多くなります。そのため、どこが縫い込まれるのかも考えます。 背中心にどちら側の柄をもっていくのかにもよりますが、たとえば、たくさん出したい色柄の部分があったとき、柄の多い側を背中心にもってくると、脇に柄の少ない側が縫い込まれます。 仕立てる際に、背中心はだいたい約1cmぐらい縫い込まれます。反物の幅が標準で30cmぐらいのため、脇で7~9cmぐらい、細身の方の場合、10cmぐらい縫い込まれます。そのため、柄の少ない無地場が減って、柄の多いところが全体に対して多くなります。 逆に、柄を少なくしてスッキリした印象にさせたい場合、背中心に柄の少ない無地場をもってくれば、柄の多い部分が脇で縫い込まれるため、まったく反物の見え方が違ってきます。 昔、一般的と言われていた「追っかけ」という色柄の濃淡を繰り返す合わせ方があります。 たとえば、柄の強い部分の隣には必ず柄の薄い部分がくるようにして、右の袖口に柄の強い部分が欲しいとなったら、濃淡濃淡濃淡濃淡となります。 逆に、左の袖口に濃い柄が来るようにすると「追っかけ逆流れ」になります。 ほかにも、ぼかしや縞でもグラデーションで薄い縞から濃い縞になっていく粋な柄もあると思いますが、同じように柄の強い部分が縫い込まれるのか、無地場の部分が縫い込まれるのかによって、柄の出方がかなり変わります。 もし「追っかけ」の合わせ方がよければ問題はありませんが、柄の強い部分をたくさん出したい場合には、合わせ方を変える必要があります。 たとえば、背中心に柄の強い部分を合わせると柄が強く出る部分が多くなります。袖は両袖口に柄の薄い部分をもっていくことで、柄の強い部分を体の中心に寄せる合わせ方もできます。 逆に両袖口に柄の強い部分をもっていくことで、肩のところで無地場の部分が重なり、肩から袖と背中に向かって色がふわっと濃くなる作りにすることもできます。 こんな風に柄合わせを自分で考えて楽しんでもらえたらいいかなと思います。 お仕立ての際に黙ってお店に任せてしまうと、どんな風に仕立てられたとしても文句の言えないところです。指定しなかった点や店側もきちんと希望を聞かなかったということもあるとは思いますが、自分が買ったものに対する責任があると思います。もちろん、それを売ったお店の責任もあります。 たかはしでも、うっかりして柄合わせを聞かないまま注文を受けて、後からLINEで打合せをしたりということもあります、すみません。 反物を買うときには、柄合わせも考えて、気をつけたらいいかなと思います。 身ごろと袖の合わせ方を、右から追っかけるのか左から追っかけるのか、柄を寄せてくっつけるのか、柄を離してくっつけるのか、背中はくっつけたけど袖は一方に寄せるのか、組み合わせはいっぱいあります。 たかはしの販売ページでは、身ごろと袖の柄のパターンを選ぶと柄合わせを決めることができるので参考にしていただければと思います。 もうひとつ大事なことは、衽と衿が反物のどちら側になるのかということです。 きものを仕立てる際、衿・衽は反物を、衽のラインと衿のラインで真ん中で裁ちます。 たとえば、衿に色柄の弱い側を持ってきたいのか、色柄の強い側を持ってきたいのかで全然印象が変わります。こちらもどっちがいい悪いではなくあくまで好みです。 それから背中に反物のどちら側を持ってくるのかによって、前に生地が繋がっているので、前面の印象も違ってきます。 たとえば、全体をスッキリとした印象にしたいために、背中に無地場を合わせたとします。その場合、前身ごろも同じように無地場が全面に来ることになります。 脇に縫い込みがだいぶ入ることになると大人しい印象になるところに、衿に色柄の強い方を合わせると、衿と脇に色柄の強い部分が見えるだけとなります。 そのため、前身ごろとのバランスも大きく関係します。 一番重要視しているのは衿元に反物のどちら側を持ってくるかです。 その次に大切に考えたいのが、衽に反物のどちら側を持ってきたらいいのかです。 たとえば、無地場を前に持ってきたとして、そこに無地場の衿が付いていたら、少し寂しい印象になりますよね。 衿に色柄の強い側を持っていきたい場合、柄目が変わっても影響が少ない反物であれば、生地を逆さに合わせることもできたりします。 柄合わせを考える時、一番は反物でどの部分を見せたいかによって脇と背中の縫いをどちらに連れてくるのかを決めることです。二番目に衿の顔映りを考えること。そして、三番目に衽と前身ごろの合わせ方がどうかを考えて「裁ち合わせ」を決めていくとよいと思います。 以上の3つを考えることで、反物の柄をきものにどう生かすかを決めることができます。柄合わせを考えることで、仕立て上がりを待つ間のワクワク感も高まります。 反物を買うときには、なにもかもお店に任せきりではなく、お店の人と一緒にどう仕立てるかも考えて、満足の行く仕立て上がりにしてください。ご参考になれば幸いです。 女将による詳しい裁ち合わせの動画はこちらをご覧ください。 【きものがもっとワクワクする!お仕立てでこだわりたいポイント!「裁ち合わせ」どうしてる?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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和装肌着の洗濯、ネットに入れる?入れない?

普段、ご自宅での洗濯で和装肌着や補整用品・着付け小物など、どのように洗濯されていますか? たとえば、たかはしでは麻綿を使っているため、綿がよれないためにはどうすればいいかというご質問をいただくことがあります。その際、洗濯ネットを使わない方もいれば、何でも洗濯ネットに入れる方もいます。 もちろん、洗濯ネットに何を入れて洗濯するのかの基準は人それぞれでよいと思いますが、女将流の洗濯ネットを使う基準について、お伝えしていきます。 洗濯ネットを使うメリットとデメリット たかはしの商品の場合、ひもが長いものが多いです。 たとえば、肌着をそのまま洗濯すると、洗濯物がひもに絡まってしまいますので、ひもが長いものを洗濯ネットに入れることで、ほかの洗濯物と絡みにくくなります。 一般的に、ドラム式の洗濯機より、縦型の洗濯機は生地の摩耗が大きいため傷みやすいといわれていますが、その分、汚れ落ちがよいです。 洗濯ネットに入れるメリットとしては、生地の表面の摩耗を防ぎ、毛羽立ちを抑えることができます。天然素材のものや、型崩れを防ぎたいものには、洗濯ネットが有効です。 洗濯ネットを使うかどうかのポイントは、ひもが長いもの、表面の色が綺麗なものや、発色がよいもの、型崩れさせたくないものなどです。また、金具が付いている場合は、ほかの洗濯物に悪さをしないようにするためにも、洗濯ネットに入れることで守られると思います。 逆に、洗濯ネットに入れるデメリットは、汚れ落ちが弱くなることです。 洗濯ネットに入れると、洗濯物が動きにくくなるため、汚れが落ちにくくなります。そのため、部分的に汚れがひどいものは、先に石鹸をつけて予洗いするなどの配慮が必要です。 たかはし商品の洗濯、ネットを使う?使わない? たかはしの商品についてですが、脱着テープが付いているもの、とくにうそつき袖などは、脱着テープのオス側がほかの洗濯物に悪さをするので、ネットに入れることをおすすめします。 メス側はやわらかいので当たってもほかの洗濯物に悪さはしません。 脱着テープの硬い部分があらわになっているものは、単体で洗濯ネットに入れるとよいです。汚れ落ちのよさや、ほかの洗濯物と絡まないようにするためや、洗濯ネットの袋が傷つく場合を想定して同じ洗濯ネットを使うのもおすすめです。 また、「満点腰すっきりパッドスキニー」は、意外と洗濯ネットに入れなくても大丈夫です。オスの面積が大きいものは貼り付く力が強いので、テープがきちんと貼り付けてあれば、洗っている間にはがれることがありません。表面が毛羽立つこともない素材なので、汚れ落ちのよさを優先するなら洗濯ネットに入れなくても大丈夫です。もし心配な場合には、洗濯ネットを使うとよいです。 「洗えるメッシュ帯枕…
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正絹の帯揚げを手軽に自宅で洗濯する方法

気になる汚れが付いてしまったり、しわくちゃになった帯揚げ、どのようにお手入れしていますか? ※女将のInstagramより こちらの投稿はご覧になられたでしょうか。洗濯した後の帯揚げを、ロフトの手すりに干したのを撮影し、SNSに写真を投稿しました。 するとコメント欄に「盛大に洗っていますね」、「洗ってもいいんですか?」など、ご意見をいただきました。 今回は、帯揚げの洗い方の注意点についてお伝えしていきます。 洗濯桶で絹の帯揚げを洗う場合の順番とは SNSで投稿した写真にある帯揚げのうち6枚の帯揚げを並べています。 これらの帯揚げを洗濯桶で洗う場合、どの順番で洗っていくのかを順番に並べたものです。 まず、薄い色から洗いますが、ピンクの帯揚げでも初めて洗うときは、ピンクでも色が少し泣くと思っています。色が泣くというのは、染料の色が落ちることをいいます。 色移りするほどではありませんが、色が出てきたりするので、黄色味のクリームなど、色が淡いものから先に洗います。色が混ざって濁ってもいいと思える色の帯揚げであれば後に洗っても構いません。 たとえば、画像の真ん中にある帯揚げのような色の場合、何の色が移ってもあまり気にならないと思います。 洗濯に使う水がきれいなうちは淡い色の帯揚げを押し洗いして、次にもう少し色のある帯揚げを入れて、最後に色が濃い目の帯揚げを入れて洗います。 とくに藍色や黒っぽい色は別物として、最後に洗います。墨汁を水に入れたように水が黒くなるからです。そして、その後は何も洗いません。 洗うと水に染料が出ている分、洗う前と比べると多少色が抜けているはずですが、単体で見る分には何回洗っても分からないと思います。ただ、ほかの帯揚げへの色移りを防ぐために注意するといいでしょう。 絹の帯揚げを洗うときの洗剤は何を使う? 帯揚げを洗う際、洗剤は何を使えばいいのでしょうか。 市販されている洗剤で構わないのですが、気をつけた方がいいことがあります。それは、洗剤に漂白剤や蛍光剤が入っていないかを確認することです。漂白剤や蛍光剤が入っている洗剤は、色が変わってしまうことがあるため、避けた方がいいです。 絹やウールを洗ってもいいとされている洗剤、たとえば、おしゃれ着洗い用に市販されている洗剤を使うと安心だと思います。 おしゃれ着洗い用の洗剤の場合、ピリングという生地の繊維が絡むことで縮む現象が起きないように、リンス効果を発揮するものが入っています。洗った後に生地が硬くなる心配がありません。 女将が愛用している「海へ」という洗剤 この洗剤は合成洗剤ですが、すべての原料が自然環境に存在する微生物によって分解されるので、海に戻るというものです。洗った後、すすぎ不要なので水の節約にもなるため、とてもいいです。 ただ、ピリング防止剤が入っていないので、最初の洗い上がりは質感としてはちょっと硬く感じると思います。生地の質が落ちているわけではありませんし、細かく毛羽だった繊維が抜ければ絹の柔らかい質感は戻るので、気にしなければ気にしなくても大丈夫です。 触った感じがゴワゴワしたような感じになるので、気になる場合はヘアコンディショナーを仕上げに使うといいです。 指先にちょっと取って、40℃くらいのお湯を洗面器に入れて完全に溶かして、帯揚げをちょっと入れてさっと1回水ですすいでください。すると柔らかい質感になります。 洗った後は、帯揚げが伸びない程度にギュッと絞り、洗濯機に重ならないように入れて6分間脱水をします。脱水するとシワになるものもありますが、アイロンをかけるので大丈夫です。 帯揚げの幅や長さが縮んでも、使い勝手が変わらない場合は、問題ないと思います。しかし、シワシワの帯揚げは、使う時にテンションが下がってしまいませんか。 帯揚げのシワを取るためと、幅が狭すぎると使いにくさを感じることもあるので、アイロンで幅出しを行います。 帯揚げのアイロンがけの方法 帯揚げを洗った後、脱水6分をかけているので、水でダラダラになることはありません。しかしまだ濡れているので、触るとヒヤッとして冷たいです。この状態の帯揚げにアイロンがけをしていきます。 洗う前は、A4用紙の縦ぐらいの幅でしたが、脱水後は1.5cmぐらい縮んでいます。シボが立っている織り構造のため、縦にはあまり縮むことは少ないです。絞りの帯揚げだとすごく縮むこともありますし、縮緬地の場合には半分ぐらいに縮むこともあります。 1.5cm程度の縮みであれば、幅を戻さなくても使い勝手に影響はないと思います。 たとえば、ぴったりふたつに折って使っていた帯揚げがふたつに折って使えなくて気持ち悪いということであれば、幅を戻した方がいいですし、ちょっとずらして使えば一緒と思うのであれば、そのままの幅でもいいですよね。 また、薄い生地の帯揚げの場合、縮むことによって密度が増してペラペラ感が薄れるので、縮めた方がいい場合もあります。洗うたびに縮み続けるわけではなく、2~3回洗うとそれ以上は縮みません。 洗った後の帯揚げを伸ばした方がいいか、伸ばさなくてもいいのかは長さも含めて考えるといいと思います。もともとの長さが余計だなと思ったら、縮んだままで伸ばさないようにします。絞りの帯揚げを洗って縮んだまま使った方が楽ということもあります。 自分の帯揚げの使い方に合わせてアイロンがけをされるといいと思いますが、アイロンで帯揚げを乾かすと非常に気持ちがいいので、ぜひ、やってみてください。 アイロンがけする前に、アイロンの底とアイロン台をキレイにすることをおすすめします。アイロンの底が汚れたままアイロンがけしてしまうと、絹にその汚れが移ってしまうからです。 まず、濡れた厚地のタオルを用意し、できるだけ手から離して持ちます。そして、あらかじめ中温にしたアイロンの底をタオルで拭きます。 濡れたタオルに汚れが移らないぐらいにしっかりと取ってしまえば、絹に汚れがつく心配はありません。もし、アイロンの底汚れが取れにくい場合、洗剤を使うと取れると思います。 アイロン台も大きいものが楽ですが、汚れがある場合には手ぬぐいやさらしを引いてから、アイロンがけをします。 アイロンの底とアイロン台が準備できたら、帯揚げの裏側からアイロンをかけていきましょう。 アイロンの温度は中温でかけます。 1回縦にアイロンをかけた後、帯揚げの幅を上下にアイロンがけをします。幅が一定にはなりませんが気にせずかけます。 アイロンの先端で帯揚げの端に山ができるのが気になる場合は、アイロンの横腹を押し出すようにかけていくといいです。 最後に端を軽く引っ張りながら、真っ直ぐになるようにアイロンをかけていきます。 帯揚げが濡れているので途中で変なシワがついてもすぐに取ることができます。 帯揚げの裏側半分をかけ終わったら、その上に帯揚げの半分をのせて、ふたつ折りにします。 アイロンで伸ばした裏側と比べると、洗濯後にどのぐらい縮んでいたのかがよくわかると思います。 裏側と同じようにアイロンがけをしていくと、幅が少しずつ出てきますし、乾きも半分乾いていきます。帯揚げの片側を押さえてアイロンで幅を伸ばしていきます。 帯揚げが濡れている間は、テリがきません。テリは生地が火傷したような状態なので、濡れている限り、火傷は起きません。 帯揚げの幅がだいたい揃ったら、ふたつに折って山になっていた部分にアイロンをかけて伸ばして幅を揃えていきます。 全体がきれいになってきても、乾きが足りないとシワが戻ったりするため、さらにアイロンをかけて乾かし、半乾きの状態にします。半乾きの状態で干すときれいに仕上がります。 アイロン台に濡れたものを置いたので、アイロン台にアイロンをかけて湿気を飛ばします。 もし、帯揚げが濡れたままアイロンをかけるのが嫌だという場合は、上手に半乾きまで乾かした後にアイロンをかけるといいです。その方がアイロンがけが楽です。 ただ、帯揚げを半乾きにするのが難しいです。干している帯揚げを、だいたい15分置きに触ってこまめに確認する必要があります。帯揚げの生地の種類によっては、早いものだと10分でも乾いてしまったりすることもあります。完全に乾いてしまうとシワが取れにくくなりますし、面倒くさくなってしまうと思います。 半乾きをきちんと適切に見定められるのであればいいのですが、脱水6分かけて直接アイロンをかける方が幅を伸ばすのも楽です。アイロンで幅を伸ばさなくてもいい帯揚げの場合、半乾きにしてからアイロンをかけるというのもありだと思います。 このようにして自宅で洗濯する場合、色落ちや色移りしても構わない帯揚げだけにしてください。たとえば、輪出しのように白地に赤い花が染めてあるものは必ず色移りします。また、色の濃いものや激しいものは、色移りしても構わないという覚悟がない場合は、水洗いはやめた方がいいです。 洗っても問題ないなと思う帯揚げがありましたら、ご自宅での洗濯にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。 女将による詳しい説明は、こちらの動画をご覧ください。 【初心者さん必見!女将的、帯揚げを一番楽に洗う方法!帯揚げを自宅で洗おう!】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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初心者でもできる、きもののたたみシワを防ぐ簡単なコツ

きものをたんすから出したら、嫌なところにたたみシワが…。ということを、経験されたことがあるのではないでしょうか。 そんなたたみシワを防ぐ、基本のきもののたたみ方をお伝えします。 きものを着る前の日に準備するのではなく、当日の朝にきものを出すという方には、特におすすめのテクニックです。きものを出した時、「シワにアイロンかけなきゃ」となるのは、本当に嫌ですよね。 今回ご紹介する方法は、後でシワにならないように注意して、丁寧にたたむようにしているので、きものが何枚か重なっていても、極力シワができにくいたたみ方です。ぜひ、ご活用いただければ幸いです。 きものを出したときアイロンがけ不要にするために 画像はきものをたたんでいる時の目線に近い状態で、たたみ方をご説明します。 きもの初心者さんにもすごくいいと思いますが、ベテランさんもご自身のきもので思い当たることがあったら、ぜひ一緒にやってみてください。 基本的に、内側にゆるみがあるきものが着やすいきものです。 内側の裾あたりの中に芯が入っているので段差がでてしまいます。どうしてもピタッと平らな状態にはならないこともあります。それでも、できるだけシワにならないように、まず右側の脇線で折ります。 折った後、裾側を押さえて、裾側から肩に向かって手で布を寄せるようになでつけます。 なでつけるのは、裾側から肩へ一方方向です。 その後、衽(おくみ)線で折り返します。 きものの場合、折り跡が付いているので、本来はそんなに難しいことはありません。そのまま同じ折り跡を折っていきましょう。 次に、衽と衽を合わせます。ここがひとつの肝です。 脇線で合わせるのではなく、衽を折ったら、衽と衽をこっつんと合わせて、ピタッときちんと合わせます。 右手で裾側に重みをかけて押さえながら、裾側から肩に向かって生地を寄せていきます。 裾にシワができると格好悪いので、右手でしっかりと押さえたまま、左手で生地を真ん中に寄せていきましょう。 脇線を手前に連れてきます。 背中心の折れがピタッと合わさるはずです。 同じように裾側を右手で押さえて、裾の方にたまっている生地を肩に向かって寄せていきます。 裾はなるべくきっちり合わせた状態で、肩に向かってくるくると折り込みます。 折り込んだ後、折り込んで丸めたものを右手側にクーッと引きます。丸まっているので中の生地は動きません。 次に衿、袖まわりをたたみます。まず、下側になる袖を入れますが、袖の肩の部分とたもとの先を持ち、キュッと引きます。 パンッと生地を張ります。 バサッと身ごろの下に入れます。 下に入った袖がよれていないことを確認しましょう。 次は衿を整えていきます。 衿先を右手で押さえて、左手でシワを伸ばしていきます。 衿の下にシワができやすいので、衿の下にスーッと手を入れて生地のたるみを伸ばします。 衽線で折れているので、右手で衿先を押さえて衿の折山を持ちキュッと上に引きます。 同じように、衿の折山を合わせて、二枚重ねた衿の折山を持ち、上にプンッと引きます。 上側になる袖を手前に持ってきますが、今はまだ生地だまりが残っています。この時点では、生地だまりがあっていいです。 背中心の折山も真っ直ぐに整えたら、生地だまりがある部分をたたいてならしていきます。たたくと生地が広がって、馴染んでいきます。 よく衿の部分を折るのが大変と言われます。 きちんと衿折がなっていない場合、たたみにくいです。 衿折がきちんとしているものは、もともとの折れ線と同じように整えていけば、衿の中もきちんと折れていきます。 衿が中に入っていると、背中の折れ線の角度が鋭角になってきますが、この角度はきものの生地や、仕立て屋さんによって違ってくると思います。 たとえば、衿がすべて同じように重なっていると背中の折れ線の角度が鋭角になります。 繰越から三角がでるような折り方をすると、背中の折れ線の角度が浅めになります。 生地によっては硬いものだとつりが出たりするので、その場合は角度が深い方が良い場合もあります。衿折の線が薄くても見極めて、背中心を持って引くようにすると衿が中に入ってきます。 衿を整えたら全体を触ってみて生地のボコボコがないようにならしていきます。 ならした後、左手を袖山側に置いて、布を衿先に向かって寄せていきます。 衿先あたりに生地溜まりができます。 衿先のあたりに右手を置いて、左手で裾側を持ちます。内側はまだブカブカしている状態です。 左手で丸めた裾を広げながら袖山側に重ね合わせます。ブカブカはまだ、内側にあります。 内側と外側では生地の厚みもある分、内側の生地が余るのは当然です。右手の折り返しに指を入れて、生地のたるみがないように左側の裾を一枚ずつ引っぱります。 一枚ずつ裾を引くと、裾の重なりがズレるのがわかると思います。地厚なものほど、ズレは大きくなります。裾をズラしておくことで折り返しの内側の線が一本で済みます。 裾線を合わせて折ってしまうと内側のたるみで折り返しの線が三本ぐらいシワがよります。折線が一本だと割と気になりませんし、シワくちゃにならなくて済みます。内側の生地の余りをしっかり引っ張るのが大事です。 今回ご紹介した方法は、できるだけアイロンがけしなくて済むたたみ方でもあります。 たたみ方の説明に使ったきものは、二年ぐらい着ていないきものです。上にきものを重ねていたので、生地の厚みによる段差がある部分にはシワが入りました。しかし、深いシワでなければ、簡単にアイロンで取ることができますので、やはりキレイにたたむことが大事だと思います。 たたんだきものを持ち運ぶときは? きものを持ち運びするとき、たとう紙に入れたままたたむ方が多いのではないでしょうか。実はその方法だと、きものにもシワができるし、たとう紙もぐちゃぐちゃになります。 持ち運びするときのおすすめは、たとう紙の上にきものを乗せてたたむ方法です。 たとう紙の上にきものを乗せたら、たとえば、帯揚げや丸めたタオルなどを折り返す部分に置いてから、たとう紙ごときものを折ります。 もう一方も折って三つ折りにします。 この状態で風呂敷で包むときものもシワになりにくいし、たとう紙も傷つきにくいです。 少々のことではシワにならないので、たとえば、紙袋に入れて持つこともできます。持ち運びのときに、試してみてください。 女将流・擬音語たっぷりのきもののたたみ方の動画はこちらの動画をご覧ください。 【簡単なコツで、きもののイヤなたたみシワを防ぐ!初心者も知っておきたいマニアックなこと】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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意外と知らない「無双」って何?

普段、きものを着ている中で、耳にしていても、なんとなくわかっているようで、よくわかっていない言葉って、ありますか? その言葉の意味をきちんと知ることで、きっともっときものが楽しくなるようなきものの基本の言葉。 今回は、襦袢の「無双(むそう)」という言葉の意味とその使い分け方をお伝えしていきたいと思います。 「無双」って、業界の専門用語では? 襦袢(袖)には、「無双」や「半無双」、「単衣」と種類がありますが、「無双って、何?」と思われたことがあるのではないでしょうか。 ちなみに、辞書で「無双」の意味を調べると、 …