きものの迷子を防ぐ先人の知恵「渋札」とは?【きもの初心者必見】
こんにちは。たかはし新人&きもの初心者の佐藤めぐみです。
既にご存じの方はもちろん、こちらの新人ブログ記事をご覧になった方なら、着物にはご自宅で洗える着物もあることをご存じかと思います。
しかし、ご自宅では洗えない着物は、悉皆屋をはじめとしたプロにお願いしますよね。
ちょっとだけ想像してみてください。
もしもプロにお願いしたあなたの着物が迷子になってしまったら・・・。
「大切な着物だからこそお願いしたのに(泣)」と、めちゃくちゃ困りますよね。
そんな着物の迷子を防ぐため、先人の知恵により古くから使われている必須のアイテム(道具)!
今回の新人ブログは「渋札(シブフダ)」についてお伝えしてまいります。
茶色いこより「渋札」とは?
ある日のたかはしにて、店長が茶色の紙で「こより」を何枚も作っていたのです。
※上が茶色い紙をよった後のもの、下がよる前のもの
私にとっての「こより」は、鼻をツンツンしてくしゃみを出すティッシュ製のもの(;’∀’)
これまで見たことがなく、何に使うのか気になったので教えてもらいました。
茶色い「こより」のお名前は「渋札」。
教えていただいた内容を、次にまとめました。
素材 | 和紙に柿渋をひいた渋紙 |
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形 | 細長の三角形(市販品に複数種のサイズあり) |
作り方 | 三角形の細く尖っている部分をよって細い「こより」状にします |
用途 | (悉皆業での場合) お客様からお預かりした着物1枚1枚の表地、八掛、胴裏などに渋札をつけ、着物をほどいた場合でも生地が迷子にならないようにします。 渋札にはお客様のお名前の他に、伝票番号や染色や洗濯などの処理法を記載し、加工指示書の役割もあります。 |
この「渋札」は悉皆業には必須のアイテムの一つとのことですが、「そもそも悉皆業とは?」どんな仕事をする職業なのか、あらためてご紹介していきます。
たかはしのはじまりでもある悉皆業とは?
悉皆には、「すべて、残らず」という意味があるように、着物に関するあらゆる相談を受けてくれるところが悉皆業です。
「”しっかい”は、”やっかい”」という言葉があるそうで、さまざまな問題に的確に対処しなければなりません。
お店により対応範囲に違いがありますし、仕事の一部としては、
- しみ抜きや洗い張りなどの洗濯
- 染め替えや色かけなどの染色
- 裄直しや袖丈直しなどのお直し
- 白生地から図面、染め、仕立てまでのお誂え
- 着なくなった着物のリフォーム
などなど。
これら悉皆業の中で使用される目印には、自ずと次のような特徴が必要とされたでしょう。
- 複数の工程を経ても破れない丈夫さ
- 水や染料に強い
- 蒸しの熱に耐える
- 着物の生地を傷めない
このような特徴を兼ね備える素材として、和紙に柿渋をひいた渋紙が用いられてきたのですね。
ちなみに柿渋は、青い未熟な渋柿を潰してろ過した果汁を発酵熟成させた液体です。
日本では古くから、塗料や染料として生活の中で活用されてきました。
その主な効果としては、次の通りだそうです。
- 防水・補強効果:塗布すると柿渋が固い被膜となり防水性と強度が増す。
- 防虫効果:固い被膜が衣類や書物につく害虫から守る。木材を白アリから守る。
- 防腐効果:整菌作用からカビなどから木材を守る。
和紙に塗った柿渋により、防水性や強度が高まるという先人の知恵が「渋札」には詰まっているんですね。
※メンテナンスする着物に付けた渋札
ある日目にしたこよりから、先人の知恵の恩恵を受けている一つを知ることができて、ありがたい気持ちで心がほこほこします。
たかはしでのお仕事の中で見つけた「それって何ですか?」や「着物って面白い」など、引き続きお伝えしていきたいと思います。次回の記事でまたお会いしましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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