羽織の合わせ方、季節や素材どうすればいい?
きものでお出かけする時、きものの上に何を羽織っていますか?
以前は、羽織をあまり着なくなって一時全滅したような感じでしたが、きものを日常的に楽しむ人たちが増えているエリアでは、コートよりも羽織なのではないでしょうか。
今、羽織がとてもポピュラーになっていて、いろんな種類の羽織がありますよね。
たとえば、大正ロマン時代のすごく長い八分丈の羽織、お尻のところでピュッと切れるような昭和時代の可愛い茶羽織、レースの羽織など、既製品の羽織もあります。
以前に比べると、気軽に羽織を楽しめるようになっています。
そのため、羽織を着るようになったからこそ困っていることがあるのではないでしょうか。
たとえば、季節で薄物と袷とどうやって合わせたら良いんだろう?と悩まれたことありませんか?
そこで今回は、羽織の合わせ方について、ご紹介したいと思います。
羽織はジャケットのように便利で見た目も良い
羽織は、ジャケットと、ほぼ同じようなイメージで考えていただけると良いと思います。たとえば、コートや雨コートや道行コートは玄関先で脱ぎますが、羽織は、いちいち脱ぐ必要はありません。そのため、ジャケットとレインコートやオーバーコートとの違いと同じと、よく言われています。
また、黒の羽織の場合、礼を尽くす気持ちの表し方として着ることがあります。昔は、学校の入卒園式でも、黒の紋付きで黒の中に柄が入っている絵羽織が主流でした。
黒の紋付きは敬意を表すことや弔意を表すことができるので、日常きものにサッと羽織るだけで入卒や仏事などにも行けるように早変わりする便利グッズのような感じで使われていたと思います。
黒の紋付きを紬や小紋の上に羽織ってお悔やみへ行った時のコーデ
ほかにも、帯が崩れた時のボロ隠しになって便利だったり、羽織があることで縦に線が入ることによりスレンダーに見えて見た目にも良かったり、ちょっと肌寒いときの防寒にもなります。
昔は、何も羽織らず帯付き(=きものと帯だけ)のまま外を出歩くのは、品がないという美意識がありました。今でも「私は真夏でも羽織物がないと外に出たくない」という方もいらっしゃいます。そのため、季節で羽織をどう着分けたら良いのか悩まれたことがある方も多いと思います。
羽織の季節はいつからいつまでどう着分ける?
まず、真夏はほぼ羽織っていません。
たとえば、レース羽織は見た目が涼やかに見えますが、素材がポリエステルの場合、かえって暑かったりしますし、素材が絹の薄物でも、一枚羽織れば、暑さを感じます。
さらに、単衣の時期も、ほぼ羽織っていません。単衣の時期は、帯付きで出歩いても良いという説が便利で良いと思っているからです。もし下品だと思われたとしても、涼しさを優先しています。
逆に、「真夏でも帯付きで外を出歩くのは上品ではないから嫌だ」とご自分で思われるのなら、羽織った方が良いと思います。
では、袷の時期はどのようにするかですが、昔に比べると暑さを感じる時期が長いため、今の季節に合わせていく必要があると思っています。
袷羽織を袷のきものに合わせるのが、季節のイメージにも沿っていていいと思います。
ただし、春先や10月でも真夏日があって、気温が20度を超えると袷のきものを着ること自体が暑くてつらくなりますよね。
体感での基準ですが、だいたい気温が20度未満にならないと、袷のきものを出しません。一日の最高気温が20度を超えるうちは単衣を日常的に着ています。
たとえば、結婚式に出席するなら袷を着ますが、日常的には最高気温が20度を下回らないと、胴抜きでも袷を着ることはありません。汗をかきたくないし、寒がりでもないので、体感で決めています。
最高気温が20度を下回ってきたら、まずは胴抜きの袷を出します。気温が下がってくると帯付きだと出歩くには寒々しく見えると思います。そんな時に何を羽織るのかですが、単衣のきものには、薄物羽織を羽織ります。
季節による羽織の着分け方のいろいろ
以前、きもの英 女将の武田佳保里さんと、新宿津田屋 女将の津田厚子さんの豪華ゲストお二方をお迎えした動画の中で、羽織について話したことがありました。
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きもの業界三大女将!?座談会・季節の移り変わりはどうすればいい?
「薄物羽織を羽織るのはいつからいつまでが良いんだろう?」と20年ぐらいすごく悩んでいたことがありました。あるとき、新宿津田屋女将の厚子さんに出会って、薄物羽織はいつからいつまでいいのかを聞いたところ、厚子さんはお彼岸からお彼岸までいいよとおしゃっていると聞きました。厚子さんの言葉に、自信をいただいて以降、お彼岸からお彼岸まで薄物羽織を着てきました。
一方で、きもの英女将の佳保里さんは、春彼岸の3月は薄物は早いから、その時期なら単衣羽織だと。透ける薄物を羽織るのは、完全に単衣の時期になってからだと思うと話していました。
これは、どちらが正しいのかではなく、どちらも正しいのだと思います。
また、きもの著述家の山崎陽子さんのトークショー中に、「紗の羽織はいつからいつまで着ていいと思いますか」と質問が出たことがありました。
山崎さんは、「単衣のきものを着ているうちはずっといいんじゃないですか。私はそうしていますけどダメですかね?」と回答されていました。そして、「日常的なものだから厳格に考えず、暑いときでも何か羽織った方がいいなというときは、紗の羽織を着ちゃいますね」と話していました。
そのトークショーは10月7日でしたが、山崎さんは「今日も紗の羽織を着てきました」とおっしゃって、お彼岸を過ぎても紗の羽織を着ていらっしゃいました。
たとえば、紗などの薄物羽織や絹のレース羽織は、透け感があって涼しげです。
透け感が強いものだと10月は寒々しく見えます。
薄物羽織でも、羽織ってもきものが透けない羽織を10月でも羽織っています。
きもの英女将の佳保里さんは正統派ですし、流儀も色々あるのでそのようにお伝えしているのだと思います。
単衣羽織から袷羽織に替えるのは、それぞれ好きでいいと思います。生地の落ち感が少し変わったりしますが、見た目上はあまりわからないです。
また、真冬のレース羽織は見た目が寒々しいし、薄物は絶対ダメというような時期でも、日常きものにおいては好きに選んでいいと思います。
たとえば、着付け講師の吉澤暁子さんは、レース羽織が大好きで真冬でもレース羽織を着ていらっしゃいます。もしかすると、抵抗を感じられる方もいらっしゃると思いますが、吉澤さんはそれが好きでされていて、それを支持する方もいますし、日常的にはそれでいいと思いませんか。
いろんな人が日常的にきものを楽しむことができている今だからこそ出てくる悩みなのかもしれませんね。
自分がどう感じるのか、自分はどう思うのかということを一番に考えるといいと思います。
そのひとつの例として、いろんな人がこんな風に言っていますよということを挙げました。
素材や色目、柄などテイストで楽しむ羽織
羽織に合わせたいきものによっても、どんな羽織を選ぶのかを考えますよね。
たとえば、やわらかものテイストのきものと、紬のようにざっくりとしたカジュアルテイストのきものでは、合わせたい羽織は違ってきます。
また、お召でもつや感があるものだとやわらかもののテイストですが、千鳥格子の柄だとカジュアルなテイストになります。
やわらかものテイストなものにも、ざっくりとした紬やマットな紬にも羽織っている羽織があります。お召の男物の機で作った黒の単衣羽織ですが、織で格子が入っていて、つや感もあります。
やわらかものテイストのきものと合わせた場合
色味がグレーや単色だとスッとした感じに見えますが、小紋や色が入っている羽織だとカジュアルダウンしたテイストで着ることができます。たとえば、ちょっと赤みが入って全体がえんじ系統の色味の羽織だと、カジュアルなテイストになります。
もし、使い分けしにくい場合には、羽織を何に合わせて一番着たいのかを、つや感と色柄と一緒に生地の質感も考えてみてはいかがでしょうか。
羽織の長さも物によって変えています。たとえば、七分丈ぐらいある長めの羽織ですが、しっかりした生地なので暖かさもあり、防寒としてもとても優秀です。他に防寒コートを持っていますが、羽織るのが簡単なので、日常的にはつい羽織を選んでしまいます。
生地が良いのでテロンとした落ち感がとてもキレイで羽織に向いてます
カチッとした硬くてハリのある生地の場合、ちょっと気をつけたいのは裄の長さです。
落ち感がある生地は、羽織の袖からきものの袖が出ることはありません。硬くてハリのある生地の場合、きものと羽織を同じ裄で仕立てると、ちょっと背中心がずれたときなど、羽織の袖からきものの袖が出ることがあります。
そのため、硬くてハリのある生地の場合、裄を普段の寸法より約2cmぐらい出すことで、羽織からきものの袖が出ることは、ほとんどありません。
羽織でもいろんな考え方があるので、きものを楽しめると思います。
私はどれがいいのか、どうしたいのかを考えて、人様に迷惑をかけない場所であれば、何でも自分の好きで選んでいいと思います。
ぜひ、羽織の合わせ方も考えてみてはいかがでしょうか。もっときものが楽しくなると思います。
羽織大好き女将による動画はこちらをご覧ください。
【きものコーデシリーズ!羽織は何に気を付ければいいの?羽織の合わせ方】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!
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