たかはし女将的!季節の移ろい方《羽織編》
若き日の女将も悩んだ羽織の「季節」
季節の変わり目は、コーディネートに悩まれる方も多いと思います。若かりし頃の女将も、そうでした。そんな中でしきたりも体感も大切にした上でたどり着いたひとつの答え。
季節の移ろい方「きもの編」「帯編」に続き、今回は「羽織編」をお届けいたします。コートなどもこれに準じますので、参考にしていただけると幸いです。
日常的なものあれば、本当にどれをどのように合わせても自由だと思いますが、今までのきもののしきたりの中で、ここさえ抑えれば安心というポイントもあると思います。
例えば、袷の羽織から紗の羽織はいつから切り替えて着たらいいの? など、口には出さなくても悩んでいる方は多いのではないでしょうか。コートや道行も同じことです。
寒いなと思ったら袷の羽織
女将の場合は、ちょっと寒いなと思ったら袷の羽織を手にとります。
洋服でも、セーターやトレーナーだけで外にいる人を見ると、ちょっと寒いな、コートやジャンバーを羽織ったらいいのに、と思うような感覚ってありますよね。それと同じようなイメージで、袷の羽織も登場します。
無地感の強いもので、ちょっとドレスアップしたときに使いたいような羽織は、
柔らか物や紬でも無地系の上品な装いのときに使います。
またカジュアル感の強い装いのときには、女将は男仕立ての羽織を愛用しています。女物と何が違うかというと、袖の振りが身頃に縫い付けてある「人形仕立て」という形になっていることです。
なぜ男仕立てを愛用しているかというと、まず振りが閉じているので暖かいということ。それから、きものの袖丈が違っても振りの揃いを気にしないで着られるからです。
今はまだカジュアルダウンする装いだという意識はありますが、今後はこれがスタンダードになるかもしれません。先日藤井絞りの社長と、羽織の脇のマチはいらないのではないかという話をしました。意味があって存在しているというものではありますが、柄を合わせたりする場合、染める側も仕立てる側も難しいので、マチがない形を模索されているそうです。そういった新しい挑戦も素晴らしいことですよね。
話が逸れてしまいましたが、冬が終わって暖かくなってくると、紗や夏物の羽織に切り替えていかれると思います。
その間の時期に実は、単衣の羽織というものも存在します。見た目は袷だけれど、袷よりも涼しいので、温暖化が進んだ今、袷の羽織をお持ちであれば次の1枚にお考えになるのもいいかと思います。暑がりさんにもおすすめです。
きものと同じように、袷に比べると少しぺらっとした感じにはなりますので、生地はしっかりめのものを選ばれたほうがよいと思います。
紗の羽織は彼岸から彼岸まで
さて、暖かくなってくるといよいよ透け感のある羽織の出番です。
女将の場合は3月半ばすぎくらいから、袷のきものの上に羽織っています。
でも、3月から紗の羽織は早すぎないかと思われるかもしれません。若い頃の女将も悩んでいました。
そんなとき、津田家の女将に伺ってみたところ「紗の羽織はお彼岸(3月)からお彼岸(9月)までよ」と教えていただいたんです。
今から20年以上前の話ですから、今では終わりの時期はもう少し伸びて10月でもいいかも、と思っています。
薄物の羽織をそんな時期に? と思われるかもしれませんがちょっと前にレースの羽織が流行って、それは季節気にせず1年中着るという着方で、最初に真冬にレースの羽織を見たときはちょっとびっくりしたものですが、寒々しく見えなければそれもいいものですよね。
そんなわけでちょっと透け感のある羽織は3月から5月の頭くらいまで着ます。きものが単衣の時期になると、透け感の強い羽織を着ます。
きもののしきたりの中で、「羽織ものを着るのは上品」という考え方があります。帯しつけ(なにも羽織っていない帯姿)で出歩くのはちょっと、というものですが、なかなか暑いのに羽織ものを着るのは大変ですよね。
単衣の時期からは帯しつけでよい、ということにはなっているので、無理に羽織ものを着ることもないと思います。最近は袖なしの羽織ものを着ている方もいらっしゃいますが、お好みでよいと思います。
真夏は着ないで、すこし秋の気配を感じ始めたる9月ごろからまた薄物の羽織を着る。そして10月に入り、ぐっと寒さを感じたら袷の羽織に変えていく‥‥というのが女将流です。
まとめると
〜3月頭袷の羽織
3月半〜5月薄物の透け感の弱い羽織
5月〜透け感の強い羽織
夏着ない
9月〜透け感のある羽織
10月寒くなってきたら 袷の羽織
移り変わりの間に単衣の羽織があるととても便利。というところでしょうか。
1枚あると便利な黒の紗羽織
あと、女将は仏事にもきもので行きますので、紋入りの黒羽織を袷、単衣、紗、絽と4枚持っています。普通の方はこんなに必要はないですが、黒の紋なしの薄物の羽織が1枚あると本当に便利です。絽だと正式感が強くなってしまうので、紗か紋紗がおすすめです。
おしゃれにはもちろん便利ですし、紋が入っていなくても色でお悔やみの気持ちを表すことができると思います。いろいろなご意見はあると思いますが、きものは、相手に対する敬意を表すのにとてもよいアイテムだと思っています。
臨機応変に季節の移ろいに対応しながら、いろいろな場面で着ていただけるとよいと思います。
この辺りのお話をじっくりと女将が説明している動画もぜひご覧ください!
【たかはし女将的!季節の移ろい方~羽織編~】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
更新情報はInstagramで発信していく予定です。
Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…
令和4年11月
ググっと寒くなってきましたね。
北にある気仙沼としては朝晩の暖房が欠かせなくなってきました。
こうなってくるといつも思うのです、よっしゃー!と。
きものが優位に…
たかはし女将的!季節の移ろい方《帯編》
季節と帯について知る
きものの季節の移ろい方のお話の続きで、今回は帯のお話をします。
前回、きものについてのお話をいたしました。
たかはし女将的!季節の移ろい方《きもの編》
帯についてなのですが、袋帯は2つのルールでだいたい使い分けができます。
(1)金銀が入っていれば礼装に、それ以外は洒落着に
(2)質感が厚いか薄いかで袷の時期か単衣の時期か使い分ける。紗袋帯など透け感のある夏帯は、夏に使う
ちょっと迷うのは、普段のきものに使う帯ではないでしょうか? そこで八寸の名古屋帯を中心に季節の移ろいのお話をしていきます。
普段着の場合はルールに縛られることはないですが、きものを着てでかけるとき、どうしても人の目が気になったりしてしまうようなことがあれば、目安としていただければなというものです。
博多帯は通年使える
真夏を除いて、いえ真夏も含めてもいいと思いますが、万能なのは八寸の博多帯。紗の博多帯もありますが、紗でなくても夏に締めても大丈夫。紗献上は最近出てきたもので、昔はありませんでした。だから、気にしないで通年使っていただきたいと思います。
ただ素材ではなく「色味」で、涼しそう、とか暖かそう、と感じるのはありますので、ご自分の感覚で合わせてみてください。
濃い色の入った献上柄のものは、秋などこれから寒さに向かうという季節から、袷のシーズンによく使いますし、白いドットのものは、つるんとした生地あいの着物のときに使います。例えば胴抜きや単衣の時期、透け感のある着物にも重宝します。
単衣の時期から夏の帯は透け感で
透け感のある帯は、6〜8月に着ます。9月に入ると透け感のあるものは女将はあまり身に付けませんが、これはたかはしきもの工房が東北にあるというのもあると思います。もっと南の地域の方では、9月に入っても透け感のあるものが好ましいということもあると思います。
季節の移ろいには、地域も関係しますよね。そのあたりは自分の肌感で判断していただければと思います。
ちょっと便利なのが、麻の夏帯。素材は夏ですが、あまり透け感がないので真夏から単衣の時期に重宝します。ただいくら透けなくても、素材が麻ですから冬には使いませんし、単衣の時期も夏に向かう時期のほうがよく使いますね。
袷の時期の帯は素材感と色で
袷の時期は九寸の名古屋帯をすることが増えますが、これも素材感で季節の使い分けをしています。
例えば縮緬の名古屋帯は、生地に暖かみがあるので、12月〜2月くらいまで。
塩瀬などの「すぺん」とした生地のものは、つるんとしているので真冬でもいいし、袷の季節の入り口でもよく使いますね。使える時期が長い塩瀬ですが、これもやはり色で使い分けもします。こっくりした色のものは寒い時期に、薄い爽やかな色は暖かくなってくる時期に、などきものとのコーディネートもあるとは思いますが、使い分けています。
また塩瀬の急寸名古屋帯は、生地がシュッとしているので、品がよくお洒落度もアップする印象があります。
花や文様で季節感がはっきりしているもの
生地や色だけでなく、その季節だけの花や文様が描かれている帯もありますよね。そういうものを身につけるときには、花であればその花が盛りの時期までに身につけるのがよいのかなと思っています。これも今までのセオリーのお話にはなるのですが、季節の先取りのほうがよいと一般的には言われています。
でも、例えば桜の花は浴衣にも描かれていたりしますよね。そういう時の判断は、その花がモチーフとして使われているか、枝なども描かれていて咲いている花そのものであるかというところで見たりします。モチーフであれば、季節問わずな時もありますし、咲いている花そのものが描かれていれば、やはりその花が咲いている時期、桜であれば4月の半ばまでが限度かなと思います。これも地域によるところもありますね。
例えば、このようなシロツメクサの帯があるのですが、これはシロツメクサだとはっきりわかるので、それが咲いている時期(春先から単衣)しか使いません。
こんなかんじで、帯を季節によって使い分けていますが、ポイントは3つ。
・色
・素材、質感
・季節感を描いたもの
これを大切にして選んでいただければ、季節の移ろいに対してそんなにちぐはぐな感じにはならないのではないかと思います。
帯揚げ帯締めも、おなじように考えて選んでいただければよいと思います。昔は透かしの入った夏の帯締めなどはありませんでした。「こうでなくてはならない!」とがんじがらめに思わず、色合わせなど自分の感覚を大切にして選んでいただければと思います。
ファッションとして着るのであれば、ルールはあまり気にしないで自分の感覚でいろいろ試してみるのもよいと思います。流行の先端は、最初はギョッとされるものです。そこからまた新しい流行やルールも生まれたりするものですから、基本は抑えてご自分がわくわくする方向で、楽しんでくださいね。
この辺りのお話をじっくりと女将が説明している動画もぜひご覧ください!
【たかはし女将的!季節の移ろい方~帯編~】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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