
浴衣をきもの風に楽しむためのちょい広バチ衿
夏に浴衣を着るのに、浴衣としてはもちろん、きもの風にも着たいと思ったことありませんか?
以前、綿麻や麻のきものや浴衣を、浴衣としてもきもの風にも、どちらも対応できるようにするために、ちょい広バチ衿が良いですとお伝えしました。
以前、ご紹介した「ちょい広バチ衿」はこちら
https://k-takahasi.com/blog/2022/10/10887/
「ちょい広バチ衿」の動画はこちら
この動画でお伝えした「ちょい広バチ衿」の仕立て方について、誤解を生んでしまったようなので今回、改めて「ちょい広バチ衿」についてお届けしていきます。
「ちょい広バチ衿」≠「広衿をバチ衿にしたもの」
以前、紹介した動画を見た方が、「ちょい広バチ衿」にしてくださいと呉服屋さんにお願いしたら、呉服屋さんが困ってしまったということがあったそうです。実際、呉服屋さんから直接お問い合わせをいただいたこともありました。
たかはしきもの工房のYouTubeの動画のコメント欄にも、
「ちょい広バチ衿にしてくださいと伝えたら、仕立て屋さんから裏衿が必要です。」
と言われたという書き込みをいただきました。
そして、「ちょい広バチ衿」には裏衿を使うのかという問い合わせもいただいたのです。
さらに、「あづまやきものひろば」の柴川さんが、「ちょい広バチ衿」について動画の中で話されていたというのですが、女将が伝えたかった衿とは異なっているようでした。
柴川さんの話に出ていたのは、よくアンティークのきものや、おばあちゃんの箪笥から出てきたきもので見かける衿のことかもしれません。
広衿のきものは、衿の内側にある「引き糸」や「スナップボタン」を使って衿を折りますが、その衿の部分を元々縫い留めてしまう仕立て方があります。
恐らく、日常できものを着る場合に、衿を折って着るのは面倒くさいから、衿を折る必要がなくなれば便利だからという理由でできたのではないでしょうか。
広衿のきものの衿を折って縫う仕立て方を「ちょい広バチ衿」と想定したことで、仕立て屋さんや和裁師さんにも誤解が生じてしまったのではないかと予想されます。
夏に浴衣や夏きものを楽しむためのご提案としての「ちょい広バチ衿」は、より涼しさを重視したいので、夏物に裏衿を付けるということはいたしません。なぜなら、生地の厚みで衿が膨れて、余計に暑さを感じてしまうためです。
たかはしで提案する「ちょい広バチ衿」とは、バチ衿の幅を少し広げることだけを指しています。
「ちょい広バチ衿」=バチ衿の幅を少し広げること
衿幅の違いがどんなことに影響するのかをお伝えしていきます。
二種類の浴衣に衿を入れてきもの風にしていますが、比べると衿幅が違うことが分かると思います。
向かって左側は、既製品の浴衣です。
衿幅が背中心で約5.5cm、胸元の部分で約6.5cmと、背中と胸元でおよそ1㎝の差があります。
「バチ衿」とは、三味線のバチのように持ち手から先端に向かって幅が広がっているように、背中から衿先の方に向かって、衿幅が少しずつ広がっている衿のことです。一方、背中から衿先に向かって一定の衿幅の衿を「棒衿」と呼んでいます。
一般的な既製品の浴衣は、「バチ衿」になっていて少し胸元で衿幅が広くなっています。
向かって右側は、綿麻の反物を浴衣に仕立てたものです。
きもの風にも着られるようにと背中心では約5.5cmですが、胸元で衿幅が広くなるようにした衿になっていますが、これも「バチ衿」です。裏衿を付けずに衿を半分に折って作っている「バチ衿」になります。
女将は身長が高め(164㎝)ですし、きものについて様々な実験をするために、背中心の衿幅を5.5cmではなく、6㎝にして仕立ててみたところ、暑苦しく感じたそうです。
そのため、たかはしでは背中心の衿幅は5.5cmを推奨します。身長が170cm以上の方であれば、少し衿幅を増やしても良いかもしれません。たとえば、IKKOさんは、一般的な衿幅に比べると相当衿幅を広くしています。
きものの寸法が考えられた昔と今とでは、平均身長が変わっています。学校保健統計調査によると、約100年前と比べ、女性の平均身長は約10cm弱高くなっているそうです。
きものの寸法は着る人の身長や体型に合わせたものであるので、縦に伸びた分、横幅がまったく変わらないわけはないと考えています。たとえば、比率で考えた時、縦に120%伸びたら、横に120%の幅になるわけです。
そのため、身長や体型に合わせて衿幅を調整した方が、きものの着姿がキレイに見えます。
「ちょい広バチ衿」にするための衿幅は?
「ちょい広バチ衿」に仕立てるために、衿幅をどの部分から広げると良いのかというと、
女将の結論としては、次の通り。
背中(背中心)の衿幅は5.5cm
耳の下、肩のあたりから少しずつ衿幅を広げていく
衿を入れずに着ると、向かって左側の方が涼しげに感じませんか?
ただ、身長が高めの方の場合、左側の衿幅だと、衿元が貧相な感じに見えてしまう場合もあります。
せっかく浴衣を仕立てるのであれば、浴衣地も質の良いものが多く出回っていますし、価格も高くなっているので、きもの風にも楽しめると着られる機会も増えて良いですよね。きもの風にも着るためには、衿幅を広くすると胸元がゆったりとしバランスよく見えます。
どのくらい衿幅を広げれば衿元や胸元がキレイに見えるのかを、衿幅のイメージができるように、5.5㎝幅に畳んだものを背中にクリップで留めています。
背中の衿幅と同じ5.5cm幅のまま「棒衿」にした場合のイメージです。
江戸前のチャキチャキしたような躍動感や普段着のカジュアル感があって、可愛らしさも出る衿幅です。
きもの風にも着たいと考えると、衿幅を広げた方が良いと思います。
既製品の浴衣の場合だと、6.5cmぐらいなので「棒衿」に比べても、あまり大きな差は感じないかもしれません。
※左側が「棒衿」で、右側が胸元あたりで衿幅が約6.5cmの「バチ衿」
さらに衿幅を広げて胸元で7.5cmぐらいの幅になると、きもの風に感じられると思います。
このように衿幅によって、着姿の印象に違いが出ますよね。
たとえば、礼装用の訪問着の場合、衿幅を広くすることによって、カジュアル感よりもフォーマルで優雅な雰囲気に感じられます。
また、衿を広くすることで、肩線が外側に移動するので、肩幅がスッキリと見える効果もあります。
ただ、身長が低い方や細身の方が衿幅を広くすると、バランスがよくありません。身長が高く、大柄の男性の場合には、衿幅を広げた方がバランスよく着こなせるはずです。また、女性も同じように、たとえば、とてもグラマラスな方は衿幅が広い方がスッキリと見えます。
このように衿幅による見え方の違いを踏まえて、浴衣での「ちょい広バチ衿」を提案しています。
きものの衿は、基本的には反物を半分に割った生地を使用して作ります。反物幅が40cmとすると、半分に割ったものが20cm幅の生地。その生地をさらに2つに折ると10cmあるので、縫い代部分を除くと、最大で9cmの衿幅を作ることができます。
ところが、9cmの幅となるとものすごく広い衿幅になるので、広げたとしてもせいぜい8cmくらいまでとなるでしょう。
ただ、できるだけ衿を汚したくないと衿幅を細くと思われるかもしれません。でも実は、衿を汚れにくくするためには衿幅で調整するよりも、衿を首からどれだけ離して着付けられるのかが大切です。
衿が首にくっついてしまう場合は、首の後ろの衿を横に広げるようにして着付けることで、首から衿が離れるので、衿幅を広くしても衿が汚れにくくなります。
普段着テイストを残しつつ、衿を入れることできもの風に着る場合には、身長や肩幅、胸幅によって、7~8cmぐらいで衿幅を割り出すのが良いでしょう。
背中心の衿幅が約5.5cmで、胸元に向かって衿幅をどのぐらいに広げると格好いい着姿になるのかを把握するために、自分で鏡を見ながら手持ちの広衿のきもので試してみても良いかと思います。
浴衣を浴衣として着たり、衿を入れてきもの風にも着たりと、夏のきものの楽しみ方に繋がれば嬉しいです。
女将による「ちょい広バチ衿」の動画はこちらをご覧ください。
【ゆかたをきものチックに楽しむ!ちょい広バチ衿のすすめ完全版】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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よく見えるところにシワがつかない袋帯の畳み方【前編】
お太鼓とお腹にシワを作らない!
皆様は、袋帯の畳み方どうされているでしょうか。なんとなく、とか買ったときの折れ線のまま、という方が大多数かと思います。
袋帯の畳み方で大切なのは2つ。
1)見やすいこと
2)お太鼓やお腹に折れ線が出ないこと
袋帯は、だいたい6等分に畳まれていることが多いのですが、着る人の体型はいろいろ。胴回りのサイズだけでなく、帯を閉める時のクセも違います。
久しぶりに出してみて結んでみたら、お太鼓の真ん中に畳ジワがカッキーン!と出てしまったり、前帯の部分に頑固な縦の折れ線があったり、なんて経験はありませんか。毎回アイロンをかけるのも面倒ですし、だいたいアイロンをかける時間もないときもあります。
自分がお太鼓にどこの部分を出したいか、また出せるか。自分のベストな位置の数字をまず知る必要があります。
だいたい数字で割り出せないの?と言われるかもしれませんが、人の体は十人十色。また出したい部分の好みも微妙に違っています。最初に1回測ってしまえば、次からはそれと同じにすればいいので、一度自分のお太鼓と前帯のベストな場所を確認しましょう!
まずは自分のベストお太鼓位置を知る
用意するのはクリップ4つ!
クリップで、前帯のお腹にくる部分とお太鼓にくる部分に印をつけます。
そして、帯を解いてたたみ直すのです。
まずは、前のお腹部分を起点に帯を半分に折り、端は長さが違えば片方をたたんで揃えます。
そのあと、三つ折りもしくは四つ折りにしたときに、お太鼓部分が折れないように調整すればOKです。
お太鼓のところが折れそうであれば、ずらして畳むとよいでしょう。
もしその時点で、折れ線が入っているようだったら、アイロンで伸ばしておきます。
また、帯の長さと自分のベスト位置を測って数字にしておけばリカバリーもききますし、他の帯にも応用ができます。
ピンチを挟んだ状態のときに、他の帯をそれに揃えて畳むのもいいですね!
平らに畳んで、畳紙に仕舞うときは、この畳み方でOK!
次回後編は、ズボラ女将がすぐ閉められてシワにならず、本棚みたいに立ててしまえてすぐ選べる!!
という禁断の(?)袋帯の畳み方をご紹介いたします!!
お楽しみに!
女将のわかりやすい袋帯の畳み方の説明動画はこちらです!
【袋帯を、美しく締めるために!よく見えるところにシワがつかない袋帯の畳み方】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!
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その腰ひも、緩すぎませんか? 腰ひもは着付けのキモ!
体は全部滑り台
全国を回って、着物の女性を脱がせては着せ、脱がせては着せしている肌着のスペシャリスト、たかはしきもの工房の女将が最近気になるのは、腰ひもを緩く結んでいる人が多いということ。
腰ひもは、着付けのキモ。これが緩いと下半身が着崩れてしまいます。裾が広がってしまったり、お尻の生地がたるんたるんになってしまったり。
太さや素材もいろいろある腰ひもですが、正しい位置にきちっと絞めることが着付けが決まる大きなポイントになります。
ウエストがあまりなく寸胴だった昔と違って、今はウエストがくびれている体型の人がほとんど。くびれや凹凸の途中に紐を当てると、細い方にむかって紐が滑っていってしまいます。
これが女将がよくいう「体は全部滑り台」。
なので、紐はくびれの一番細いところに当てるのがポイントです。そうすると、滑って行かずに動きません。
昔は腰骨のところにあててとよく言われましたが、そこに当てると今の体型では上にずるっと紐が逃げてしまいます。なので、ウエストの位置に腰ひもをあてましょう。
補整をするとより腰ひもが安定しやすくなりますし、きゅっと引き締めても体が苦しくありません。
腰ひもの締め方のコツ
腰ひもはよく後ろで交差させたらぎゅっと絞めてと言われますが、実は体の前側でぴたっと体を押さえるようにひっぱりながらぐっとあてると、後ろで絞めなくても体にしっかりとフィットします。
この、前にあたっている部分が緩いと、後から引いて絞めることは難しいです。
帯も一巻き目をきちっと絞めることが大事なように、最初に紐を当てる時、きちっとあてることを心がけてください。
これはすずろ腰ひもや、ゴムベルトでも同じこと。
最近はゴムの腰ひもを楽だし結び目もないし‥‥ということで使われている方が多い印象ですが、ゆるくとめるだけで使っていらっしゃらないでしょうか?
ゴムをあてているだけだと、とても着崩れしやすいです。
なのでゴムでもきちっと体にあててテンションをキープすることが大事です。
体の前でゴムをあてるとき、しっかりひっぱってから体にあてます。後ろではひっぱりにくいですし、ひっぱる必要もありません。それでゴム紐の長さを調節して止めるとしっかりと止まります。
引き締め具合については、ウエストの位置でする分には苦しくはありません。でも中には苦手な人もいると思いますので、そういう場合は自分が締めても苦しくない位置、ずれない位置を探してみてください。
たかはしがおすすめしているのは細い腰ひもです。
理由は
(1)細い方が体を締め付ける面積が減る
(2)幅広の腰ひもは幅の分、身丈がとられる
ということです。逆にいうと、身丈があまっている着物は幅広の腰ひもを使うといいということになりますが、腰紐の位置をウエストにすると、腰骨のところで結ぶよりも身丈がいりますから、細いもののほうがよい場合が多いです。
たかはしきもの工房の腰ひもは、昔おばあちゃんが手作りしていた細い腰ひもをヒントに作った木綿のもの。体にピタッとあたり、しっかりと締まります。
胸ひもは絞めつけないで
逆に胸ひもは腰ひもと違って締め付けると、息苦しい、吐きそうになるということもあります。鳩尾(みぞおち)の位置を絞められるのは苦しいもの。
自分では加減もできますが、着付けをしてもらうときにも苦しかったら伝えましょう。
胸ひもは幅の広いもので、絞めないで、布の面積の摩擦で止めていくようにします。ぐしゃっとしないで広げた状態であてていくと、そんなに締め付けなくても摩擦の力で、胸元が崩れない役割を果たしてくれます。
伊達締めも同様で、体に巻いたら、鳩尾あたりを少し下に引き下げておくだででも苦しさが違います。
しんどいのが嫌だからゆるゆる、着崩れが嫌だからぎゅうぎゅう、というひもの絞め方を見直してみてください。
なんでも強く締めれば良いとかゆるめでよいということでなく、要所要所で必要な強さでひもを絞めるように心がけていただけると、ぐっと着付けが上達しますよ。
女将のアクションつきで、動画でぜひ腰ひもの引き締め具合を確認してください!
【着付けひものキモ!その腰ひも、緩すぎない?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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たかはし女将的!季節の移ろい方《羽織編》
若き日の女将も悩んだ羽織の「季節」
季節の変わり目は、コーディネートに悩まれる方も多いと思います。若かりし頃の女将も、そうでした。そんな中でしきたりも体感も大切にした上でたどり着いたひとつの答え。
季節の移ろい方「きもの編」「帯編」に続き、今回は「羽織編」をお届けいたします。コートなどもこれに準じますので、参考にしていただけると幸いです。
日常的なものあれば、本当にどれをどのように合わせても自由だと思いますが、今までのきもののしきたりの中で、ここさえ抑えれば安心というポイントもあると思います。
例えば、袷の羽織から紗の羽織はいつから切り替えて着たらいいの? など、口には出さなくても悩んでいる方は多いのではないでしょうか。コートや道行も同じことです。
寒いなと思ったら袷の羽織
女将の場合は、ちょっと寒いなと思ったら袷の羽織を手にとります。
洋服でも、セーターやトレーナーだけで外にいる人を見ると、ちょっと寒いな、コートやジャンバーを羽織ったらいいのに、と思うような感覚ってありますよね。それと同じようなイメージで、袷の羽織も登場します。
無地感の強いもので、ちょっとドレスアップしたときに使いたいような羽織は、
柔らか物や紬でも無地系の上品な装いのときに使います。
またカジュアル感の強い装いのときには、女将は男仕立ての羽織を愛用しています。女物と何が違うかというと、袖の振りが身頃に縫い付けてある「人形仕立て」という形になっていることです。
なぜ男仕立てを愛用しているかというと、まず振りが閉じているので暖かいということ。それから、きものの袖丈が違っても振りの揃いを気にしないで着られるからです。
今はまだカジュアルダウンする装いだという意識はありますが、今後はこれがスタンダードになるかもしれません。先日藤井絞りの社長と、羽織の脇のマチはいらないのではないかという話をしました。意味があって存在しているというものではありますが、柄を合わせたりする場合、染める側も仕立てる側も難しいので、マチがない形を模索されているそうです。そういった新しい挑戦も素晴らしいことですよね。
話が逸れてしまいましたが、冬が終わって暖かくなってくると、紗や夏物の羽織に切り替えていかれると思います。
その間の時期に実は、単衣の羽織というものも存在します。見た目は袷だけれど、袷よりも涼しいので、温暖化が進んだ今、袷の羽織をお持ちであれば次の1枚にお考えになるのもいいかと思います。暑がりさんにもおすすめです。
きものと同じように、袷に比べると少しぺらっとした感じにはなりますので、生地はしっかりめのものを選ばれたほうがよいと思います。
紗の羽織は彼岸から彼岸まで
さて、暖かくなってくるといよいよ透け感のある羽織の出番です。
女将の場合は3月半ばすぎくらいから、袷のきものの上に羽織っています。
でも、3月から紗の羽織は早すぎないかと思われるかもしれません。若い頃の女将も悩んでいました。
そんなとき、津田家の女将に伺ってみたところ「紗の羽織はお彼岸(3月)からお彼岸(9月)までよ」と教えていただいたんです。
今から20年以上前の話ですから、今では終わりの時期はもう少し伸びて10月でもいいかも、と思っています。
薄物の羽織をそんな時期に? と思われるかもしれませんがちょっと前にレースの羽織が流行って、それは季節気にせず1年中着るという着方で、最初に真冬にレースの羽織を見たときはちょっとびっくりしたものですが、寒々しく見えなければそれもいいものですよね。
そんなわけでちょっと透け感のある羽織は3月から5月の頭くらいまで着ます。きものが単衣の時期になると、透け感の強い羽織を着ます。
きもののしきたりの中で、「羽織ものを着るのは上品」という考え方があります。帯しつけ(なにも羽織っていない帯姿)で出歩くのはちょっと、というものですが、なかなか暑いのに羽織ものを着るのは大変ですよね。
単衣の時期からは帯しつけでよい、ということにはなっているので、無理に羽織ものを着ることもないと思います。最近は袖なしの羽織ものを着ている方もいらっしゃいますが、お好みでよいと思います。
真夏は着ないで、すこし秋の気配を感じ始めたる9月ごろからまた薄物の羽織を着る。そして10月に入り、ぐっと寒さを感じたら袷の羽織に変えていく‥‥というのが女将流です。
まとめると
〜3月頭袷の羽織
3月半〜5月薄物の透け感の弱い羽織
5月〜透け感の強い羽織
夏着ない
9月〜透け感のある羽織
10月寒くなってきたら 袷の羽織
移り変わりの間に単衣の羽織があるととても便利。というところでしょうか。
1枚あると便利な黒の紗羽織
あと、女将は仏事にもきもので行きますので、紋入りの黒羽織を袷、単衣、紗、絽と4枚持っています。普通の方はこんなに必要はないですが、黒の紋なしの薄物の羽織が1枚あると本当に便利です。絽だと正式感が強くなってしまうので、紗か紋紗がおすすめです。
おしゃれにはもちろん便利ですし、紋が入っていなくても色でお悔やみの気持ちを表すことができると思います。いろいろなご意見はあると思いますが、きものは、相手に対する敬意を表すのにとてもよいアイテムだと思っています。
臨機応変に季節の移ろいに対応しながら、いろいろな場面で着ていただけるとよいと思います。
この辺りのお話をじっくりと女将が説明している動画もぜひご覧ください!
【たかはし女将的!季節の移ろい方~羽織編~】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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普段使いにおすすめの草履・下駄はズバリこれ!
下駄は底の形と鼻緒の裏の生地で選んで!
今回は、普段使いの足元のお話をしたいと思います。
まずは夏といえば、下駄。下駄といえば2枚歯でからんからんと音をさせてちょっと内股でつつっと歩く姿は憧れだけど、靴に慣れてしまった私たちにはちょっとハードルが高い履物かもしれません。
そういう点で右近下駄はつまづきにくいので、おすすめです。今は、まったく歯のないものも増えています。一脇さんの木草履も、そういう下駄の一種でしょうね。高さもなく、気軽に履けるものです。
歩き慣れていない方、転ぶのが怖い方には底がフラットな船底下駄をおすすめします。歯がないのでひっかかる不安がなくなりますよ。
底の形もそうなんですが、実は気にしてほしいのは「鼻緒の裏の生地」。必ず触ってみてください。
やっぱり浴衣のときは素足に下駄が清々しくて素敵だけれど、履き慣れていなくて皮がむけちゃった、なんていう経験をした人もいるのではないでしょうか。
そうならないためにも、鼻緒の裏に使われている別珍(べっちん)という生地が、なるべく肌あたりが柔らかいものを選んでください。手を入れて触ってみるのとわかります。
それでも慣れていないと痛くなってしまうこともあるので、裸足で下駄を履いておでかけするときには絆創膏を5枚くらい持ってでかけてください。ポイントは「皮が剥ける前に、痛いと思ったらすぐにそこに貼る」です。我慢しないで、すぐ貼りましょう。
普段草履の女将おすすめ3選
礼装のときの草履は、台の高さがあることが大切です。また白っぽいもの、金銀などのキラキラ感があると改まった感じがあり、礼装向きになります。
普段使いの草履はそうでないもの、ということになります。台が低くて楽なものが主流です。台が高くても、色使いが粋だったりすればそれはおしゃれ用ですね。
また鼻緒が太いものが流行したときがありました。鼻緒が太いほうが、靴のようにずぼっとのめって履く人にも楽です。
素材の問題では、合皮か本革かという選択もあります。以前は合皮の草履はリーズナブルで、1万円くらいでいろんな色で楽しめたり数を揃えたりできたものなのですが、最近合皮の値段が上がっているのです。2万円以上になっていきているものも多いので、だったらあと少しプラスして本革の草履にしてもいいのではないかと思う理由があります。
本革草履のおすすめポイント
まず「汚れや傷がつきにくい」ということ。ついた汚れも手入れをすればすぐにとれます。合皮は足の跡とかもつきやすく、なかなか汚れがとれにくいものが多いです。また合皮はちょっとぶつけたりするとすぐ傷になってしまいますが、本革は傷もつきにくい。丈夫です。
そして「長持ちする」ということ。実は合皮は水分や空気を通しやすいのか、中の芯材と沿いが悪くなってしまうのか、変な音がしてだめになってしまった経験を何度もしたことがあります。台が割れてしまったりもします。
本革のものはそれがなく、30年以上履いているものもあるくらいです。長い目で見ると、お得だと感じています。
日常使いのものこそ、本革の草履をおすすめしたいです。逆にときどきしか出番のない礼装様はむしろ合皮という選択もありかもしれません。
本革の草履にもデメリットはあります。それは「底が滑りやすい」ということ。宣伝になってしまいますが、たかはしきもの工房では「守さん」という両面テープではりつけるだけで底を滑りにくくし、また鼻緒のすげ跡から水が染み込むのを防ぐ商品を作っています。これがほどよく滑らず止まりすぎず、歩きやすい優れもの。おすすめです。
カレンブロッソもやっぱり便利!
日常使いの草履のおすすめはもうひとつあります。それは「カレンブロッソ」です。台がEVAという素材でできていて、雨や雪にも強くて滑りにくく、長時間立っていても絶妙なクッション性があって疲れません。台の側面が汚れても、その部分を洗えば綺麗になります。
難点は鼻緒が取り替えられないこと。一部取り替えられるものもありますが、靴などを履き潰す感覚で履く方も多いのではないでしょうか。
女将のマイブーム「雪駄」
最近の女将が普段使いに愛用しているのが、男性用の雪駄。実はこれがらくちんなんです。小さい台を選べば、女性でも履けると思います。
たかが履物、されど履物。足元のおしゃれはとっても大事ですよね。そしてやはり「歩きやすい」ということが大切です。そんなに安いものでもありませんから、ぜひ後悔しないよう草履や下駄を選んでいただけたらと思います。
あちこち回り道をしながらしっかり草履や下駄のおすすめポイントについて熱く語っている女将の動画はこちらです。
【後悔しない!女将的、草履・下駄の選び方&おすすめ紹介】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
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ズボラさん向け!しつけ糸の簡単な取り方
しつけ糸はどうしてついているの?
新しい着物を購入したとき、「しつけ糸」がついていますよね。
しつけ糸は、取ってから着るもの。
どうせとってしまうのに、なぜついているのでしょうか?
着物は仕立て上がってから、寝押しや座り押しなど体の重みで優しく折り目をつけていくものなのです。これもSDGsの考え方とも通じるかと思うのですが、アイロンやコテでしっかりと折り目をつけてしまうと、仕立て直すときに折り目が消えなかったりします。
また、アイロンなどできちっとプレスしすぎてしまうと、生地もふっくら感がなくなり、ペラペラな印象になってしまうことも。つぶれすぎず、ふわっと絶妙にしかも取れない折り目を仕上げるためにしつけが必要なのです。
しつけがあることで、着物がずれることなく折り目がつきキレイに仕上がるというわけです。
意外と重要な役目がある「しつけ」。
なくてもいいんじゃない?とおっしゃらず、これがあるから着物がキレイに仕上がっているんだな〜と思ってあげてくださいね。
女将流:しつけ糸の取り方
袷の場合ですが、袖と裾にしつけがかかっています。
しつけは、地域やお店、仕立師さんよってかける場所が違うことも。衿にかけることもあります。
袖のしつけの取り方
袖の部分はたいがい袖口をぐるりと囲んで、1本の糸でしつけされています。
たかはしきもの工房の場合は、玉結びを外に出して外しやすいようにしています。以前は玉結びが見えないようにする=袷の内側にすることが美しいとされていたのですが、それだと糸の端がどこにあるかわからず、取りにくいということで、このようにしてあります。
糸の端が見えないようにされている場合はハサミで切ってください。
袖口の付け根のところに糸の端があります。この玉結びのところ(糸の端)を持って、静かにひけなくなるまで引っ張ります。
引けなくなったところで、指で抑えてプチッと糸を手で切ります。
ハサミを使わないので布を傷つける心配もありません。
あとは、おなじようにするか、指で糸を引き抜いていけばとれます。
袖口の付け根のところは、かがってある場合もあります。たかはしでは、そこがかがってあるとしつけをとりにくい、ということで今はかがってありませんので、とても取りやすくなっています。
袖の丸みの部分も、かがってあることが多いです。たかはしでも、この丸みをキレイに抑えるため、この部分はかがってあります。
無理に引っ張らないで、かがってある部分の手前で糸を一旦切って、そっと引き抜けばかがってある部分もするっと取れますのでお試しを。
あとは、袖の袂の部分の玉結びをひっぱれば、するっと糸が抜けて袖のしつけ取り完了です。
端のしつけが見えないように止めてあったり、返し針をしたりしてある場合には、無理をして引きちぎるより、ハサミで糸を切ってとったほうが、布を痛めないかと思います。
裾のしつけの取り方
裾も同様にしつけ糸をとっていきます。
襟先の下のところに糸の端がありますから、玉結びを持って糸をひっぱり、ひけなくなったところで指で抑えて、糸を切っていきます。
中に玉結びをしてあって糸の端が見えないときは、最初もハサミで切ってくださいね。
裾は衽(おくみ)の角などかえし針をしてある場合もありますので、そういう場合は袖と同じように一旦そこで押さえて糸を切り、無理に引っ張ったりしないでください。
反対側の衽の角まできたら、あとは逆に襟先の玉結びを探してそれを引けばしつけ糸がするっと抜けます。
これでしつけ糸取りが完了です。
いろんなやり方があると思いますが、ズボラさん向きのしつけ糸の取り方のご紹介でした。
ぜひぜひ実際にしつけ糸を取っているところ、女将の動画をご覧くださいね!
【しつけ糸のいろは&取り方】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」
更新情報はInstagramで発信していく予定です。
Instagramを登録されている方は、是非「たかはしきもの工房…