平成28年5月

きものよきもの

一時はもう無くなってしまうのかな~と思っていた羽織ですが、最近は普通に見かけるようになりました。
東京ではコートのほうが珍しいくらい誰もが羽織を着ているのが普通になりました。

羽織は、洋服で言えばジャケットだとよく言われます。
道行きコートはそのまま外套ということですが、大きな違いはそれだけではありません。
道行きコートは訪れた先で脱がなくてはいけませんが、羽織はジャケットですから脱いでもいいし脱がなくてもいいという、とても便利なアイテムなのです。
だから帯がうまく結べなかったとか、簡単に半幅帯で済ませちゃったときなど、羽織でごまかせる大変優秀な便利アイテムでもあります。

以前は着物の格に合わせて羽織も選んだものですが、無地感のものや小紋調の物などを選んで羽織にし、正装以外なら紬系にでも柔らかものにでも気軽に合わせる着方が当たり前になっています。
そんな中で、最近生まれた新たな羽織にレースの羽織があります。
厳密にいえば昔もあったにはありましたが、薄物はわりにしっかりと絹を使用したものがほとんどでした。
そうなると、テイストとしてはやはりちょっとよそ行きになってしまうのですが、今のレースは違います。
アパレルで使っている化学繊維を使用し、フリーサイズかせいぜいM、Lサイズ展開の、リーズナブルな価格の品物がずいぶんと出てきて楽しいことこの上ありません。

決まり事から言えば、袷には袷の羽織、少し暖かくなっていたなら袷の着物に単衣の羽織、すっかり暖かくなって来たら単衣の着物、または夏着物にレースや紗の羽織もの、ということになるのでしょうけれど、単衣の羽織というものまでは、流石に復活してきてはいません。

まず、それはそれとしてよく皆さんが迷われているのが『レースや薄物の羽織はいつからいつまで羽織っていいの?』ということです。
気温や土地柄にもよるとは思いますが、私は春秋のお彼岸の間、とお応えしています。
これは新宿にある和装小物専門店の津田家の女将から教わったのですが、その言い方を聞いた時に、とってもわかりやすいし忘れなくていいなと思い、私も使わせてもらっています。

羽織に限らず着物に関しても随分と自由度が増してきて、何を基準にしていいか、きっと迷うことも多いと思いますが、最後は自分の美意識を信じることで、より着物を楽しめるように思います。

そう言えば、昔は黒紋付の絵羽羽織というものがあって、入学式や卒業式、大切な方へのご挨拶の時など必ず羽織る一枚がありました。
これも、復活しそうにないですね~。笑