平成29年4月

きものよきもの

着物屋さんはよく怖いと言われます。
なぜ怖いのでしょうか。

それは
「いらない」とか
「その着物、私は好きじゃないです。」とか、
「ほっといてください。」
なんて言えないからですよね?

つまり言いたいことが言えない、お客様のほうが遠慮してしまっているからなんですよね、きっと。

着物は確かに専門知識の必要なアイテムです。
それについて「自分は無知である。」という劣等感から遠慮する。と、強い押しで来られると何も知らない私は意見しにくい、それが怖いという思いの大きな原因のひとつだと思われます。
だから一人では行けないし、かといって高額なお買い物をするかもしれないと思うと、一緒に行く人を選ぶ必要もあったりと、ちょっと面倒な世界ですね。笑

確かに怖いお店と言われる押しが強くて上から指示命令するようなお店、かつてはずいぶんありました。
それは専門的な要素の強い着物の世界では売る側も教える必要があり、買う側も教わる必要があり、さらにもうひとつ、ここが重要!お客様には売ってほしいという願いがあったからです。

物のない時代、エンドユーザーの末端にまで売り手市場ががんとあったのです。
うちの母も言います、昔は入れたら入れただけバンバン売れて仕入れが大変だったと。

「京都の問屋さんが3ケースばかり帯持ってきたんだけど…」
などと電話すると、その日のうちに全部売れたりして、支払いに困るから売るのを制限してたなどと夢のような話をしています。

それはきっと呉服業界に限ったことではないでしょうけど、そんな時代ではちょっとくらい感じ悪かろうが態度がデカかろうが、商売が成り立ったのですね。
お客様が売ってくれとお願いしてくれる時代、私がこの業界に入って間もなく、35年ほど前から、その夢の世界は少しづつ終わりを告げました。

そこからずっと右肩下がりを続けてきた今は本当にみなさん努力をしています。
いかに感じよく接客するか、いかにお店の特徴を出し選んでいただけるか…。
専門知識を上手に伝え着物を愛してもらうことに一生懸命です。

今は怖いお店、本当に少なくなったと思います。
だってこんなに売れないんですから。
お店の最盛期の半分以下でみんな余力を使って商っていますから必死です。

この「必死」って本当に大事です。
うちが肌着屋を始めたばかりのころの呉服屋さんは「肌着なんて売るものじゃない。」という感じでしたが、着て楽しんでいただくことを必死で考えたら絶対に無視できないアイテムです。
だから今はお陰様であちこちに呼ばれるようになり有難いことです。
そういうわけで、うちの商品を扱っているお店に怖いお店はないとも言えます。     

それでも怖いと思うようであれば、ちょっと気持ちを切り替えて、なんでも素直に聞くようにしてみてください。
たとえ何時間教わっても、商品見せてもらっても、気に入らなければ買う必要はないのです。
申し訳ないなんて思わなくていいのです。それでも怖かったら逃げてきてください!笑

ちょっと面白い話を聞きました。

一緒に食事していた女子の一人が
「私が着物屋さんに入るとついてこられてゆっくり見られず、とっても嫌なの。」と。

もう一人が
「私なんて全然ついてこられないですよ。きっと買う人と思われないんでしょうね、私。
GパンにTシャツで化粧もしてないですからぁ。
でね、忙しい時はダメですけど暇そうな時は聞きたいこととか聞くとみんな親切に教えてくれますよ。
向こうもお客さんいない感より接客している方がいいじゃないですかぁ。笑
○○さんは買う人に見られるんですよ、バシッとキメてるから!
今度、スッピンにGパンで行ってみてくださいよ、きっと大丈夫ですよ。」

おお!確かに確かに。
それはかなり有効かもしれません、一度お試しあれ~。