平成29年10月

きものよきもの

去年入社したネットショップのスタッフがぽつりと言うのです。

「なんで社長は満点スリップを作ったのですか?ページにも書いてはあるけど、じかに聞けたらおもしろいかなって…」

フムフムなるほど、そういうこともありますか~。
ってなことで、今月は「なぜ私が満点スリップを作ったか」について書かせていただきますね。
むむ、これは原点に立ち返るいいチャンスかもしれませんしね。
 
私が家業であるこの仕事に就いたときはまだ二十代、今から三十五年も前のことです。
京染店なんて地味そうで面白くもない仕事、本気でいやでした。
しかも母とは顔を合わせれば喧嘩ばかり、よく飛び出さなかったものだと我ながら不思議でたまりません。

今思えば、きっと神様にやらされていたんだなぁと、それ以外考えられません。笑
着物も決して好きではありませんでした。
着物が着たくて着たくて、なんてこともありませんでした。
それはなぜかと言えば、もうすでに日常のものだったからと、小物が多くて面倒で、着物を出したりしまったりが大変だということが大きな原因でした。
こうして字にしてみると、なんだか私、すごくひどい感じですね~、まいったなぁ。笑

でもこれは事実です。
着物が嫌いというよりはその手順やそれにまつわる面倒が嫌いでした。
しかも着物を頻繁に着るようになったら今度はそれにお手入れ代がどんとのしかかってくるではありませんか!

私は本気で
「こんなことでは着物を着ようとする人なんてあっという間にいなくなっちゃう…」
という考えに至るに、そう時間はかかりませんでした。

ここで持ち前の正義感がぐっと発揮されます。
少なくとも、生業にしている自分だけでもいやいやではなく喜んで着られるものにしなかったら、私でも簡単に着ようと思えるものにしなかったら、きっと着物はすたれるとそう考えたのが始まりでした。

まずは着付けをいかに簡単に早く覚えられるかを考え始め、次にメンテナンス代を安くすることを考えました。
これが満点スリップに至ったわけですが、なんとそこに行きつくまで十年以上の時間が流れました。
それには大きな理由が明確にありました。

何かといえば、それはズバリ
「固定観念の壁」
です。
和装の方は特にこの壁が高いように感じます。

最近でこそ、うそつきをさらにラフに考えた衿を付けたTシャツなんかも登場しましたが、それはベルリンの壁がみんなの手によって一気に崩れ去ったように、ある時期からみんながハンマーを手に持ち始めたからこそ生まれた商品だと思います。

私が満点スリップを作った十五年前は、それはそれは高い壁が立ちはだかっておりましたよ~
ああ、なんていい時代なんだ。
着物の時代、いざ本番!