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きもののシワ取りにオキテ破りのアイロンがけ!

日常できものを楽しむようになってくると避けては通れないのが、きもののシワを取るアイロンがけ! 箪笥から出したきものの袖に予想外の畳みシワ 長い時間座ってついた座りシワ 腰ひもで縛った箇所の深いシワ 長年の折り癖によるシワ…… 今回は、アイロンがけが苦手な人でもアイロンがけしたくなるような方法をお伝えしていきます! 時間と手間をかけてもシワ取りできない 絹のきものにアイロンがけする場合、「低温で当て布をしてアイロンがけしてください」ということをよく聞きます。 低温、当て布をしてアイロンをかけたのに、ぜんぜんシワがとれない! という人、たくさんいらっしゃると思います。 アイロンがけに時間をかけ、温度に気をつけ、当て布をして……と、手間をかけたにも関わらず、シワがまったく取れない! これでは、アイロンがけが嫌いになっても仕方ありません。 絹のきものの生地にとって、絶対的に安心なのは低温で当て布をしてのアイロンがけですが、はっきり言ってシワは取れません。 「シワ」は繊維の折れやつぶれです。生地のシワを取る原理を考えた時、低温&当て布では繊維の折れやつぶれを膨らませることができないため、シワを取ることができないわけです。 では、どうすればよいか。 当て布無しでのアイロンがけも含め、きものの畳みシワや腰ひもで縛った箇所の深いシワを取る方法を、具体的にご紹介していきますね。 きものの畳みシワを取るアイロンがけの方法 実験1)中低温&当て布でのアイロンがけ きものを広げて畳みシワのある裏面に手ぬぐいで当て布をします。アイロンは絹モード(中低温・約100℃)に設定し、蒸気は一切無しでアイロンがけをしてみます。 アイロン自体の重さがあるので、力を入れずにかけます。注意点としては、キセの部分にはアイロンをかけないようにします。 このかけ方だとシワはまったく取れません。 実験2)当て布無しでのアイロンがけ 当て布無しでアイロンがけすると、当て布でのアイロンがけよりは、少しシワが取れた状態になります。 さらに温度を上げて、羊毛モード(約130℃)にします。これでアイロンの中温くらいになります。中温でアイロンをかけると、だいぶ取れます。 ※設定温度は、メーカー機種によります。取扱説明書をご確認ください。 同じきもので別の箇所を中温でアイロンがけしたものが、次の画像です。 蒸気無しでアイロンがけする場合は、中温で当て布無しでのアイロンがけが一番シワがキレイに取れます。 実験3)蒸気有り中温&当て布でのアイロンがけ 家庭用アイロンで蒸気有りでアイロンがけする場合、アイロンから水がボタボタと漏れることもあるので、当て布をする等、注意して行います。 蒸気有りの中温でアイロンがけしたものは、次の画像です。 最初のシワが取れていなかった部分に、蒸気有りでアイロンをかけると、シワが取れています。 ここまでをまとめると、 シワが無い箇所は蒸気無し中温でのアイロンがけ シワがひどい箇所は蒸気有り中温でのアイロンがけ キセや裾はアイロンの重さで潰れないよう重さを乗せずにかける この方法は、女将自身が実験してきたのはもちろん、プロからリサーチして得たものです。中温で当て布無しのアイロンがけすることで、きものの畳みシワがキレイに取れます。 深いシワを取るアイロンがけの方法 中温で当て布無しでは取れない深いシワでも、家庭用アイロンを使って、シワがキレイに取れる方法をお伝えします。 この方法は、袖丈を長く仕立て直しした時に袖底や肩に出てしまう深いシワを取るために編み出した方法なので、かなり有効です。 今回は、きものの背中側に紐で付いた深いシワにアイロンがけしています。 <用意するもの> 乾いたタオル1枚(心配な時は厚手のタオル、慣れてきたら薄手のタオル) 濡らして絞った小さなタオル1枚 <アイロンがけの方法> ①乾いたタオルを半分に折り、シワがひどい部分の上に置きます。さらにその上へ濡らして絞った小さなタオルを重ねます。濡れたタオルは直接きものに付かないように注意します。 ②濡れたタオルの上から、蒸気無しの高温でアイロンがけします。その際、まったく重さをかけずにアイロンをかけるのがポイントです。 ③アイロンを少し持ち上げて、円を描くようにタオルの表面をなぞるようにしてかけていきます。ある程度かけたら、乾いたタオルときものの間に手を入れて、少し熱いぐらいになっているとベスト。 ※アイロンがけしていない右側の部分に比べるとシワが取れています ④深いシワで取れにくい部分には、濡れたタオルを外し、もう一度、乾いたタオルの上から高温のアイロンをかけます。この時も、重さをかけません。 ⑤タオルを取ってみて、まだシワが取れていない場合には、折っていたタオルを広げて置き、またその上から高温のアイロンで重さをかけずにアイロンがけします。 ⑥きものに蒸気が残っている状態の時、そのまま干して乾かすのも良いですが、タオルを置いて再びアイロンがけして乾かすと、縫いなおしの筋までキレイになります。 ※ただし、生地の傷になっているようなものは取れません 本当にひどい深いシワの場合には、ここまでの行程を3回ほど繰り返すことで、キレイになります。ポイントはアイロンの熱と蒸気で糸を膨らませることです。 表面をやり終えたら、裏面を同じようにアイロンがけすることで、さらにキレイになります。 このアイロンがけの方法だと、高温のアイロンによって温められたタオルから出た蒸気が、乾いたタオルを通してきものに届きます。重さをかけていないので、蒸気だけがきものに届くので、水染みを作る心配がありません。 重さをかけない理由は、アイロンの熱や蒸気で繊維の折れやつぶれであるシワを膨らませることでシワを取るためです。重さをかけてしまうと、せっかく蒸気で膨れた繊維がアイロンの重さでつぶれてしまいます。 当て布にタオルを使用しているのは、タオルは手ぬぐいよりも生地の構造が複雑なので、熱が直接きものに行きにくいので安心だからです。 このように、シワ取りにはアイロンが効果絶大であることを知っていただけたと思います。 きもの以外でもシワ取りに有効なアイロンがけ ここまで、きもののシワ取りでのアイロンがけをお伝えしてきましたが、きもの以外でもアイロンがけが好きになってしまうようなシワ取りに効果的な方法があります。 普段、洗濯して乾かした後、シワ取りのためにアイロンがけしているものに効果的です。 たとえば、ハンカチで試していただくとよくわかります。 ハンカチを洗濯し、普通の脱水コースを5分~8分かけると、しわくちゃになりますよね。 このハンカチをそのまま干して乾かすと、乾いた後のシワをアイロンで取るのはひと苦労です。 シワをキレイに取るポイントは、干して乾かす前にアイロンがけをしてシワを取ることです。シワを取ってから乾かすと、本当にキレイにシワが取れます。 「うそつき袖」や「半衿」も全部洗濯機で洗って脱水をかけた後に、すぐアイロンがけをするので、シワがキレイになる、と女将。効果が目に見えるので楽しくなって、どんどんアイロンがけが好きになったと言います。 アイロンがけが心配な場合には、まずは絹の端切れや、古くて着なくなったきものから試してその効果を確認されてみてはいかがでしょうか。 女将がシワが取れるアイロンがけの方法をわかりやすく動画で説明しています。ぜひ、ご覧ください。 【常識を斬る!シワが本当にとれる方法!低温・当て布ではシワは取れない?!】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…