平成28年3月

きものよきもの

満点スリップを作り上げてから十二年経ちましたが、商品は時折見直しをかけてはいます。
時代が変われば着物の着方だって好みだって変わりますし、何といってもお客様の生の声が毎日入ってきますので、それにお応えするための修正は当然のことです。
ですが最近、そうではない見直しというかバージョンアップというか、素材から見直すということを念頭に日々研究にいそしんでいます。

その中で思うのは『不利の利』とでも言いましょうか。
無いなら無いなりにわからないならわからないなりに人間って創意工夫をするものだなぁということです。

たとえば、当社にはパタンナーはいません。
これは繊維製品を作るうえでは胆ともいえるポジションで製品の型紙をおこす人です。
大手なら立体でデータを取りキャドを駆使してスマートに型紙をおこすところでしょうけど、中小企業ではそんな素晴らしいものはありません、自慢じゃないけど専門の勉強をした人すらいないに等しいのですから。

以前は外注でパターンをお願いしていました。
それでサンプルを作っては修正を入れてもらっていました。
でもその方法だとどうしてもどこかに遠慮が入ってしまうんですね。
相手はその道の専門家、専門用語もわからない私たちの動物の感的なこちらの要求は、どうもうまく伝わらない気がしていたのです。

で、今はどうしているのかと言えば、以前作ってもらったパターンの書き方を真似て型紙をおこしひたすらサンプルを体につけてみるのです。
そして、それをたたき台にしては修正を入れたり考え直したりを繰り返すのです。
一枚の型紙をおこすのに一〇パターンはサンプルを作ります。
サイズ展開もあるので使用メーター数の多い製品なら、下手すると一反丸まるサンプルでつぶします。
ものすごいロスのようですが、それしか方法がないので苦肉の策でやっています。

ところがやってみてわかったことですが、これがものすごく塩梅がいいのです。
だって実感そのものなのですから!体につけてみて、その状態で切ったり貼ったりするということをひたすらしてみてわかったことは『実直に』でしょうか、そして『不利の利』です。

何度も何度も繰り返しているうちにマニュアル化出来ない得体のしれないスキルが身についてきたことを実感しています。
まだまだではありますが、たかはしきもの工房の在り方がはっきりみえてきた今日この頃です。 
それもこれもともに歩んでくれているスタッフのお陰ですね、有難いです。