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きもののお仕立て代、安い?高い?

きものを着はじめてすぐはあまり気づきにくいかもしれませんが、少し着慣れてくると着るきものによって着ごこちが違うことを感じることもあると思います。 たとえば、この違いは生地の問題なのか、袷だからか、単衣だからだろうかと考えるうち、仕立ての重要性に気づく人が増えてきています。 今回は、きもののお仕立て代の考え方や選び方について、お伝えします。 着ごこちを作る反物を大切にする仕立て ここ10年で、きものを着る人が増えましたが、それまできものを着ない時代が長かったため、その間に仕立てに対する認識が相当衰えたと感じています。 お仕立ての仕上がりがキレイであることはもちろん大事ですが、たかはしで一番大事にしているのは着ごこちです。 仕上がりがキレイではないけれど着ごこちがよいきものは存在しません。キレイな仕立てでありつつ、着ごこちも考慮してくれる和裁士さんや仕立てを大切にしたいと考えています。 京染め屋としては、反物に傷をつけないことがとても大事だと思っています。 きものが仕立てられて納品されるときには見えませんが、何十年も後になってから生地に傷がついていることに気づくことがあります。 たとえば、寸法を5分広げようときものを解いてみたら、生地にチャコペンで線が引いてあったり、ヘラで傷つけられていたりして、洗い張りしても修復できない傷が見つかることがあります。 これは反物への愛のなさの表れだと思います。きものは、着まわしたり、仕立て直したり、代々受け継ぐことができます。だからこそ、反物を大事にする和裁士さんや仕立て屋さんを大切にしたいと思っています。 きものは、裁ち落としで余分なはぎれが出なければどこも欠けていないので、解いて一枚の反物に戻すことができます。 洋服の場合、型紙に合わせてカットしてしまうため、生地に戻すことはできません。生地をカットすることで余分を無くし、体に沿うラインを作ります。 きものは直線だけで作られるわけではありませんが、たとえば、衿元がキレイに畳みこんだ中でぐちゃぐちゃにならないようにも配慮しながらつけられています。繰り越しを切って裏表どちらに返しても問題がないようになど、きものは、いろんな工夫がされています。 一枚の反物を無駄にすることなく工夫がされてきたきものなので、仕立ての際に、印で傷が付けられてしまうのは悲しいです。 仕立て直さないと決めたものは、どうでもいいと考えるのもひとつだと思います。 たとえば、ミシン仕立てにするか、腕のいい仕立て屋さんにするか、そこそこの仕立て屋さんにするのか、選択できるのであれば、自分はどうしたいのか、考えましょう。 たかはしでは、直接仕立て屋さんと繋がっていて、Aさん、Bさん、Cさんと振り分けながら仕立てを頼んでいます。もし万が一、何か問題が発生しても対応できるような仕組みを作っています。 業者さんに一括して依頼するお店もありますが、業者さんの個性を信頼して依頼する場合もあります。それぞれのお店や業者さんによって違うので、仕立てについて考慮した上で、どこに依頼するかを選んでほしいと思います。 たとえば、安く仕立てたいのであれば、とにかく値段が安いところにお願いすればいいですし、着ごこちを重視したり、反物を大事に考える人にお願いしたいのであれば、そういう和裁士さんやお店を探して繋がることも大事だと思います。 きものの仕立て代が安すぎると言える理由 足かけ7年、和裁職人大賞を東京キモノショーで発信していて、星獲得者を毎年輩出しています。 和裁士さんの数が減少していることや和裁士さんを取り巻く環境が懸念材料としてあって、ずっと何かで発信したいと思っていて実現しました。 最近では、YouTubeやFacebookでも、和裁職人を守ろうという動きが見られますが、これは本当に大事なことです。 和裁士さんは高価な反物にはさみを入れるリスキーな仕事で、技術を身につけるためには学校で4年間学び、その後も一人前になるまで格安で使われるような修業期間があり、プロへの道は厳しいです。 国家資格でもあり高い技術を持ちながら、時給1000円に満たない賃金で働いている和裁士さんが多いのが現状です。 縫製工場でも、時間当たりの生産量が重視されますし、手も荒れてしまうことが多いです。 早く縫うことを優先すると粗雑になってしまったり、丁寧さを優先すると一枚当たりにかかる時間給が高くなる問題を、せめぎ合ってどこに落とし込むのかがお店や業者の手腕にもなります。 では、きもの一枚を縫うのにどれくらいの時間で縫えると思いますか。 反物によっては耳がつっていたり、地の目が曲がっていたりすると、地のしに1日をかける方もいらっしゃいます。 切って済むのであれば時間がかかりません。反物はものによって、ラッキーと思える素直な反物と、強情っぱりな反物と当たり外れがあると思います。 おそらく一枚のきものに平均20時間から30時間はかかると考えています。一日8時間週5日とするとひと月平均172時間働いて、一枚25時間かかるとするとひと月で6枚から7枚です。 一枚の仕立て代を25,000円もらったとしても、月15万~20万円です。 これが高いか安いかは意見が分かれると思いますが、全然安いと思います。なぜなら、正社員として雇用されているならいざ知らず、個人で請け負っている場合がほとんどですから、雇用保険も社会保険もなく、電気水道光熱費を払って、保障もないわけですから。 もし和裁士さんに30万~40万円を手にしていただくとなると、仕立て代が5万円になるわけです。 反物に対しての愛のない人で仕立ての腕がいい人はいないと思っています。 考える力のある人、創意工夫ができる、クリエイティブな力を持っている人、課題や物事に対して掘り下げがきちんとできる人が腕がよくなっていきます。 そんな素晴らしい人たちが世の中にいるのに、その人たちに仕立てをせずに、安い仕立て代をもらうより他所で働いた方が儲かると言われないような金額にしていく必要があると思います。 たかはしも業者さんとの間に入ってお仕立ての仲介をしますが、その際、お店の手数料として2割ぐらいをいただいています。この金額を多いか少ないか妥当と思うかはそれぞれだと思います。 お店でも人件費がかかります。検品したり、伝票を書いたり、きものをたとう紙に入れたり、いろんなことをします。お仕立てに手数料2割いただいても実は赤字ですが、サービスの一環として考えています。 この組み立てをよく考えた上で、お仕立てを和裁士さんに直接お願いしたい場合は、ネット上で発信している和裁士さんと直接繋がるといいと思います。 ただし、万が一、裁ちミスがあったり、汚れ・シミがついてしまった、思っているように仕立てあがらなかった場合などには、間に立つ人間が居ないため、和裁士さんと話し合うなど、ご自身で対応する必要がでてきます。 お店として間に立つ場合は、仕立て屋さんも守る、お客様も守るという立ち位置をきちんと守った上で手数料をいただく分には、2割が3割でも4割でも5割でもいいと思っています。 ここまでの話を踏まえても、現状の仕立て代ではあまりにも安いのではないでしょうか。 たかはしでは、仕立て代をランク分けしていて、ハイテクミシンを含めて一枚の値段が2万円から5万円までの4段階に分かれています。仕立ての腕によって金額が異なる方式を取っています。 きもののお仕立てに限ったことではありませんが、すべて人任せにすると、満足いきません。 たとえば、とくに希望も伝えず仕立てをお任せしますとお店にお願いした結果、こんなこと頼んでいないとトラブルになるケースを出先のお店でも聞くことがあります。実際、対応するとなると困ったお客様だと思います。 やはり任せる側には任せた責任があって、大人同士のお付き合いや取引の中には、その責任を受け止める覚悟が必要です。お金を払う側が偉いとか何を言ってもいいわけではなく、相互で信頼しあう関係性を築いていくのに尽きると思います。 ぜひ、自己責任で楽しんでください。 女将による仕立てや和裁士さんへの愛ある動画はこちらをご覧ください。 【聞きたいけど聞けない、きもののお仕立て代を紐解く!お仕立て代、高い?安い?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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お仕立てのこだわりポイント!きものに柄を活かす裁ち合わせとは?

たかはしで、墨流し作家・恭平さんの墨流し染めで縦に柄が分かれているタイプの反物を発売しました。 同じように反物の右と左で柄が違う反物を見かけたことがあると思いますが、その反物からきものやコートを仕立てるとき、どのようにされているでしょうか。 たとえば、何も考えずにお任せして、仕上がってきたきものが自分の想像とは違ったものに仕上がってきたら…。 せっかくお金をかけてきものを仕立てるならば、満足してたくさん着たくなるような仕上がりにしたいですよね。 今回は、右と左で柄が違う反物をどのようにして柄を合わせていくのかについてお伝えします。 たくさんの組み合わせがある柄合わせ たかはしのウェブ担当がこの商品を出すと言ったとき、「お客さんが柄合わせに困るよね」という話になりました。そのため、柄合わせをどのようにすればいいのかを説明する表を作ることにしました。 するとものすごい数の組み合わせがあって、その中からこのパターンで作りたいですと選んでもらうための表です。実際に作ってみたら結構な量になったので、作った本人もびっくりしていました(笑) 柄合わせを考えていくとき、大枠で気をつけたいポイントは3つ。 まずひとつめは、反物の幅の中でどこを背中にするのか、どこを身ごろにするのかを考えることです。背中や脇のラインにどんな柄をもってくるのかによって印象が変わります。 ふたつめは、衿と衽です。どちらにどの柄をもってくるのかによっても違ってきます。 三つめは、小紋テイストにしたいのか、粋なパーティー着テイストにしたいのか。 さらにはっきりと気をつけたいことは縫い込み部分です。昔に比べて今は反物の幅が広くなっています。 たとえば、細身の方の場合、反物の縫い込みがとても多くなります。そのため、どこが縫い込まれるのかも考えます。 背中心にどちら側の柄をもっていくのかにもよりますが、たとえば、たくさん出したい色柄の部分があったとき、柄の多い側を背中心にもってくると、脇に柄の少ない側が縫い込まれます。 仕立てる際に、背中心はだいたい約1cmぐらい縫い込まれます。反物の幅が標準で30cmぐらいのため、脇で7~9cmぐらい、細身の方の場合、10cmぐらい縫い込まれます。そのため、柄の少ない無地場が減って、柄の多いところが全体に対して多くなります。 逆に、柄を少なくしてスッキリした印象にさせたい場合、背中心に柄の少ない無地場をもってくれば、柄の多い部分が脇で縫い込まれるため、まったく反物の見え方が違ってきます。 昔、一般的と言われていた「追っかけ」という色柄の濃淡を繰り返す合わせ方があります。 たとえば、柄の強い部分の隣には必ず柄の薄い部分がくるようにして、右の袖口に柄の強い部分が欲しいとなったら、濃淡濃淡濃淡濃淡となります。 逆に、左の袖口に濃い柄が来るようにすると「追っかけ逆流れ」になります。 ほかにも、ぼかしや縞でもグラデーションで薄い縞から濃い縞になっていく粋な柄もあると思いますが、同じように柄の強い部分が縫い込まれるのか、無地場の部分が縫い込まれるのかによって、柄の出方がかなり変わります。 もし「追っかけ」の合わせ方がよければ問題はありませんが、柄の強い部分をたくさん出したい場合には、合わせ方を変える必要があります。 たとえば、背中心に柄の強い部分を合わせると柄が強く出る部分が多くなります。袖は両袖口に柄の薄い部分をもっていくことで、柄の強い部分を体の中心に寄せる合わせ方もできます。 逆に両袖口に柄の強い部分をもっていくことで、肩のところで無地場の部分が重なり、肩から袖と背中に向かって色がふわっと濃くなる作りにすることもできます。 こんな風に柄合わせを自分で考えて楽しんでもらえたらいいかなと思います。 お仕立ての際に黙ってお店に任せてしまうと、どんな風に仕立てられたとしても文句の言えないところです。指定しなかった点や店側もきちんと希望を聞かなかったということもあるとは思いますが、自分が買ったものに対する責任があると思います。もちろん、それを売ったお店の責任もあります。 たかはしでも、うっかりして柄合わせを聞かないまま注文を受けて、後からLINEで打合せをしたりということもあります、すみません。 反物を買うときには、柄合わせも考えて、気をつけたらいいかなと思います。 身ごろと袖の合わせ方を、右から追っかけるのか左から追っかけるのか、柄を寄せてくっつけるのか、柄を離してくっつけるのか、背中はくっつけたけど袖は一方に寄せるのか、組み合わせはいっぱいあります。 たかはしの販売ページでは、身ごろと袖の柄のパターンを選ぶと柄合わせを決めることができるので参考にしていただければと思います。 もうひとつ大事なことは、衽と衿が反物のどちら側になるのかということです。 きものを仕立てる際、衿・衽は反物を、衽のラインと衿のラインで真ん中で裁ちます。 たとえば、衿に色柄の弱い側を持ってきたいのか、色柄の強い側を持ってきたいのかで全然印象が変わります。こちらもどっちがいい悪いではなくあくまで好みです。 それから背中に反物のどちら側を持ってくるのかによって、前に生地が繋がっているので、前面の印象も違ってきます。 たとえば、全体をスッキリとした印象にしたいために、背中に無地場を合わせたとします。その場合、前身ごろも同じように無地場が全面に来ることになります。 脇に縫い込みがだいぶ入ることになると大人しい印象になるところに、衿に色柄の強い方を合わせると、衿と脇に色柄の強い部分が見えるだけとなります。 そのため、前身ごろとのバランスも大きく関係します。 一番重要視しているのは衿元に反物のどちら側を持ってくるかです。 その次に大切に考えたいのが、衽に反物のどちら側を持ってきたらいいのかです。 たとえば、無地場を前に持ってきたとして、そこに無地場の衿が付いていたら、少し寂しい印象になりますよね。 衿に色柄の強い側を持っていきたい場合、柄目が変わっても影響が少ない反物であれば、生地を逆さに合わせることもできたりします。 柄合わせを考える時、一番は反物でどの部分を見せたいかによって脇と背中の縫いをどちらに連れてくるのかを決めることです。二番目に衿の顔映りを考えること。そして、三番目に衽と前身ごろの合わせ方がどうかを考えて「裁ち合わせ」を決めていくとよいと思います。 以上の3つを考えることで、反物の柄をきものにどう生かすかを決めることができます。柄合わせを考えることで、仕立て上がりを待つ間のワクワク感も高まります。 反物を買うときには、なにもかもお店に任せきりではなく、お店の人と一緒にどう仕立てるかも考えて、満足の行く仕立て上がりにしてください。ご参考になれば幸いです。 女将による詳しい裁ち合わせの動画はこちらをご覧ください。 【きものがもっとワクワクする!お仕立てでこだわりたいポイント!「裁ち合わせ」どうしてる?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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うそつき襦袢と長襦袢、どちらを選ぶ?

きものを楽しむ上で、きものを汗などから守ったり、きれいに着こなしたりと襦袢は大切な役割を果たしています。襦袢には「うそつき襦袢」と「長襦袢」の二種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。 今回は「うそつき襦袢」と「本襦袢」それぞれ、何を軸に考えたらいいのかを整理してお伝えします。 長襦袢の魅力とは? きちんと「長襦袢」を着ると気持ちもシャンとします。その「長襦袢」のメリットは、着ごこちの良さと上質感です。 とろりとした絹に包まれる着ごこちの良さは、きものならではの醍醐味のひとつです。また、きものからチラッと見えたときの色や柄の効き方などのおしゃれを楽しむことができるのも「長襦袢」の大きな魅力です。 さらに、「暖かさ」もポイントです。重ね着をすることで、寒い季節にぴったりのアイテムです。 一方で「長襦袢」のデメリットは、反物から誂えるので経済的な負担があります。また、半衿を長襦袢に縫い付ける必要がある点と、重ねて着る分、暑さを感じやすい点が難点だと思います。 最近は温暖化の影響で、急激に暑くなることも増えてきたので、そういう時に「長襦袢」を着ていると、暑さを感じる点がデメリットです。 うそつき襦袢のメリット・デメリット 「うそつき襦袢」のメリットは、半衿を縫い付ける必要がないため手軽です。 たかはしでは、うそつき衿の土台だけの商品も販売していますが、あらかじめ半衿をミシンで縫い付けたうそつき衿も販売しています。 販売当初は、うそつき衿を何本も買わないだろうから、あまり売れないのではと思っていました。でも実際は、意外と人気で、複数本買うお客様が多いです。 たとえば、最初は半衿を都度、縫い付けていたという場合でも、だんだん面倒になって日常的に使う半衿はミシンで縫い付けてしまうということがあるようです。うそつき衿はそのまま洗濯機に入れて洗うこともできますから手軽ですね。 参考までに「うそつき襦袢」や「うそつき衿」の「うそつき」という名前は100年も前からあります。 きものが日常のことなので、半衿を付けなおしたり、暑さの点や、洗濯を楽にできる様にしたり、洗濯後にアイロンがけをしないで済むようにしたりなど、簡易に済ませられるような襦袢が出てきたのだと思います。 しきたりきもの、礼装が”きもの様”になった時代に、必ずきものと「長襦袢」をピタッと合わせて着なければいけませんという販売方法が主流だったときには、長襦袢は必須でした。 日常きものでは当たり前に簡易なものが100年以上前から利用されていたので、そういう意味では「うそつき襦袢」は昔あったものを復活させたような感じですね。 「うそつき襦袢」の最大の魅力は半衿の縫い付けが最小限で済むことです。 たかはしの「うそつき衿」は衿だけで付けることができます。肌着の上に衿だけつけているので、Tシャツの上につけることもできます。重ねて着なくていいので、温暖化が進むこの頃では、身軽で涼しいことがメリットです。 「うそつき襦袢」のデメリットは、「長襦袢」の素敵さを味わえないことです。また、「長襦袢」の場合は纏うことで自然に気持ちがシャキッとしますが、「うそつき襦袢」の場合には自分で気持ちを作り込んでいくような感覚が必要かもしれません。 あなたの理想の襦袢を選ぶなら? どちらを選ぶのか、選ぶ基準は、用途や季節、そして自身のライフスタイルに合わせて選ぶとよいと思います。 日常的にきものを楽しむなら、「うそつき襦袢」はとても便利です。一方で、特別な日の礼装には、「長襦袢」も素敵です。 たとえば、「長襦袢」をお使いの場合でも、「うそつき衿」を一本持っていると、「うそつき袖」が十枚あれば襦袢を十枚持っているのと同じような見え方にもなります。お財布にも優しいおしゃれの楽しみ方もできます。 「うそつき襦袢」と「長襦袢」、それぞれの特徴を理解することで、着るときの気持ち、自身の好み、きものに合わせて、自分が一番心地よい襦袢を選んでみてください。 女将による解説はこちらの動画をぜひご覧ください。 【あなたの理想の襦袢を探しましょう!うそつき襦袢と長襦袢、どっちがいいの?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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一枚でしっかり整う!ウエスト補整の救世主!

きものを着るとき、ほとんどの人に必要なウエスト補整。一枚でしっかり補整する「満点腰すっきりパッドスキニー(以降、スキニー)」の幅広バージョンが登場しました。 従来のスキニーに比べて5cm幅広くなって、前につけていたブランドネームとサイズネームを後ろに移動しました。 東京キモノショーでのモニター販売では、Mサイズが完売して、Lサイズが少し残ったぐらいでした。 モニター商品をご購入いただいたお客さまからご意見をいただき、その貴重なご意見を反映してと言いたいところですが、実はほぼご満足いただけたので、モニター商品からの変更はちょっとだけで、ほぼ変わらない形での発売となったのです。 モニター販売から発売まで、時間がかかった理由は、実は生地を待っていたからでした。 今回は、スキニーの幅広について、従来のスキニーからどんな風に変わったのか、どんな体型の方が幅広に向いているのかをご説明します。 スキニーの幅広が向いているのはこの体型 幅広スキニーがオススメなのは、どんな体型の方かというと、背の高い方です。なぜなら、背が大きくなる分、ウエスト周りも長くなるので、幅広が向いています。 この幅広スキニーの試着を含めて一年以上使っていますが、ときどき従来の普通幅のスキニーを使うこともあります。ただ、いったん幅広を使うと、普通幅では心もとない感じがありました。普通幅は、暑いときに楽に着たいときに使うぐらいで、それ以外は幅広ばかり使っています。 きものと帯を汗から守るのはもちろん、幅が広くなったことによる暑さは感じません。 ただし、幅広いと暑さを感じる方もいらっしゃいますので、自分の体に聞いて、ご自身の体感と合う方を選ぶとよいと思います。幅広を選ぶ目安となる身長は、160cm以上です。 背の高い方以外では、従来のスキニーでは胃が出てしまうとか、お腹のお肉も恥骨に近い方にお腹が出るという方も幅広が向いています。 従来の幅だとお肉を持ち上げきれず、お腹にお肉が残って下腹がポンって出て、スキニーを巻いた下にお腹のお肉が落ちてきてしまうという方にもオススメです。 それからパーンと腰肉の張り出しがある場合、お肉を持ち上げる力を十分働かせるためには、スキニーを下の方からつけてクーッと上げてくることでお尻も上がります。 従来のスキニーでもお尻が上がりますが、幅広でも当然お尻がクッと上がりますので、お尻を上げたい方にもおすすめです。 たとえば、身長150cmくらいの背の低い方は、今までの幅のスキニーで十分だと思います。 お肉の量が多くて、下から持ち上げるとスキニーの上にお肉が溢れてきてしまうという方は、幅広で押さえることができるのでよいと思います。 また、骨格診断でウェーブ体型の方、砂時計のように細いウエストに対してお尻や太ももに張りのある体型の方は、身長がそれほど高くなくても幅広の方がキレイに入る場合もあります。 スキニー幅広は貼る部分が二段に 従来のスキニーと違う点は、貼る部分が二段になっています。 一回で位置を決めようとすると大変です。つけ方としては、まず下の5㎝を締めてつけます。そこからゆっくり平らにしながら上をペタッと貼ります。 体型によってスキニーの上部がプカプカする場合もあると思います。多少歪んでも構わないので、上の脱着テープをさらに引いて貼りつけるようにします。 腰まわりとウエストに差が大きい体型の方の場合、二段になっていることで貼りやすいと思います。また、胃が出るタイプの方も幅広の面積で押さえることになるので、安心感があるはずです。 オリジナル開発の消臭・抗菌生地で肌にやさしい そして、大きな変更点としては、肌に優しい生地になりました!。 たかはしがオリジナルで開発したデオ・コットンという綿100%の新素材を採用しました。体に害のない方法で抗菌と消臭の性質を持たせた、まったく新しい生地です。。生地の織りがワッフルではないため、少し薄手にもなっています。 まず、なぜ抗菌が良いのかをお伝えします。 たとえば、肌が摩擦に弱く、かくとミミズ腫れのようになる方や、その傷がなかなか消えないタイプの方、化学繊維などの素材に弱い方にもおすすめです。 肌が傷つくのは防げませんが、傷がついたところに雑菌が入り、その菌が増殖することで傷が悪化したり、かゆみが増えることに繋がります。 抗菌効果があれば、その菌の増殖を防ぐので、かゆみは相当軽減されると思います。肌にかゆみが起きやすい方にモニターしていただいた結果、かゆみが来にくいとお声をいただいています。 東京キモノショーでのアンケートでも、かゆみが来にくかったというアンケート結果が出ています。当社比での結果ですが、きちんと科研で検査をして、抗菌作用がきっちりあることが証明されています。洗濯実験では、洗濯後の生地の抗菌作用がむしろ上がっているくらいでした。 たかはしのオリジナル標品の中では一番かゆみが来にくい商品となっていますので、安心して使っていただきたいです。この生地を開発できたことによって消臭・抗菌効果が期待できることが大きなふたつ目の変更点です。 補整と暑さ軽減にもなる小型メッシュパッド付き もうひとつの変更点は、最初から体に沿う側にインナーメッシュT字型の小型版のようなものを腰の部分に入れています。 なぜ入れたのかというと、幅が広くなった分と生地が薄くなった分、生地がよたよたになったからです。 また、何も補整が必要ないという人はほとんどいませんし、5ミリぐらいのメッシュパッドが入ることで、体との間に少しでも空気の層が入るので密着しない涼しさもあります。 風が通るわけでも冷たいものが当たるわけでもないのですが、体に密着せずに離すことによって、タオルを入れるよりもメッシュパッドの方が断然、体への暑さの負荷が軽減されます。 その点はみなさんからご支持をいただいておりますので、それをマシマシにしたっていうのがこの幅広です。しっかりメッシュパッドが入っていますので、生地を持ってもクタッとしません。 メッシュパッドが入っていない状態だと、生地がクタッと落ちていくことがあって、巻いたときの面倒くささに繋がりますので、そういうことがないようにしました。 大きく三つ進歩しましたので、ぜひご愛用いただけたら嬉しいなと思います。 さらに安定感マシマシになる使い方 従来の「インナーメッシュT字型(以降、インナーメッシュ)」を幅広で使う場合の使い方をお伝えします。スキニーの幅広に腰パッドを一枚入れることで安定感がマシマシになります。 従来のスキニーでは、インナーメッシュがつきあたるまで、ただ入れてくださいとお伝えしていました。 幅広の場合、つける方の体型によってインナーメッシュをつける位置が違ってくると思います。 たとえば、足の付け根の部分・鼠径部からスキニーをきっちりつけるのか、胸下を起点に鼠径部までつけるのかによって、スキニーをつける場所が違います。 骨格診断のウェーブ体型の方と、腰まわりにお肉がたくさんある場合と、ウエストと腰まわりの差がたくさんある場合と、いろいろあると思います。 インナーメッシュのT字型の下の厚みのある部分は四重構造になっています。この部分がちょうどお太鼓の下線に当たるのが理想的な使い方になります。 もしくは、もう少し上でもいいです。というのも、位置が下がってしまうと出っ尻に見えてしまうので、お太鼓の下線より下がらない位置がおすすめです。 インナーメッシュの出し入れが面倒な場合は縫いつける たとえば、女将の場合、スキニーの上部にインナーメッシュの上部を合わせ、鼠径部ギリギリからスキニーをつけるのが心地がよく、一番収まりのいい形です。 つけ方が決まっているのでスキニーとインナーメッシュを二か所ぐらい縫いつけています。 インナーメッシュを入れたり出したりたったそれだけのことですが、縫いつけることでその面倒さが無くなるので、ストレス軽減にもなります。 インナーメッシュを縫いつける場合、その人の体型によって、真ん中ぐらいの位置がいいという場合と腰パッドがスキニーの下まで届く位置がいいという場合とあると思います。 もし、スキニーの真ん中ぐらいの位置にしたい場合、表側には防水布があるので穴を開けないでください。 防水布に穴が開くと、その穴から汗がしみ出してしまうので、防水布を傷つけないようにします。 体側の方に縫いつけると、洗濯のときなどのストレスもかなり軽減されますので、やってみていただけたらいいかなと思います。 「満点腰すっきりパッドスキニー幅広」、ウエスト補整はもちろん、汗からきものを守るため、肌のかゆみを防ぐためにも、使っていただけたらありがたいです。 バージョンアップしたスキニーを喜んで解説する女将の動画はこちらをご覧ください。 【一枚でしっかり整う!ウエスト補整の救世主!いよいよ新登場です!】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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着倒して穴が開いたきものを羽織にリメイク

お気に入りで何度も着たきものや、お母さまやお祖母さまから譲り受けたきものなど、愛着があって手放せないきものってありませんか? たとえば、着倒して擦れや穴があったり、日に焼けて色が落ちていたり、そんなきものもリメイクすることで、きもの生活を楽しむアイテムに復活できますよね。 今回は、30年以上着倒して穴が開いたきものをどのような工夫で羽織にリメイクできたのかをお伝えします。 気仙沼で京染悉皆屋が元々の仕事 たかはしは、もともと肌着屋が専門ではなく、まったくのド素人から異業種参入で肌着メーカーになりました。 もともとの仕事は、京染悉皆屋です。きもののお困りごと相談所のような、すべて見渡すというのが悉皆の意味です。御誂京染たかはしとして、今でも宮城県気仙沼市で行っています。 ▼悉皆(しっかい)についてはこちらをご覧ください https://wanomise.k-takahasi.com/sikkai 新社屋に移転したとき、お店の名前を「wanomiseたかはしきもの工房」にし、たかはしきもの工房に統一しましたが、業務としては肌着メーカーよりずっと前から、洗い張りをしたり、染み抜きをしたり、染め替えをしたり、白生地から誂たりということを行ってきました。 それらを見立てられるような物の良し悪しだったり、お客さまにどんな色が似合うのか、どうリメイクしたら有効活用できるのかなど、きものに関するあらゆる見立てが本来の仕事です。 そこで今回は、悉皆業で培ってきた見立てのワザも駆使し、30年以上着倒して傷んだきものを羽織にリメイクしていきます。 傷んだきものを羽織に仕立て直す 20代の頃に仕立てた、有松絞りの竹田庄九郎さんの紬です。 30年以上着てきて、洗い張りは少なくとも二回はおこなっています。洗い張りをかけるとき、八掛が切れてしまっていたので、相当着ています。 この紬は、きものには仕立てられない状態まで生地が傷んでしまっています。 どのくらい傷んでいるのかというと、生地が擦り切れてしまい白くなっています。 もっとひどい箇所だと、穴ぼこだらけです。 きものにした場合、どの部分になるかというと脇の部分です。帯や帯板とも擦れますし、手で何度も触ります。 そのため生地が切れています。下前の右側の前の部分にあたります。 衿肩あきというのがあって、生地が後ろに倒れるのが繰り越しになりますが、上前もしっかり穴が開いてしまっています。 後ろ側の身ごろは、前側に比べると手を突っ込まないのでまだ傷みはマシですが、ちょっとだけ穴になっているところもあります。 体が動くことで生地に力がかかりますし、ドアノブなどに袖を引っかけたりして、多分そのために傷みがひどくなっていると思います。 きものの裾は八掛が守ってくれますが、脇はきものの生地の裏側に胴裏になるので、直接きものに傷みが行ってしまうところです。きものを着倒すと一番きものの本体で脇の部分が擦り切れます。 穴や擦り切れ以外にも、日に焼けることで縫い目の中と外で色が完全に変わってしまいます。 この紬だと、本来は濃いグレーのような色ですが、日に焼けてだいぶ色が落ちてしまっています。 ここまで穴が開いたりして傷んだきものは、寸法をつめて縫う場合はいいので、体型が小柄な人に譲る場合もあります。ただ、ここまでひどいと人に譲るのにもあげるにあげれないなと思っています。 たとえば、たかはしのスタッフで小柄な人で似合いそうな人がいれば、傷んだ箇所を避けて縫えば全然問題ありませんし、生地がものすごいこなれているので最高の着心地になるので、もらってもらうこともあります。 しかし、このきものは、ここまでひどいとねっていう気持ちもありますし、本当に好きなきもので、人生をともにしてきたっていう感じもあるので、もう一回着たいなって思ってこれをどうしようかと考えました。 男仕立てにすることで着姿もスッキリ 同じ肩幅で仕立ててしまうと、傷んでいる部分が脇に来てしまうので、男仕立ての羽織にすることにしました。 なぜかというと、男物のように縫ってしまえば、脇の傷んだ部分が飛び出る心配を考えなくていいからです。 幸いにも元々の絞りがオレンジ色なので、元々の色なのか日に焼けた色なのかがわかりにくくなっています。汚れも日焼けも見えにくいです。 実は、上前にも穴が開いてて、なぜこんなところに穴が開くんだろう?というようなところに穴が開いています。膝下あたりの部分なので、どこか硬いところに何度もあたったことで擦り切れるような形になったのかもしれません。 穴が開いていても返りに入っていくので、全然気にならないのでかけつぎもしません。かけつぎが要らないのも幸いなのは、袖に焼けがなかったためです。 もし袖に焼けがカキッとはっきり出ていると袖幅を出すことが大変でした。焼けがないので袖幅をめいいっぱい出して、身ごろの幅を削ることにしました。 穴が開いて擦り切れていたきものを男仕立てにして、袖を身ごろにくっつけました。 なぜかというと、中に擦り切れた部分を完全に入れて仕立てているからです。 羽織は身ごろを重ねないので、幅が狭くなってもかえってバサバサしなくてスッキリ見えませんか。 肩からつめてもらって、穴の開いた部分まで中に入って、下ろしてもらっています。 普段着る羽織よりも身幅が少し狭くなっていて、身幅を後ろにちょっと出すことで、後ろでちょっと補いつつ、穴が開いて切れていた部分を完全に中に入れる形で仕立てています。 20代からずっと愛用してきたので、きもの人生を一緒にいるような存在で、本当にかわいくてかわいくて、人にはあげられないっていう感じで着倒してやろうと思って最後羽織にしました。 みなさんも大好きなきものがあると思います。たとえば赤いきものとか、なんか手放せないのよねっていうきものがあると思います。 きものの一番の醍醐味は自分で着て育てて、ともに歩いてきたという思いになれるとか、お母さんのきものやおばあちゃんのきものだったり、おばちゃんのきものだったり、母から娘に贈るきものだったり、この思いを形にしたようなきものが、非情に大きな価値だと思っています。 これはお金では買えない最高の楽しみですから、みなさんも一緒に楽しんでもらえたらいいなと思っています。 着られないけど大好きで手放せないようなきものがあったら、ぜひ、創意と工夫でモノにしましょう。 きもの人生を一緒に歩んできたきものへの愛情たっぷりの女将による動画はこちらをご覧ください。 【きもののリメイク、意外と自由にできるんです!着倒したきもの、〇〇にする⁉】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
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たかはし女将、きもの警察を語る

日常できものを着ていて、「もしきもの警察に出会ったら…」と思ったことはありますか? 一般的に「きもの警察」という言葉は、良くないイメージで受け取られていることが多いと思います。 たとえば、帯が曲がっている人がいたとき、「帯が曲がっているので、直しますか?」と聞いて、帯を直してあげた場合、人によってはこの状況も「きもの警察」と感じられることもあるのかもしれません。一方で、きもの警察をきもの警察するような状況もありますよね。 今回は、きもの警察とは誰のことだろうか?というのではなく、きものをもっと楽しむために、きもの警察について、本気で考えてみました。 結論、きもの警察も愛 きものを楽しむ上で、あれダメ、これダメという言い方をもうやめたいと思いますし、お互いにしたくないなと思っています。なぜなら、きものを着ているだけで嬉しいし、着てくれただけで嬉しいからです。 たとえそれがどんなことであっても、あらら?ということであっても、きものを着てくれていると嬉しいし、もし好きじゃない着方であったとしても、きものを身に纏っているだけでヨシ!って感じです。 これを土台として考えていくと、結論、きもの警察も愛です。 つまり、きもの警察と言われてしまうかもしれない人って、きものを良くしたい、きものをきれいに着ていてほしい、着方を間違っていたらあなたが恥をかくよと、思っているのだと思います。 結果として、取り締まるという表現になっているのは、知っている人が知らない人に教える体になるので、おのずとマウントを取ってしまうような感覚があって、それが言葉や態度にちょっと出てしまうのではないでしょうか。 震災後の気仙沼で、きもの警察と言われるような状況に遭遇したことがあります。地元で私のことを知ってくれている人もいたり、きもので歩く人が少ないために、「あの人は、たかはしの人」ということが、ある程度は知られていると思っていました。 ある講演会に参加したとき、時間ギリギリに行ったため、バタバタと走って会場に入って座る席を探していました。 すると、「ちょっと」と声をかけられ、後ろから両肩を掴まれて柱の陰に連れていかれました。「お太鼓が曲がっています。私、着付け講師ですから直しますね。」と耳元で囁かれ、帯を直してくれたのです。 急いで車から降りるとき、背中をこすって帯が滑ってしまったのでしょう。きもの警察と言われる場面に出会えた嬉しさをこらえつつ、「ありがとうございます」とお礼を伝え、その方とわかれました。 たぶん耳元で囁かれるのが怖いと感じる場合もあるかもしれません。声をかけてくれた方にしてみたら、もし大きい声で話しかけたら相手に恥をかかせてしまうと思ったでしょうし、1分1秒でも人の目に触れる前に帯を直してあげようという親切心だと思うのです。 知らない人から囁かれて帯を直されたという状況だけを聞くと、陰湿な感じにも受け取れるのかもしれません。もちろん、捉え方もあると思います。 ただ、きものについて言わなきゃいけない空気感が、しきたりきものに囚われていた時代にはあったと思っています。 拙著『きものの不安をスッキリ解決』にも書きましたが、戦後の昭和30年代~60年代あたりは、しきたりきものに則ってきものを格上げして、高額のきものを売って、着付け教室もバンバン儲かった時代がありました。着るものとしてのきものの価値から、違った路線に行ってしまい、日常的に着るものではなく、権威主義になっていた時代がありました。 権威主義に巻き込まれた着付け教室で教わった人たちも権威的に教わるので、権威的になるという図式があったように思います。個人の問題だからではなく、そのるつぼにドハマりした人たちが多かったですし、蔓延してしまったと思います。 自由にきものを楽しむようになって広がる楽しさ 今は非常に自由度が増して、自由にきものを楽しむようになってきて、本当にありがたいなと思います。 たとえば、若い方もインスタライブやYouTubeで発信していますし、初心者ですと言いながら発信している方もいるし、いろんな着合わせ方を提案する方も出てきて、人口の多い地域ではかなり自由度が増しています。 きものでどんなことをやっても、人からギョッとされるような目で見られませんし、驚いたような顔をされることはないでしょう。逆に素敵だねと言われることが増えたり、ここ5年ぐらいで相当変わったと感じています。それを拍手喝采して見ています。 そんな中で、しきたりきものを語る人が肩身が狭いという図式を感じることもあります。 しきたりきもの、日常きもの、どちらも素晴らしいですし、まさに二大巨頭だと思います。 たとえば、しきたりきものしか知らない方が、日常きものを覗いてみると幅が広がるでしょうし、日常きものしか知らない方が、しきたりきものを知ることによって新たな美意識が生まれたり、美学が磨けることがあると思います。このように、しきたりきもの、日常きもの、どちらもお互いにリスペクトの関係なのではないでしょうか。 誰もがお互いに奨励する意識になれば、きものがますます楽しくなりますよね。 そんな世界に行きたいですし、そうなれば良いなと思っている方も、実際に増えていると思います。 しきたりきものを語る方も必要ですし、自由度をどんどん広げていく日常きものもすごくいいと思います。その両方を知ることによっていろんな幅が生まれて、きもの自体やきものを愛する気持ちを軸にして、世界が広がっていくと思っています。 正しい・間違いではなく、どれを選ぶのかが大切 何が正しいか間違っているかをジャッジするのではなく、どれを選ぶのかということが大切です。これはきものに限らず、人のことも、物事も、すべてジャッジしないことだと思っています。 何かに対して、ただ嫌だと言い切ってしまうと、背中を向けたくなってしまいます。 私は好きじゃないけれど、ちょっと望まないけれど、選ばないけれども、それを好きだという人もいるのが当然だというところを、少し探ってみると、意識が凝り固まっていることに気づけたりすることもありますよね。 日々、自分の頭の輪っかに愕然とすることがあります。たかはしのスタッフも若い子が増えてきて、ハッとすることが結構あって、それは自分の許容範囲の狭さだなと反省しています。 許容範囲を広げながら、いろんなものを楽しもうと思ったら、きものはますます果てのない沼だと思います。 たかはしの商品が絶対いいわけではないことをわかっていますし、大嫌いという方がいてくれていいと思っています。選択肢を選ぶひとつの基準になれば、その中で選んでくださる方がいれば本当にありがたいです。もし、嫌だという方がいたら、その理由を聞くことで勉強になることがいっぱいあります。ですので、何があっても良いよねと思っています。 もし、怖く言ってしまっている場合は、ぜひ優しく言ってあげてください。もし、「あなたそれじゃダメよ」と言ってしまうなら、「こうするといいと思うんだよね」と伝え方をデザインすることで、きもの警察ではなくきもの師匠になるのではないでしょうか。 きものについて教わるなら、優しい先輩、優しい頼りになる先輩に言われた方がいいですよね。 これからは、きもの警察という言葉を、愛を持って捉えていきたいなということで語ってみました。 きもの愛たっぷりの女将による動画はこちらの動画をご覧ください。 【愛すべき、きもの警察!たかはし女将、きもの警察を語る】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」 更新情報はInstagramで発信していく予定です。 Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…