平成24年7月

きものよきもの

この頃とみに当店の存在意味を考えることがあります。
当店というよりは生み出している商品についてですが。
私が満点スリップを作りたいと思った理由はいつも言っているように

『メンテナンスにお金を掛けたくない』『着物を良い状態に保ちたい』
ひいては『着物をより楽しく、より多く着ていただきたい』という理由からです。

うちのような小さい田舎のお店が、製造メーカーになるなどとそんなだいそれたこと、始めは考えてもいませんでした。
だから、その目的に合う今存在している商品を随分探しましたし、問屋を通じてメーカーに要望したりもしました。

その結果…

どうにもならないから、自分たちで作ることにしたのです。
今までの商品に手を入れる気なんかサラサラない上に現場の声も全く聞く耳を持たないというのが現実でした。

当店が満点スリップを手掛けてからもう十年ですから、要望をあげたりしてたのはそのもっと前になります。
その頃は、バブルがはじけたとはいえ、まだ余裕があったのでしょうね~。
着物メーカーの社長さん達はゴルフと芸者遊びでお金を使うのが仕事、みたいな時代もありましたから。
その空気を変えることが出来ずに来たのでしょう。

つまり、当店の商品がある意味はそれまでの業界の商品やメーカーの有り方に対するレジスタンスなのだと思えてきたのです。
ほんとに小さな動きなのですが、それでもなんとか今日までやってこられたのはお客様のご支持のおかげなわけで、それは他の商品にないメリットを見出していただいていると考えられることで、本当に有難いことです。

そしてさらに有難いことに、こういうものを作って欲しい、というお客様からの要望も多くいただきます。
そして当然、それらを作るか作らないかの検討をするわけですが、私の中ではっきりと『今まである商品と同じ仕様のものは作らない』という思いがあることを意識し始めたら『当店の存在意味』を考えるようになり、当店がちっちゃいながらも『レジスタンス』であると思えてきたのです。

つまり、今まであるような品ならそれを買えばいいのですから。
万人に受け入れられる商品ではなく「もうこれしか着られない!」というコアな支持者さえいれば「なにこれ!」と言う方がいてもいいのです。
むしろそういう商品を提供したいと考えています。
はっきりとした目的を意識した方に選ばれるモノづくりに励みたいと思っています。

先日、とある和装肌着のメーカーさんに『お客さん(つまりメーカーのお客さんだから呉服屋さん)から勉強しなさいよ!と、たかはしさんのパンフレットを渡されましてね、いや~、驚きましたよ。』と声をかけられました。
そして彼は『今はたかはしさんのような人に頑張ってもらわないと…』とも言いました。
今の着物ユーザーさんにお応えするには、大きい所だと対応しきれない時代なのかもしれない、とも感じました。

ちっちゃいことの良さを発揮できるモノづくり、これからも励みます!