令和3年12月

はっきりとした放送日はまだ言えませんが、新年のNHK「美の壺」できもの特集が組まれる予定で取材を受けました。
内容も詳しくは言えないのですが、古いきものをよみがえらせ再び着られるようにする悉皆としての業務についてでした。今まで取材されたことはなく、接点も何もない中、弊社に取材が入ったのは色々と調べ、悉皆取次としての発信を見つけてくれたからなのだそうです。

現代のきものは新しい品物の販売とリサイクルきもの販売が主流です。ですが弊社の実店舗には内外から家にあるきもののご相談が後を絶ちません。中にはリサイクルもありますが、多くはお母様やおばあ様のもの、ご家族に買ってもらったなど思いのあるきものが大半を占めます。それらの加工方法としては洗張りをして仕立て直す、色揚げをし仕立て直す、色をかけ仕立て直すなどが主流です。寸法に大きな差異がない場合には解くことをしないこともありますが、二十年以上前のものは一度解くことをお勧めします。なぜなら糸をお風呂に入れてあげたいから。水によって蘇る、気持ちが良くて喜んでいる布を私たちはよく知っているからです。こんな言い方は変かもしれませんが本当にそうなのです。

弊店のメインの仕事は京都と繋がり、白生地からの誂えやいわゆるきものや帯のメンテナンス、リメイクがメイン業務で一般的な呉服屋さんとは一線を画しています。もともときものに携わっている業務がそういうことだったため、きものを守るためには肌着が大切という発想から肌着メーカーになったという経緯があり、お店としてはとても大切にしている業務です。
さらに言えば、きものの価値は思いが重なるものだと確信しています。単なる着るものではなく、思いが形になっているものとずっと考えてきました。そしてそれは東日本大震災の時に証明されたのです。津波で汚れたきものをたくさんダメにもしましたが、たくさん助けもしました。その時明確にわかったのです、きものは思いそのものだと。この話になると長くなるので割愛しますが、きっときものを楽しんでいる皆さんならわかっていると思うのです。きものの持つ、単なるファッションとしてのものではない不思議な魅力を。大きな面積は時に煩わしくもありますが、この生地の大きさがより何者かに抱(いだ)かれている感覚をも生むのかもしれません。

話は大きくそれましたが、美の壺はそこを拾ってくださったのです。きものの持つ「思い」について取り上げてくださったのです。それが私には本当に嬉しくてたまりません、何より大切にしていたことですから。
今回はきものの特集ですから、それ以外にもたくさんのきものについての見ごたえがあるはずです。是非ご覧ください。