
うそつき襦袢と長襦袢、どちらを選ぶ?
きものを楽しむ上で、きものを汗などから守ったり、きれいに着こなしたりと襦袢は大切な役割を果たしています。襦袢には「うそつき襦袢」と「長襦袢」の二種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
今回は「うそつき襦袢」と「本襦袢」それぞれ、何を軸に考えたらいいのかを整理してお伝えします。
長襦袢の魅力とは?
きちんと「長襦袢」を着ると気持ちもシャンとします。その「長襦袢」のメリットは、着ごこちの良さと上質感です。
とろりとした絹に包まれる着ごこちの良さは、きものならではの醍醐味のひとつです。また、きものからチラッと見えたときの色や柄の効き方などのおしゃれを楽しむことができるのも「長襦袢」の大きな魅力です。
さらに、「暖かさ」もポイントです。重ね着をすることで、寒い季節にぴったりのアイテムです。
一方で「長襦袢」のデメリットは、反物から誂えるので経済的な負担があります。また、半衿を長襦袢に縫い付ける必要がある点と、重ねて着る分、暑さを感じやすい点が難点だと思います。
最近は温暖化の影響で、急激に暑くなることも増えてきたので、そういう時に「長襦袢」を着ていると、暑さを感じる点がデメリットです。
うそつき襦袢のメリット・デメリット
「うそつき襦袢」のメリットは、半衿を縫い付ける必要がないため手軽です。
たかはしでは、うそつき衿の土台だけの商品も販売していますが、あらかじめ半衿をミシンで縫い付けたうそつき衿も販売しています。
販売当初は、うそつき衿を何本も買わないだろうから、あまり売れないのではと思っていました。でも実際は、意外と人気で、複数本買うお客様が多いです。
たとえば、最初は半衿を都度、縫い付けていたという場合でも、だんだん面倒になって日常的に使う半衿はミシンで縫い付けてしまうということがあるようです。うそつき衿はそのまま洗濯機に入れて洗うこともできますから手軽ですね。
参考までに「うそつき襦袢」や「うそつき衿」の「うそつき」という名前は100年も前からあります。
きものが日常のことなので、半衿を付けなおしたり、暑さの点や、洗濯を楽にできる様にしたり、洗濯後にアイロンがけをしないで済むようにしたりなど、簡易に済ませられるような襦袢が出てきたのだと思います。
しきたりきもの、礼装が”きもの様”になった時代に、必ずきものと「長襦袢」をピタッと合わせて着なければいけませんという販売方法が主流だったときには、長襦袢は必須でした。
日常きものでは当たり前に簡易なものが100年以上前から利用されていたので、そういう意味では「うそつき襦袢」は昔あったものを復活させたような感じですね。
「うそつき襦袢」の最大の魅力は半衿の縫い付けが最小限で済むことです。
たかはしの「うそつき衿」は衿だけで付けることができます。肌着の上に衿だけつけているので、Tシャツの上につけることもできます。重ねて着なくていいので、温暖化が進むこの頃では、身軽で涼しいことがメリットです。
「うそつき襦袢」のデメリットは、「長襦袢」の素敵さを味わえないことです。また、「長襦袢」の場合は纏うことで自然に気持ちがシャキッとしますが、「うそつき襦袢」の場合には自分で気持ちを作り込んでいくような感覚が必要かもしれません。
あなたの理想の襦袢を選ぶなら?
どちらを選ぶのか、選ぶ基準は、用途や季節、そして自身のライフスタイルに合わせて選ぶとよいと思います。
日常的にきものを楽しむなら、「うそつき襦袢」はとても便利です。一方で、特別な日の礼装には、「長襦袢」も素敵です。
たとえば、「長襦袢」をお使いの場合でも、「うそつき衿」を一本持っていると、「うそつき袖」が十枚あれば襦袢を十枚持っているのと同じような見え方にもなります。お財布にも優しいおしゃれの楽しみ方もできます。
「うそつき襦袢」と「長襦袢」、それぞれの特徴を理解することで、着るときの気持ち、自身の好み、きものに合わせて、自分が一番心地よい襦袢を選んでみてください。
女将による解説はこちらの動画をぜひご覧ください。
【あなたの理想の襦袢を探しましょう!うそつき襦袢と長襦袢、どっちがいいの?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
更新情報はInstagramで発信していく予定です。
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一枚でしっかり整う!ウエスト補整の救世主!
きものを着るとき、ほとんどの人に必要なウエスト補整。一枚でしっかり補整する「満点腰すっきりパッドスキニー(以降、スキニー)」の幅広バージョンが登場しました。
従来のスキニーに比べて5cm幅広くなって、前につけていたブランドネームとサイズネームを後ろに移動しました。
東京キモノショーでのモニター販売では、Mサイズが完売して、Lサイズが少し残ったぐらいでした。
モニター商品をご購入いただいたお客さまからご意見をいただき、その貴重なご意見を反映してと言いたいところですが、実はほぼご満足いただけたので、モニター商品からの変更はちょっとだけで、ほぼ変わらない形での発売となったのです。
モニター販売から発売まで、時間がかかった理由は、実は生地を待っていたからでした。
今回は、スキニーの幅広について、従来のスキニーからどんな風に変わったのか、どんな体型の方が幅広に向いているのかをご説明します。
スキニーの幅広が向いているのはこの体型
幅広スキニーがオススメなのは、どんな体型の方かというと、背の高い方です。なぜなら、背が大きくなる分、ウエスト周りも長くなるので、幅広が向いています。
この幅広スキニーの試着を含めて一年以上使っていますが、ときどき従来の普通幅のスキニーを使うこともあります。ただ、いったん幅広を使うと、普通幅では心もとない感じがありました。普通幅は、暑いときに楽に着たいときに使うぐらいで、それ以外は幅広ばかり使っています。
きものと帯を汗から守るのはもちろん、幅が広くなったことによる暑さは感じません。
ただし、幅広いと暑さを感じる方もいらっしゃいますので、自分の体に聞いて、ご自身の体感と合う方を選ぶとよいと思います。幅広を選ぶ目安となる身長は、160cm以上です。
背の高い方以外では、従来のスキニーでは胃が出てしまうとか、お腹のお肉も恥骨に近い方にお腹が出るという方も幅広が向いています。
従来の幅だとお肉を持ち上げきれず、お腹にお肉が残って下腹がポンって出て、スキニーを巻いた下にお腹のお肉が落ちてきてしまうという方にもオススメです。
それからパーンと腰肉の張り出しがある場合、お肉を持ち上げる力を十分働かせるためには、スキニーを下の方からつけてクーッと上げてくることでお尻も上がります。
従来のスキニーでもお尻が上がりますが、幅広でも当然お尻がクッと上がりますので、お尻を上げたい方にもおすすめです。
たとえば、身長150cmくらいの背の低い方は、今までの幅のスキニーで十分だと思います。
お肉の量が多くて、下から持ち上げるとスキニーの上にお肉が溢れてきてしまうという方は、幅広で押さえることができるのでよいと思います。
また、骨格診断でウェーブ体型の方、砂時計のように細いウエストに対してお尻や太ももに張りのある体型の方は、身長がそれほど高くなくても幅広の方がキレイに入る場合もあります。
スキニー幅広は貼る部分が二段に
従来のスキニーと違う点は、貼る部分が二段になっています。
一回で位置を決めようとすると大変です。つけ方としては、まず下の5㎝を締めてつけます。そこからゆっくり平らにしながら上をペタッと貼ります。
体型によってスキニーの上部がプカプカする場合もあると思います。多少歪んでも構わないので、上の脱着テープをさらに引いて貼りつけるようにします。
腰まわりとウエストに差が大きい体型の方の場合、二段になっていることで貼りやすいと思います。また、胃が出るタイプの方も幅広の面積で押さえることになるので、安心感があるはずです。
オリジナル開発の消臭・抗菌生地で肌にやさしい
そして、大きな変更点としては、肌に優しい生地になりました!。
たかはしがオリジナルで開発したデオ・コットンという綿100%の新素材を採用しました。体に害のない方法で抗菌と消臭の性質を持たせた、まったく新しい生地です。。生地の織りがワッフルではないため、少し薄手にもなっています。
まず、なぜ抗菌が良いのかをお伝えします。
たとえば、肌が摩擦に弱く、かくとミミズ腫れのようになる方や、その傷がなかなか消えないタイプの方、化学繊維などの素材に弱い方にもおすすめです。
肌が傷つくのは防げませんが、傷がついたところに雑菌が入り、その菌が増殖することで傷が悪化したり、かゆみが増えることに繋がります。
抗菌効果があれば、その菌の増殖を防ぐので、かゆみは相当軽減されると思います。肌にかゆみが起きやすい方にモニターしていただいた結果、かゆみが来にくいとお声をいただいています。
東京キモノショーでのアンケートでも、かゆみが来にくかったというアンケート結果が出ています。当社比での結果ですが、きちんと科研で検査をして、抗菌作用がきっちりあることが証明されています。洗濯実験では、洗濯後の生地の抗菌作用がむしろ上がっているくらいでした。
たかはしのオリジナル標品の中では一番かゆみが来にくい商品となっていますので、安心して使っていただきたいです。この生地を開発できたことによって消臭・抗菌効果が期待できることが大きなふたつ目の変更点です。
補整と暑さ軽減にもなる小型メッシュパッド付き
もうひとつの変更点は、最初から体に沿う側にインナーメッシュT字型の小型版のようなものを腰の部分に入れています。
なぜ入れたのかというと、幅が広くなった分と生地が薄くなった分、生地がよたよたになったからです。
また、何も補整が必要ないという人はほとんどいませんし、5ミリぐらいのメッシュパッドが入ることで、体との間に少しでも空気の層が入るので密着しない涼しさもあります。
風が通るわけでも冷たいものが当たるわけでもないのですが、体に密着せずに離すことによって、タオルを入れるよりもメッシュパッドの方が断然、体への暑さの負荷が軽減されます。
その点はみなさんからご支持をいただいておりますので、それをマシマシにしたっていうのがこの幅広です。しっかりメッシュパッドが入っていますので、生地を持ってもクタッとしません。
メッシュパッドが入っていない状態だと、生地がクタッと落ちていくことがあって、巻いたときの面倒くささに繋がりますので、そういうことがないようにしました。
大きく三つ進歩しましたので、ぜひご愛用いただけたら嬉しいなと思います。
さらに安定感マシマシになる使い方
従来の「インナーメッシュT字型(以降、インナーメッシュ)」を幅広で使う場合の使い方をお伝えします。スキニーの幅広に腰パッドを一枚入れることで安定感がマシマシになります。
従来のスキニーでは、インナーメッシュがつきあたるまで、ただ入れてくださいとお伝えしていました。
幅広の場合、つける方の体型によってインナーメッシュをつける位置が違ってくると思います。
たとえば、足の付け根の部分・鼠径部からスキニーをきっちりつけるのか、胸下を起点に鼠径部までつけるのかによって、スキニーをつける場所が違います。
骨格診断のウェーブ体型の方と、腰まわりにお肉がたくさんある場合と、ウエストと腰まわりの差がたくさんある場合と、いろいろあると思います。
インナーメッシュのT字型の下の厚みのある部分は四重構造になっています。この部分がちょうどお太鼓の下線に当たるのが理想的な使い方になります。
もしくは、もう少し上でもいいです。というのも、位置が下がってしまうと出っ尻に見えてしまうので、お太鼓の下線より下がらない位置がおすすめです。
インナーメッシュの出し入れが面倒な場合は縫いつける
たとえば、女将の場合、スキニーの上部にインナーメッシュの上部を合わせ、鼠径部ギリギリからスキニーをつけるのが心地がよく、一番収まりのいい形です。
つけ方が決まっているのでスキニーとインナーメッシュを二か所ぐらい縫いつけています。
インナーメッシュを入れたり出したりたったそれだけのことですが、縫いつけることでその面倒さが無くなるので、ストレス軽減にもなります。
インナーメッシュを縫いつける場合、その人の体型によって、真ん中ぐらいの位置がいいという場合と腰パッドがスキニーの下まで届く位置がいいという場合とあると思います。
もし、スキニーの真ん中ぐらいの位置にしたい場合、表側には防水布があるので穴を開けないでください。
防水布に穴が開くと、その穴から汗がしみ出してしまうので、防水布を傷つけないようにします。
体側の方に縫いつけると、洗濯のときなどのストレスもかなり軽減されますので、やってみていただけたらいいかなと思います。
「満点腰すっきりパッドスキニー幅広」、ウエスト補整はもちろん、汗からきものを守るため、肌のかゆみを防ぐためにも、使っていただけたらありがたいです。
バージョンアップしたスキニーを喜んで解説する女将の動画はこちらをご覧ください。
【一枚でしっかり整う!ウエスト補整の救世主!いよいよ新登場です!】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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着倒して穴が開いたきものを羽織にリメイク
お気に入りで何度も着たきものや、お母さまやお祖母さまから譲り受けたきものなど、愛着があって手放せないきものってありませんか?
たとえば、着倒して擦れや穴があったり、日に焼けて色が落ちていたり、そんなきものもリメイクすることで、きもの生活を楽しむアイテムに復活できますよね。
今回は、30年以上着倒して穴が開いたきものをどのような工夫で羽織にリメイクできたのかをお伝えします。
気仙沼で京染悉皆屋が元々の仕事
たかはしは、もともと肌着屋が専門ではなく、まったくのド素人から異業種参入で肌着メーカーになりました。
もともとの仕事は、京染悉皆屋です。きもののお困りごと相談所のような、すべて見渡すというのが悉皆の意味です。御誂京染たかはしとして、今でも宮城県気仙沼市で行っています。
▼悉皆(しっかい)についてはこちらをご覧ください
https://wanomise.k-takahasi.com/sikkai
新社屋に移転したとき、お店の名前を「wanomiseたかはしきもの工房」にし、たかはしきもの工房に統一しましたが、業務としては肌着メーカーよりずっと前から、洗い張りをしたり、染み抜きをしたり、染め替えをしたり、白生地から誂たりということを行ってきました。
それらを見立てられるような物の良し悪しだったり、お客さまにどんな色が似合うのか、どうリメイクしたら有効活用できるのかなど、きものに関するあらゆる見立てが本来の仕事です。
そこで今回は、悉皆業で培ってきた見立てのワザも駆使し、30年以上着倒して傷んだきものを羽織にリメイクしていきます。
傷んだきものを羽織に仕立て直す
20代の頃に仕立てた、有松絞りの竹田庄九郎さんの紬です。
30年以上着てきて、洗い張りは少なくとも二回はおこなっています。洗い張りをかけるとき、八掛が切れてしまっていたので、相当着ています。
この紬は、きものには仕立てられない状態まで生地が傷んでしまっています。
どのくらい傷んでいるのかというと、生地が擦り切れてしまい白くなっています。
もっとひどい箇所だと、穴ぼこだらけです。
きものにした場合、どの部分になるかというと脇の部分です。帯や帯板とも擦れますし、手で何度も触ります。
そのため生地が切れています。下前の右側の前の部分にあたります。
衿肩あきというのがあって、生地が後ろに倒れるのが繰り越しになりますが、上前もしっかり穴が開いてしまっています。
後ろ側の身ごろは、前側に比べると手を突っ込まないのでまだ傷みはマシですが、ちょっとだけ穴になっているところもあります。
体が動くことで生地に力がかかりますし、ドアノブなどに袖を引っかけたりして、多分そのために傷みがひどくなっていると思います。
きものの裾は八掛が守ってくれますが、脇はきものの生地の裏側に胴裏になるので、直接きものに傷みが行ってしまうところです。きものを着倒すと一番きものの本体で脇の部分が擦り切れます。
穴や擦り切れ以外にも、日に焼けることで縫い目の中と外で色が完全に変わってしまいます。
この紬だと、本来は濃いグレーのような色ですが、日に焼けてだいぶ色が落ちてしまっています。
ここまで穴が開いたりして傷んだきものは、寸法をつめて縫う場合はいいので、体型が小柄な人に譲る場合もあります。ただ、ここまでひどいと人に譲るのにもあげるにあげれないなと思っています。
たとえば、たかはしのスタッフで小柄な人で似合いそうな人がいれば、傷んだ箇所を避けて縫えば全然問題ありませんし、生地がものすごいこなれているので最高の着心地になるので、もらってもらうこともあります。
しかし、このきものは、ここまでひどいとねっていう気持ちもありますし、本当に好きなきもので、人生をともにしてきたっていう感じもあるので、もう一回着たいなって思ってこれをどうしようかと考えました。
男仕立てにすることで着姿もスッキリ
同じ肩幅で仕立ててしまうと、傷んでいる部分が脇に来てしまうので、男仕立ての羽織にすることにしました。
なぜかというと、男物のように縫ってしまえば、脇の傷んだ部分が飛び出る心配を考えなくていいからです。
幸いにも元々の絞りがオレンジ色なので、元々の色なのか日に焼けた色なのかがわかりにくくなっています。汚れも日焼けも見えにくいです。
実は、上前にも穴が開いてて、なぜこんなところに穴が開くんだろう?というようなところに穴が開いています。膝下あたりの部分なので、どこか硬いところに何度もあたったことで擦り切れるような形になったのかもしれません。
穴が開いていても返りに入っていくので、全然気にならないのでかけつぎもしません。かけつぎが要らないのも幸いなのは、袖に焼けがなかったためです。
もし袖に焼けがカキッとはっきり出ていると袖幅を出すことが大変でした。焼けがないので袖幅をめいいっぱい出して、身ごろの幅を削ることにしました。
穴が開いて擦り切れていたきものを男仕立てにして、袖を身ごろにくっつけました。
なぜかというと、中に擦り切れた部分を完全に入れて仕立てているからです。
羽織は身ごろを重ねないので、幅が狭くなってもかえってバサバサしなくてスッキリ見えませんか。
肩からつめてもらって、穴の開いた部分まで中に入って、下ろしてもらっています。
普段着る羽織よりも身幅が少し狭くなっていて、身幅を後ろにちょっと出すことで、後ろでちょっと補いつつ、穴が開いて切れていた部分を完全に中に入れる形で仕立てています。
20代からずっと愛用してきたので、きもの人生を一緒にいるような存在で、本当にかわいくてかわいくて、人にはあげられないっていう感じで着倒してやろうと思って最後羽織にしました。
みなさんも大好きなきものがあると思います。たとえば赤いきものとか、なんか手放せないのよねっていうきものがあると思います。
きものの一番の醍醐味は自分で着て育てて、ともに歩いてきたという思いになれるとか、お母さんのきものやおばあちゃんのきものだったり、おばちゃんのきものだったり、母から娘に贈るきものだったり、この思いを形にしたようなきものが、非情に大きな価値だと思っています。
これはお金では買えない最高の楽しみですから、みなさんも一緒に楽しんでもらえたらいいなと思っています。
着られないけど大好きで手放せないようなきものがあったら、ぜひ、創意と工夫でモノにしましょう。
きもの人生を一緒に歩んできたきものへの愛情たっぷりの女将による動画はこちらをご覧ください。
【きもののリメイク、意外と自由にできるんです!着倒したきもの、〇〇にする⁉】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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たかはし女将、きもの警察を語る
日常できものを着ていて、「もしきもの警察に出会ったら…」と思ったことはありますか?
一般的に「きもの警察」という言葉は、良くないイメージで受け取られていることが多いと思います。
たとえば、帯が曲がっている人がいたとき、「帯が曲がっているので、直しますか?」と聞いて、帯を直してあげた場合、人によってはこの状況も「きもの警察」と感じられることもあるのかもしれません。一方で、きもの警察をきもの警察するような状況もありますよね。
今回は、きもの警察とは誰のことだろうか?というのではなく、きものをもっと楽しむために、きもの警察について、本気で考えてみました。
結論、きもの警察も愛
きものを楽しむ上で、あれダメ、これダメという言い方をもうやめたいと思いますし、お互いにしたくないなと思っています。なぜなら、きものを着ているだけで嬉しいし、着てくれただけで嬉しいからです。
たとえそれがどんなことであっても、あらら?ということであっても、きものを着てくれていると嬉しいし、もし好きじゃない着方であったとしても、きものを身に纏っているだけでヨシ!って感じです。
これを土台として考えていくと、結論、きもの警察も愛です。
つまり、きもの警察と言われてしまうかもしれない人って、きものを良くしたい、きものをきれいに着ていてほしい、着方を間違っていたらあなたが恥をかくよと、思っているのだと思います。
結果として、取り締まるという表現になっているのは、知っている人が知らない人に教える体になるので、おのずとマウントを取ってしまうような感覚があって、それが言葉や態度にちょっと出てしまうのではないでしょうか。
震災後の気仙沼で、きもの警察と言われるような状況に遭遇したことがあります。地元で私のことを知ってくれている人もいたり、きもので歩く人が少ないために、「あの人は、たかはしの人」ということが、ある程度は知られていると思っていました。
ある講演会に参加したとき、時間ギリギリに行ったため、バタバタと走って会場に入って座る席を探していました。
すると、「ちょっと」と声をかけられ、後ろから両肩を掴まれて柱の陰に連れていかれました。「お太鼓が曲がっています。私、着付け講師ですから直しますね。」と耳元で囁かれ、帯を直してくれたのです。
急いで車から降りるとき、背中をこすって帯が滑ってしまったのでしょう。きもの警察と言われる場面に出会えた嬉しさをこらえつつ、「ありがとうございます」とお礼を伝え、その方とわかれました。
たぶん耳元で囁かれるのが怖いと感じる場合もあるかもしれません。声をかけてくれた方にしてみたら、もし大きい声で話しかけたら相手に恥をかかせてしまうと思ったでしょうし、1分1秒でも人の目に触れる前に帯を直してあげようという親切心だと思うのです。
知らない人から囁かれて帯を直されたという状況だけを聞くと、陰湿な感じにも受け取れるのかもしれません。もちろん、捉え方もあると思います。
ただ、きものについて言わなきゃいけない空気感が、しきたりきものに囚われていた時代にはあったと思っています。
拙著『きものの不安をスッキリ解決』にも書きましたが、戦後の昭和30年代~60年代あたりは、しきたりきものに則ってきものを格上げして、高額のきものを売って、着付け教室もバンバン儲かった時代がありました。着るものとしてのきものの価値から、違った路線に行ってしまい、日常的に着るものではなく、権威主義になっていた時代がありました。
権威主義に巻き込まれた着付け教室で教わった人たちも権威的に教わるので、権威的になるという図式があったように思います。個人の問題だからではなく、そのるつぼにドハマりした人たちが多かったですし、蔓延してしまったと思います。
自由にきものを楽しむようになって広がる楽しさ
今は非常に自由度が増して、自由にきものを楽しむようになってきて、本当にありがたいなと思います。
たとえば、若い方もインスタライブやYouTubeで発信していますし、初心者ですと言いながら発信している方もいるし、いろんな着合わせ方を提案する方も出てきて、人口の多い地域ではかなり自由度が増しています。
きものでどんなことをやっても、人からギョッとされるような目で見られませんし、驚いたような顔をされることはないでしょう。逆に素敵だねと言われることが増えたり、ここ5年ぐらいで相当変わったと感じています。それを拍手喝采して見ています。
そんな中で、しきたりきものを語る人が肩身が狭いという図式を感じることもあります。
しきたりきもの、日常きもの、どちらも素晴らしいですし、まさに二大巨頭だと思います。
たとえば、しきたりきものしか知らない方が、日常きものを覗いてみると幅が広がるでしょうし、日常きものしか知らない方が、しきたりきものを知ることによって新たな美意識が生まれたり、美学が磨けることがあると思います。このように、しきたりきもの、日常きもの、どちらもお互いにリスペクトの関係なのではないでしょうか。
誰もがお互いに奨励する意識になれば、きものがますます楽しくなりますよね。
そんな世界に行きたいですし、そうなれば良いなと思っている方も、実際に増えていると思います。
しきたりきものを語る方も必要ですし、自由度をどんどん広げていく日常きものもすごくいいと思います。その両方を知ることによっていろんな幅が生まれて、きもの自体やきものを愛する気持ちを軸にして、世界が広がっていくと思っています。
正しい・間違いではなく、どれを選ぶのかが大切
何が正しいか間違っているかをジャッジするのではなく、どれを選ぶのかということが大切です。これはきものに限らず、人のことも、物事も、すべてジャッジしないことだと思っています。
何かに対して、ただ嫌だと言い切ってしまうと、背中を向けたくなってしまいます。
私は好きじゃないけれど、ちょっと望まないけれど、選ばないけれども、それを好きだという人もいるのが当然だというところを、少し探ってみると、意識が凝り固まっていることに気づけたりすることもありますよね。
日々、自分の頭の輪っかに愕然とすることがあります。たかはしのスタッフも若い子が増えてきて、ハッとすることが結構あって、それは自分の許容範囲の狭さだなと反省しています。
許容範囲を広げながら、いろんなものを楽しもうと思ったら、きものはますます果てのない沼だと思います。
たかはしの商品が絶対いいわけではないことをわかっていますし、大嫌いという方がいてくれていいと思っています。選択肢を選ぶひとつの基準になれば、その中で選んでくださる方がいれば本当にありがたいです。もし、嫌だという方がいたら、その理由を聞くことで勉強になることがいっぱいあります。ですので、何があっても良いよねと思っています。
もし、怖く言ってしまっている場合は、ぜひ優しく言ってあげてください。もし、「あなたそれじゃダメよ」と言ってしまうなら、「こうするといいと思うんだよね」と伝え方をデザインすることで、きもの警察ではなくきもの師匠になるのではないでしょうか。
きものについて教わるなら、優しい先輩、優しい頼りになる先輩に言われた方がいいですよね。
これからは、きもの警察という言葉を、愛を持って捉えていきたいなということで語ってみました。
きもの愛たっぷりの女将による動画はこちらの動画をご覧ください。
【愛すべき、きもの警察!たかはし女将、きもの警察を語る】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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名古屋帯を締めた後の簡単な直し方
名古屋帯を締めた後、形が決まらなくて簡単に直したいとか、外出先で帯を直したいと思ったことありませんか。
たとえば、
・思っていたよりタレが長くなってしまった
・お太鼓の大きさがいつもよりもブカブカして大きすぎる
・ドアノブに引っかけてお太鼓が崩れてしまった
など、帯を締めた後で直したいということがあるのではないでしょうか。
今回は、外出先で帯を直したいと思ったときにも、慌てずに簡単に帯を直す方法をお伝えします。
名古屋帯のタレが短いときの対処
名古屋帯のお太鼓結びは、お太鼓が一重なので、袋帯よりも頭を使わなくてもイメージが湧きやすいと思います。
お太鼓の中の手先の下に輪っかがあります。この輪っかが帯の余分ですが、タレを引っ張ると落ちてくるだけになります。
まず、お太鼓の真ん中を下からつかみます。
できれば親指は帯締めのあたりまで到達するぐらいキュッと深く握り込みます。もう片方の手で、タレの真ん中をつかんで、クーっと下に引き下ろします。
お太鼓の中で輪っかになっている部分が落ちて短くなっていくだけなので、いくらでも引き下ろすことができます。長さに余裕がないと、これ以上下ろせないというのはもちろんあります。
タレの真ん中でちょうどいいくらいの長さにしたら、お太鼓を整えてタレの長さを確認します。必ず左右両方を確認します。
一方は長さが出ているけど、もう一方は出ていないということがあるためです。
たとえば、左側の長さが短かった場合、真ん中より左側寄りを握って、タレを引っ張って左側の長さを調整します。
タレの長さが左右で揃っているのがいいとも限らなくて、ちょっと曲がっているのも味わいだったりします。タレの真ん中が長くて両端が短いのも、お尻に沿うような感じも素敵だと思います。
単純にタレをまっすぐにするなら、タレの長さを調整するときは、かならず左右から見て調整するのがいいと思います。
名古屋帯のタレが長いときの対処
まずお太鼓の中にある手先をプルンと外側に折るのがおすすめです。プルンと折るとお太鼓の中の輪っかが見えるようになるので、その輪っかに指を入れるとお太鼓側か体側かが手で確認できると思います。
体側の一枚を引っ張ると、タレが上がってきます。
左右両方でタレの長さを調整します。
もしうまく上がらない場合は、帯締めがしっかり入りすぎている可能性があるので、心持ち帯締めをちょっとだけ緩めます。帯締めに緩みがあると帯が動きやすくなるので、簡単に調整しやすくなります。
タレの長さを調整すると、一緒にお太鼓まで上がってきてしまうのが心配なときは、クリップでお太鼓の下線と手先を一緒に挟むと便利です。
たとえば、お太鼓が上がってしまっても押さえて引き下ろすことができますし、お太鼓の下線が変わったり、一緒につられて中に入ってお太鼓自体が小さくなるという心配はないと思います。
名古屋帯のお太鼓が小さすぎたときの対処
お太鼓の中に余分が入っているわけなので、お太鼓の内側に親指を入れて人差し指で挟んで、内側から外に向かってクリンと返すように引っ張ってくると、お太鼓の大きさを調整することができます。
手先を戻してお太鼓の大きさを確認し、お太鼓の下線の角がブワーンと浮いていると緩慢な感じがするので、お太鼓の下線にあたるくらい手先も下げてあげます。
帯締めが上の方だけ押さえているような状態になるので、帯締めもタレの真ん中くらいになるように下げて、必要であれば帯締めを締めなおします。
後ろ側の帯締めの位置は下げておきながら、帯前の帯締めは帯の真ん中あたりになるように上げておきます。
帯前で帯締めの位置が低すぎると、帯締めが落ちている感じだったり、疲れた印象になったりしますが、帯締めの位置が真ん中に上がっているとスッキリとした印象になります。後ろ側の帯締めはちょうど手先の真ん中付近を締めるようになるといいのかなと思います。
名古屋帯のお太鼓が大きすぎたときの対処
お太鼓の中の手先をめくって倒すと中に輪っかがあります。輪っかの外側の一枚をつかんで引っ張るとお太鼓が上がってくるわけです。
もし、どこまでお太鼓を上げたらいいのか心配な場合は、クリップを使います。
お太鼓を上げたい位置でお太鼓の下線をクリップで留めます。
お太鼓の中の輪っかに指を引っかけて、外側を意識してカツンと止まるまで持ち上げます。
クリップで持ち上げた余分が奥に入って、余分だけがお太鼓の中に入っていくので、きちっとお太鼓の下線が合うわけです。
一番は、仮ひもを入れてお太鼓を作り直すのがいいですが、外出先で気づいたときはそうもいかないですよね。
たとえば、お手洗いに行ったときに「あらら」と気づいたり。そういう時にできる対処法です。
お太鼓の中の手先の下に輪っかがあって、輪っかを上げればタレ先もお太鼓も全部上がってくるわけです。二枚を一気に持ち上げた後、お太鼓を下ろしてからタレ先を引き出すのが一番簡単です。
一気に上げるのが心配な場合は、お太鼓の大きさを決めたらクリップで留めておき、お太鼓の中の輪っかで大きさを調整するようにするといいかなと思います。
タレ先の両端を引っ張ると、タレの真ん中が上がっていて両端が下がっているような形になるので、お好みにもよりますが、今の感覚だとあまりかっこよくないかと。
タレ先を調整するときは、先に真ん中を引っ張るとまっすぐもしくは真ん中が下がって両端がふわっと上がるような感じになって、端っこの雰囲気が優しい印象になると思います。
一発でお太鼓の形を決められたら一番いいのですが、帯締めが緩かったり、ドアノブなどに引っかけてしまったりして、後からお太鼓を直すときは、慌てなくて済むようにこれを知っておくとよいと思います。
自分できちんと結んだときも、手先をペロンとひっくり返して、この輪っかを調整すればいいんだなと考えておいて、直す癖をつけるためにも、練習のときにご確認いただけたらと思います。
外出先での帯直しで、きものでお出かけのハードルが下がりそうな女将による動画はこちらをご覧ください。
【名古屋帯の簡単手直し!締めた後のカンタンな帯の直し方「名古屋帯編」】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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痛いコーリンベルトを痛くない神に変える方法
きものの着付けで、コーリンベルトが体に当たって痛いと思っていても、ガマンしていませんか。
とても便利で役に立つコーリンベルトですが、痛いと感じている方が意外と多いようで、とある有名きもの屋さんの女将が吐露してくれたときのこと。
有名きもの屋さんの女将:「実は私ねコーリンベルトが痛いのよ。」
たかはし女将:「えー?!痛いの我慢してずっと着ているの大変だよね?」
有名きもの屋さんの女将:「でも、みんな我慢しているんでしょう?」
たかはし女将:「いやいや私は我慢できませんので、体に当たるところにはつけてないんです。」
有名きもの屋さんの女将:「どこにつけてもコーリンベルトの効果があるの?」
たかはし女将:「十分にありますよ。」
ということで今回は、痛いコーリンベルトを痛くない神に変える方法をお伝えします。
コーリンベルトが痛い原因と回避する留め位置
コーリンベルトは、腰ひもを締めた後、衿折りをして広衿を押さえながら留めていくのが一般的だと思います。
コーリンベルトが痛いという方は、アンダーバストの下辺りを留めているのではないでしょうか。留め具がちょうど肋骨に当たるために痛いのだと思います。
たとえば、肋骨と肋骨の間で留め具がうまく骨に当たらずに逃れるときもあれば、当たるときもあるということを経験されている方もいらっしゃるかもしれません。
そういう不安定さも起こらないように、絶対に肋骨に留め具が当たらないところに留めます。だいたい、肋骨と骨盤の間の腰ひもを締めるあたりに留めるといいです。
コーリンベルトを留める位置を下げると、胸元が開いてしまうのではないかと不安に思われるかもしれません。
たかはしスタイルの着付けでは、胸元を締めませんので、胸ひもも伊達締めも使いません。
引く力をコーリンベルトに与える留め方
どのように留めるのかというと、引く力をコーリンベルトに与えて留めます。
衿元を下に引っ張りこむイメージで衿をグッと押さえて、腰ひものあたりでコーリンベルトを留めます。
腰ひものところは、お肉ですし満点腰スッキリスキニーパッドを使っている場合、コーリンベルトの当たりもまったく感じないわけです。そのため、痛くて苦しいことにはなりません。
日常きものは我慢して着るものではないと思っています。
礼装のときは、二時間お座りしていれば済むのであれば、多少のことは我慢できるかもしれません。
しかし、一日中歩いたり走ったり、手を伸ばしたり寝転んだり、いろんなことをする中で、着付けが痛みや苦しさにならないように考えています。
たかはしスタイルという着方教室では、日常きものに特化した着付けについてお伝えしますが、コーリンベルトのつけ方もそのいい例です。
コーリンベルトを使うと、衿がきちんと折ることができ、背中のシワが取りやすくてとても便利ですが、痛いのは避けたいところです。
もし同じように痛みを感じている方がいたら、試しに腰のところにコーリンベルトを留めてみてください。
そして、コーリンベルトを短めにしてください。留めて体にピタッと当たっても全然痛くないけど、きちんと生地に当たっているくらいの強さが理想です。
背中のシワをおさえられますし、衿がきちんと引っ張られます。ぎゅうぎゅうになると衿がつまってくるのは胸下で留めているときと同じです。
ほどよくきちんと押さえて体についてるくらいの強さを自分なりに模索してみましょう。非常に楽チンでコーリンベルトが神になります、
ぜひやってみてください。
コーリンベルトが痛いを解決する女将の動画はこちらをご覧ください。
【コーリンベルトが痛いを解決!初心者さんにも直ぐ出来る!】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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