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浴衣をきもの風に楽しむためのちょい広バチ衿

夏に浴衣を着るのに、浴衣としてはもちろん、きもの風にも着たいと思ったことありませんか?

以前、綿麻や麻のきものや浴衣を、浴衣としてもきもの風にも、どちらも対応できるようにするために、ちょい広バチ衿が良いですとお伝えしました。

以前、ご紹介した「ちょい広バチ衿」はこちら
https://k-takahasi.com/blog/2022/10/10887/

「ちょい広バチ衿」の動画はこちら

この動画でお伝えした「ちょい広バチ衿」の仕立て方について、誤解を生んでしまったようなので今回、改めて「ちょい広バチ衿」についてお届けしていきます。

「ちょい広バチ衿」≠「広衿をバチ衿にしたもの」

以前、紹介した動画を見た方が、「ちょい広バチ衿」にしてくださいと呉服屋さんにお願いしたら、呉服屋さんが困ってしまったということがあったそうです。実際、呉服屋さんから直接お問い合わせをいただいたこともありました。

たかはしきもの工房のYouTubeの動画のコメント欄にも、
「ちょい広バチ衿にしてくださいと伝えたら、仕立て屋さんから裏衿が必要です。」
と言われたという書き込みをいただきました。

そして、「ちょい広バチ衿」には裏衿を使うのかという問い合わせもいただいたのです。

さらに、「あづまやきものひろば」の柴川さんが、「ちょい広バチ衿」について動画の中で話されていたというのですが、女将が伝えたかった衿とは異なっているようでした。

柴川さんの話に出ていたのは、よくアンティークのきものや、おばあちゃんの箪笥から出てきたきもので見かける衿のことかもしれません。

広衿のきものは、衿の内側にある「引き糸」や「スナップボタン」を使って衿を折りますが、その衿の部分を元々縫い留めてしまう仕立て方があります。

恐らく、日常できものを着る場合に、衿を折って着るのは面倒くさいから、衿を折る必要がなくなれば便利だからという理由でできたのではないでしょうか。

広衿のきものの衿を折って縫う仕立て方を「ちょい広バチ衿」と想定したことで、仕立て屋さんや和裁師さんにも誤解が生じてしまったのではないかと予想されます。

夏に浴衣や夏きものを楽しむためのご提案としての「ちょい広バチ衿」は、より涼しさを重視したいので、夏物に裏衿を付けるということはいたしません。なぜなら、生地の厚みで衿が膨れて、余計に暑さを感じてしまうためです。

たかはしで提案する「ちょい広バチ衿」とは、バチ衿の幅を少し広げることだけを指しています。

「ちょい広バチ衿」=バチ衿の幅を少し広げること

衿幅の違いがどんなことに影響するのかをお伝えしていきます。

二種類の浴衣に衿を入れてきもの風にしていますが、比べると衿幅が違うことが分かると思います。

向かって左側は、既製品の浴衣です。
衿幅が背中心で約5.5cm、胸元の部分で約6.5cmと、背中と胸元でおよそ1㎝の差があります。

「バチ衿」とは、三味線のバチのように持ち手から先端に向かって幅が広がっているように、背中から衿先の方に向かって、衿幅が少しずつ広がっている衿のことです。一方、背中から衿先に向かって一定の衿幅の衿を「棒衿」と呼んでいます。

一般的な既製品の浴衣は、「バチ衿」になっていて少し胸元で衿幅が広くなっています。

向かって右側は、綿麻の反物を浴衣に仕立てたものです。

きもの風にも着られるようにと背中心では約5.5cmですが、胸元で衿幅が広くなるようにした衿になっていますが、これも「バチ衿」です。裏衿を付けずに衿を半分に折って作っている「バチ衿」になります。

女将は身長が高め(164㎝)ですし、きものについて様々な実験をするために、背中心の衿幅を5.5cmではなく、6㎝にして仕立ててみたところ、暑苦しく感じたそうです。

そのため、たかはしでは背中心の衿幅は5.5cmを推奨します。身長が170cm以上の方であれば、少し衿幅を増やしても良いかもしれません。たとえば、IKKOさんは、一般的な衿幅に比べると相当衿幅を広くしています。

きものの寸法が考えられた昔と今とでは、平均身長が変わっています。学校保健統計調査によると、約100年前と比べ、女性の平均身長は約10cm弱高くなっているそうです。

きものの寸法は着る人の身長や体型に合わせたものであるので、縦に伸びた分、横幅がまったく変わらないわけはないと考えています。たとえば、比率で考えた時、縦に120%伸びたら、横に120%の幅になるわけです。

そのため、身長や体型に合わせて衿幅を調整した方が、きものの着姿がキレイに見えます。

「ちょい広バチ衿」にするための衿幅は?

「ちょい広バチ衿」に仕立てるために、衿幅をどの部分から広げると良いのかというと、
女将の結論としては、次の通り。

  • 背中(背中心)の衿幅は5.5cm
  • 耳の下、肩のあたりから少しずつ衿幅を広げていく

衿を入れずに着ると、向かって左側の方が涼しげに感じませんか?

ただ、身長が高めの方の場合、左側の衿幅だと、衿元が貧相な感じに見えてしまう場合もあります。

せっかく浴衣を仕立てるのであれば、浴衣地も質の良いものが多く出回っていますし、価格も高くなっているので、きもの風にも楽しめると着られる機会も増えて良いですよね。きもの風にも着るためには、衿幅を広くすると胸元がゆったりとしバランスよく見えます。

どのくらい衿幅を広げれば衿元や胸元がキレイに見えるのかを、衿幅のイメージができるように、5.5㎝幅に畳んだものを背中にクリップで留めています。

背中の衿幅と同じ5.5cm幅のまま「棒衿」にした場合のイメージです。

江戸前のチャキチャキしたような躍動感や普段着のカジュアル感があって、可愛らしさも出る衿幅です。

きもの風にも着たいと考えると、衿幅を広げた方が良いと思います。

既製品の浴衣の場合だと、6.5cmぐらいなので「棒衿」に比べても、あまり大きな差は感じないかもしれません。

※左側が「棒衿」で、右側が胸元あたりで衿幅が約6.5cmの「バチ衿」

さらに衿幅を広げて胸元で7.5cmぐらいの幅になると、きもの風に感じられると思います。

このように衿幅によって、着姿の印象に違いが出ますよね。
たとえば、礼装用の訪問着の場合、衿幅を広くすることによって、カジュアル感よりもフォーマルで優雅な雰囲気に感じられます。

また、衿を広くすることで、肩線が外側に移動するので、肩幅がスッキリと見える効果もあります。

ただ、身長が低い方や細身の方が衿幅を広くすると、バランスがよくありません。身長が高く、大柄の男性の場合には、衿幅を広げた方がバランスよく着こなせるはずです。また、女性も同じように、たとえば、とてもグラマラスな方は衿幅が広い方がスッキリと見えます。

このように衿幅による見え方の違いを踏まえて、浴衣での「ちょい広バチ衿」を提案しています。

きものの衿は、基本的には反物を半分に割った生地を使用して作ります。反物幅が40cmとすると、半分に割ったものが20cm幅の生地。その生地をさらに2つに折ると10cmあるので、縫い代部分を除くと、最大で9cmの衿幅を作ることができます。

ところが、9cmの幅となるとものすごく広い衿幅になるので、広げたとしてもせいぜい8cmくらいまでとなるでしょう。

ただ、できるだけ衿を汚したくないと衿幅を細くと思われるかもしれません。でも実は、衿を汚れにくくするためには衿幅で調整するよりも、衿を首からどれだけ離して着付けられるのかが大切です。

衿が首にくっついてしまう場合は、首の後ろの衿を横に広げるようにして着付けることで、首から衿が離れるので、衿幅を広くしても衿が汚れにくくなります。

普段着テイストを残しつつ、衿を入れることできもの風に着る場合には、身長や肩幅、胸幅によって、7~8cmぐらいで衿幅を割り出すのが良いでしょう。

背中心の衿幅が約5.5cmで、胸元に向かって衿幅をどのぐらいに広げると格好いい着姿になるのかを把握するために、自分で鏡を見ながら手持ちの広衿のきもので試してみても良いかと思います。

浴衣を浴衣として着たり、衿を入れてきもの風にも着たりと、夏のきものの楽しみ方に繋がれば嬉しいです。

女将による「ちょい広バチ衿」の動画はこちらをご覧ください。

【ゆかたをきものチックに楽しむ!ちょい広バチ衿のすすめ完全版】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」


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