令和4年7月
きもの業界はかつて2兆円産業と言われていた時代がありました。
戦後、物のない時代から高度成長期へと突入、消費がどんどん拡大する中、青春時代を戦争にとられた女性の心の穴をふさぐように高価なきものが飛ぶように売れたのです。また、娘が嫁ぐときには最低タンス一竿は持たせないと恥ずかしいと言われ、きものの所有枚数はまさにステイタスでもありました。
その時の家庭在庫が現在のリサイクルきものの原資というわけですが、きっと皆さんのご実家にも、その時代の名残があることでしょう。
きものに対する思いは人それぞれです。ご自身がきものを楽しんでいればこそ、タンスの肥やしだったきものたちも日の目を見るわけですが、全く興味のない方にとってはお荷物でしかありません。たとえ、ご家族が爪に火を点すように買い集めたきものであったとしても、です。それでも、きものを纏った母や祖母の姿が心に焼き付いていたり、買い求めたときの喜びが忘れられないなど、安易に売り飛ばすことも出来ず(どこか罪悪感もあるのでしょう)、思案に暮れている方が多いのも事実です。きものって本当に不思議です。単に高価だからということだけではないのです、きものにかける思い、とても大きいものです。
時折、きものを受け取ってくれないかとか、突然送って来られる方がいます(これにはちょっと困ってしまいますからマネしないでください)。たかはしなら、きっと活かしてくれるのではと期待してくださることはとても嬉しいので、どうしたものかと思いあぐね、そして考え付いたのが「ご縁きもの市」です。これは善意で送っていただいたきものに価格を付け販売、その売り上げの全てを寄付するというものです。きものを提供して下さった方もお求めくださった方も、そしてその縁をつなぐたかはしにとっても、社会貢献となり、きものも活きることになります。
実は6月25、26日で初めて開催してみました。結果、50万を超える売り上げがあり、東日本大震災で被害を受けた子供たちを支援する「ハタチ基金」を選定、皆さんの思いをたかはしが代表して贈呈することが出来ました。全体から見れば、ほんの小さな行為ですがそれでもきものを通して皆さんのお役に立てたことは心から嬉しく思います。
けっこうな手間と時間を要するので、何度もというわけにはいきませんが、少しずつでも続けていきたいと思っています。