令和2年6月

きものであっても襦袢であっても、本当は自分で洗いたい。もしくはお手入れ代がもう少し安いと嬉しい、私でも思うことです。

 

肌着に防水機能を付けたのも、そんなことばかり考えていたことがきっかけです。

きものって着たいけど、ハードルが高すぎるんですよねっていう方を減らしたいといつも思っています。

 

そんな中でもう5年ほど前から弊社では白いダイレクトワッフルのいしき当てを使用しています。

ダイレクトワッフルというとわかりにくいですが、いわゆるリップルなどと呼ばれていたサッカー生地、ポコポコとした織りの生地のことを言います。この生地の涼しさと言ったら素晴らしいです。弊社ではロング活動着という商品を発売していますが、しっかりした厚地の綿と、暑い時用にダイレクトワッフルで作っているのです。

これを着てみて、その涼しさ、爽やかさに感心し、そして『いしき当てにしたらどうだろう!』と思いついたのです。

 

始めは綿や麻、浴衣だけでしたが、お客様に聞いてそちらでいいと言われれば、絹にもそうしています。私はと言えば、もうすべてダイレクトワッフルです。

ええ~っ!そんなの嫌です、絹には絹、綿には綿、麻には麻と思っているお客様もお店も多いはずです。ですが、いしき当てというものの意味をよく分析してみたら、絹でなくても果たされる効果、けっこうあったんです。

 

なぜ私は絹にもダイレクトワッフルを付けているかと言えば、つまりは着物の生地を守るため、糸のスリップもそうですし汚れについてもそうです。

いしきを貼ることでずいぶんときものを守っているのです。それは麻でも綿でも同じことですが、ダイレクトワッフルの良さは

 

『肌触りが清々しい』…張り付くことは絶対にありません。接触冷感を感じます。

『収縮しにくい』…相当な数を水通ししています。ですが、それほど縮まないのです。だから後から寸法がくるうことがありません。

『安価』…コスパはとてもいいです。絹のいしきの3分の1ほどです。

 

それでも絹につけるのは抵抗があるという方、きっといると思います。

ですが、一つだけ、ダイレクトワッフルの方がとても優れていることがあります。

 

それは寸法がくるわないということです。

 

絹はどうしても収縮することがあります。

私は単衣であれば絹のきものも自分で洗うことがありますので、あとからくるうことが嫌なのです。だからワッフルを好んで付けています。ただ、絹の光沢感には絶対叶わないので、第一礼装であれば、私も絹を付けるかもしれませんね。

 

それぞれに良さがあり、あくまでお好みですが、選択肢は色々あった方がいいかと思います。最近注文が増えてきました、ちょっと嬉しいです。

令和2年5月

新型コロナウィルスを敵とみなす話ばかりが蔓延しておりますので、けっして良きものとは言いませんが、この騒動に教わったことを考えてみました。

まず、ものすごい売り上げの減少で数字に首っ引きです。弊社は7月末決算なので、とりあえず7月までの売上と経費の予想図を日々作っています。

日常的な状況では絶対にあり得ないことですが、そのおかげで弊社の経営というものについて、よくよく検証するいい機会になりました。経営者は数字に強くならなければと思いつつ、儲かっていればいいよねというように全くおおざっぱな想いのまま、日々に追われてきちんと向き合う機会を先延ばしにしていました。

危機的な今だからこそ、逃げようのない状況に背中を押され数字に向き合っています。不幸中の幸い、この使い方は変でしょうかね。笑

 

次に瓢箪から駒、の話です。

 

弊社はオリジナルとして80アイテムもの商品を作っています。だから生地の在庫も、ちょっとした家が建つくらい持っています。

生地によってはたくさんの量を買わないとだめなものもあり、出来れば減らしたいといつも念じているものが生地在庫です。ところがこの度、急遽マスクを作ることにしたのですが、その際、生地の調達に苦労せずに済んでいるのです。 だってみんなあるものですから。

しかもマスクを作ろうと思ったきっかけは工場の人が切れ端でマスクを作っているとわかったことと、まだまだ世の中にマスクは足りないんだと認識したからです。

 

とても大事なお話なのですが、目の前にある困難に対し弊社が貢献できることは何だろうと考えてみたら、縫製が出来て材料があるという事実でした。

有事の時にまず考えなければならないことは「自分たちで出来る社会貢献」なのだと震災を通して学びました。それが出来る会社は必ず強くなっていくという様もみてきました。今、マスクのパッケージをしながら思うのは、今はきものではない、マスクだけど、この騒動が落ち着いた暁には、よりきものを楽しめるようなものづくりを今のうちに準備しておくぞ!ということです。

 

仕事とは、誰にどのように喜んでもらえるかを一途に考え、それを行動と形にすることなのだと毎日肝に銘じています。

 

それから、これは怪我の功名というべきでしょうか。

きちんと働き、きちんと食べ、きちんと寝て、休日もある暮らしというものを久しぶりに楽しんでいます。

わぁーっと忙しいままだと副交感神経にスイッチが入らないまま、また戦闘モードということばかり繰り返していたのだと思います。忙しいことは好きなのですが、なんか、人らしい穏やかな暮らしだなと、これはこれでしみじみ幸せを感じたりしています。寿命が延びた気がします。

令和2年4月

 

きものを多くの人に楽しんでほしい!

 

その一念で続けてきた『東京キモノショー』。

今年の5月で5回目を迎えるはずでしたが、昨今の新型コロナウイルス騒動を受け、断腸の思いで中止を決定しました。弊社の商品をお求めになるお客様にはドンピシャのイベントだっただけに本当に残念です。

 

このイベントは大きなスポンサーがあるわけでもなく、助成金をいただいているわけでもない、実行委員全員が身銭を出し合いながらコツコツ築いてきたものなのです。イベントについては全くの素人が集まり、よちよち歩きから始まって、少しずつ賢くなったり面白くなったりしながら歩んできたのです。その様は薄紙を重ねるような作業であったと思います。お客様や出展者様も含め、人のご縁や思いを本当に、一枚一枚です。それがようやく花開くんだと思えるような今年の東京キモノショーでした。

 

まずマルシェの公募、あっという間に埋まっていましたし、ステージには坂東玉三郎さん始めかなり見ごたえのあるコンテンツが出そろい、ファッションショー枠やトーク枠も全部見たいと思えるようなものが揃いました。カフェも充実し、何より会場はそれまでのコレド室町から2倍近くあるベルサール東京日本橋へお引越しも果たし、前途洋洋でした。

 

中止と言っても、限りなく来年への延期を模索している中止なのですが、その連絡を関係諸氏にお伝えしたところ、皆さん一堂に「では来年、もっといいものにしましょうね!」と言ってくださったのです。SNSで公式発表したところ、多くのお客様が「応援の意味も込めて、来年は友だちも誘っていくよ。」などと励ましてくださいました。

 

ああ、一念で走ってきてよかった

 

そう思える瞬間でした。こんなに有り難い皆さんの反応に嬉しみを隠せませんでした。こういう時にしみじみと幸せを感じます。やっててよかった、生きててよかったと。

 

せっかく作ったガイドブックです。来年、こんなイベントがきっと催されるはずです。その時のためにワクワクを育てておいてくださいね。

というわけで、実現しなかった東京キモノショーのガイドブックを同梱させていただきます。是非ご覧ください~

紙面には弊社の広告も掲載されていますが、なんと!空芯才にクロウという墨黒バージョンが新発売です。(空芯才はこれを機に少し値上げもします、ごめんなさい!)

そのほかにも『東京キモノショー』と『買いもの七緒』のために作った新商品が続々出ます。どうぞ、お楽しみに。

令和2年3月

私事ですが、二月十五日の朝日新聞社発刊「フロントランナー」というコーナーで取り上げていただきました。

朝日新聞社が個人を紹介する紙面としては一番のものでテレビに例えると情熱大陸やプロフェッショナルなんだそうです。

 

土曜日版なので年間五十四人しか取り上げられないことだけでも恐れ多いことですがその大きさが半端ない!

 

一面と三面にわたり、しかも写真が一面の半分にドーンと出るのですから、もうびっくりです。

その名の通りフロントを走っている人を紹介するという一流の全国紙に、こんな小さなメーカーが取り上げられることはそうそうないと思いました。いかにこの業界がニッチなのかがわかると思うのですが。

 

有難いことだと思います。これだけの宣伝をお金を出してしようとしたら一千万以上のことだと思います。朝日は偏りがあるから嫌いだという方もいらっしゃいますが、かなり多くの方からメッセージやお電話をいただきました。

朝一番はなんと気仙沼市長!さすがです。また、ちょうど出店していた催事場には「新聞読んだわよ~」というお客様が何人も御来場くださっているそうですし、掲載された翌日、一日の売上としてはネットショップの最高を叩き出しました。

 

 本当にありがたいことだと思います。ちょうど私のことを持ち込んでくれた他部署の朝日新聞社社員さんがいました。この方がとても熱心に私のことを売り込んでくださったことも有り難いのですが、、その先でつながった記者さんがまた素晴らしい方でした。素晴らしいだけでなく、ちょうど着物に興味がわいてきたタイミングだったそうで、こんなこともあるんだなぁと思いました。

また、来て下さったカメラマンさんもこれ以上ないくらいハートフルな方で、工場のみんなと撮ってもらった写真はたくさんの方に褒めてもらいました。物事が動くときってこういうことなんだなと思った出来事でした。

 

このような時にいつも思うのです。

 

素晴らしいご縁、あり得ないひらめきなどは神様のご褒美なんだと。神様のご褒美をもらうためには心の隅々まで清く正しく美しくする必要があると思うのですが、それは何のためかと言えば、

 

「みんなが大きな声をたてて笑えるような楽しいこと、面白いことにする」

 

なのかなと感じています。笑う門には福来るってよく言ったものです。

笑うために歯を食いしばることも思い通りにいかなくて悔しい思いをすることも、眠れない夜もありますが、目指すはみんなの笑顔です。それについてぶれずに頑張っていると神様がご褒美をくださるのだと信じています。

 

ところで、こんなふうに大きく取り上げて頂くことはもうないと思うので、この紙面は家宝にしようと思っています。 

令和2年2月

最近、大手の和装肌着メーカーに商品を真似されることが多くなってき ました。

一番初めは肌着の素材に吸汗速乾の生地を使用すること。当時、 和装肌着業界にもお客様にも綿信仰があり、やっぱり綿でなくちゃ、とか、綿以外の素材で肌着を作るなんて信じられないなどと言われ毛嫌いされたものです。でも、数年後には綿以外の素材で作った肌者がジャンジャン発売されるようになりました。

次は下から履きあげるという者表方法のキモノブラです。こちらも始めは大変驚かれ嫌われました。笑
お尻が大きいから嫌、そんな付け方をするなら嫌の連発でした。へえ、面白いねと試してくださったお客様や、弊社がなぜそのような着製方法を選んだかどご理解くださったお客様から認められ、今では弊社ナンバーワンの売り上げを誇っている商品です。そしでもうすでに何社からも履きあげるブラは発売されています。

 

また大人気の空芯才も、そっくりのものが発売されています。使用して いる材料も枕ひも部分は全く違いますが枕の中身は同じですし、何と価格も同じなのです。きっと弊社の品物を分解してメーカーをあたったんだろうなぁと推察されます。

 

また、広幅のえもん抜きにゴムベルトが付いているうそつき衿も登場しています!
もちろんすぐに購入してみました。箱の中に入っていた説明書を見て思わず大笑いしてしまいました。

弊社のパンプレットの画像をトレースしたものだったのです。これには、ずいぶんと安直にものづくりを考えてるんだなとちょっとあきれてしまいましたが、大手に真似をされるなんて光栄です。それだけ弊社の商品が認められたという証拠ですから。

 

特許取得などで商品を守ったらどうかとよく言われます。
いくつか取得 しているものもありますが、当然のことながら特許取得には手間と費用が掛かります。しかも弊社の商品はほとんどのものが特許を取ろうと思えば 取れてしまうのだから困ります笑
和茶業界はどでもニッチな市場で、肌着なんてそのまた細部になるのでニッチ以上の隙間の隙間です。そう考えると特許をとるだけの純利益を上げるのは大変なことですから、特許に関してはよほど慎重に考えることにしています。

 

類似品がどんどん発売されるようになって、基本的なことなのですが実はとても大切な気付きをもらっています。
それは、弊社の商品は特許以上に強固な守りがあるということです。それは一口に言って「愛」です。

愛するが故の努力の積み重ねが必ず結果に出ることを確認することが出来ました。類似品を見て思うのは、表面的なことばかりをなぞっていると いうことで、弊社がその商品を世に送り出したことの真髄は、真似の中には残念ながらないのです。もっと真剣に真似てほしいです。
そうすれば、 喜ぶお客様が増えるのですから。
そして弊社もますます努力しなくてはならなくなるのですから。
正のスパイラルを作って、きもの業界に、ともに貢献しましょうよ。

令和2年1月

新年 あけましておめでとうございます。

 

当たり前の年頭のご挨拶ですが、もし家族に不幸があったらこのようには書けないといつも思うのです。それは母が老いているからですが、いつごろからそんなふうに思い始めたのかなと考えてみても思い出せません。

父はもうすでに他界しているので、順番どおりなら次は八十八歳の母なのですがまだまだ元気なのに、こんなことを娘が想像していると知ったら、なんて言うでしょう~

 

年頭に縁起でもないと思われる方もいるかもしれません、ごめんなさい。これは先に謝って、話を先に進めます。

実は昨年、人と動物の仏衣を作りました。つまり、死に装束です。

すべてが天然素材で作られている肉体最後に着る(もしくは着せる、ですね)衣服です。

その最後の衣装は天然素材で固めたいとずっと考えておりました。ですから念願叶って、やっと作ることが出来たということです。

 

生地の組成を触ってわかるというのは私の特技です。それでもわからない素材というものもあり、その場合、生地を燃やして確かめるという方法を取ります。燃え方、臭いで判断するのですが、私が一番好きなのは絹です。その次は綿、ウールです。化学繊維は好きではありません。どれも臭くて激しく燃えることと、非常に熱いのです。

私は親戚が多く、数々の納棺を見てきました。そのときいつも思うのは「こんなナイロンのペラペラなものを最後に着るんだな。」ということ。

父が亡くなってから、そのことをよく考えるようになりました。

 

私は、死というものをポジティブにとらえている派です。家がクリスチャンということもあってか、あちらの世界に行くということは父なるイエス様の元に帰るということだと教わってきました。そのことが大きな影響を与えていると思いますが、自分の死も決して嫌なイメージではとらえていません。がんばったね、よかったよと言われたい、そのための人生だと考えたら最後はせめて絹を着て逝きたいなと思い、仏衣を作りました。

 

まだ手をかけ切れていないため、ページは作ったものの潜ったままにしてあります。同じように考えている方がいれば、お知らせしないのは不親切なことなので、今年はそちらにも力を掛けていきたいと思っています。

年頭の誓いです、これはお客様にもスタッフにも!見てていただきたい、というか監督してもらいたいため書きました。口だけ番長と言われないように頑張ります。笑

 

今年もよろしくお願いいたします。