100年前のお振袖
お得意様の娘さんが仙台に嫁いだ。
お相手の家は長く続いたお家柄で「婚礼にはこの着物を着てほしい」と渡された振袖がそれはすばらしい品物(♡o♡)
昔のてろりとした肌触りの縮緬、ほどよく枯れて深い色合いを醸し出してる友禅柄、この振袖を纏った女性達のストーリーにさえ想いが及ぶ。
こういうのを役得というのだろう、その着物の裄を直してほしいと頼まれた。
さあ、これからが大変!
てろりとした肌触りはとってもいいのだけど、解くとなるとこれ以上神経を使わなきゃならない代物はない、なんと言っても生地自体が痛んでいればアウト(>o<)
穴を開けたら裄を出すどころか着ることさえ出来なくなる。
思った通り糸はキシキシいっている。1目1目切ってはピンセットで抜くというような細かいお仕事になったが、幸い色の傷みはなく黒地にもかかわらず彩色をする必要はなかった。やっぱり昔の染料はすばらしい~、純天然染料なんだろうな~。
解くのにものすごい時間が掛かり、多分利益率や時間給換算にすればこれ以上割りの悪い仕事はないというものであったが、そのリフォームの出来映えに仕立屋さんとしばし見惚れ、お金では買えない幸せを存分に味わった。
昨日婚礼での写真を見せて頂いた。
振袖のすばらしいことといったらこの上なかったが、総刺繍の半襟がそれを数段豪華に演出している。この半襟も100年前のもの、すごく汚れていたのを京都のしみ抜き職人さんに綺麗にして頂いた。このお仕事もお見事!!
当日の会場でも大きなため息が聞こえたというその振袖姿の花嫁さんはこれ以上ないというくらい愛らしく幸せそうだった。
私まで感動して目頭が熱くなるくらい幸せそうだった……。