令和2年8月

きものよきもの
夏はお祭り!のはずですが、今年はどこもかしこも中止ですね。何とも寂しい限りです。

気仙沼も八月の第一土日で行われるお祭りがオンライン中心での開催ということになり、そうなると当然、浴衣も動かず、お店も寂しいなぁ~という日々です。

近年は浴衣をきものっぽく着ることで、夏きものを楽しんだ気分になれることから、そこを入り口として、きものの世界に入ってくる方も多いように思います。
これについてはここ五~十年くらいの傾向でしょうか。

確かに昨今の浴衣は、とても上質になっています。
ホームセンターでも販売しているぶら下がりの数千円浴衣は論外として(使い捨て的な品質という意味)、反物で販売されている一万円台以上のものはもはや、本来の浴衣ではないと思っています。

本来の浴衣はその名のごとく、湯上りに着る寝間着的なものでしたから、織りもあまく、染もリーズナブルなものでした。
座れば、すぐに膝やお尻が伸びてしまうので強化するために、お尻のところだけ共布でいしき当てが施されたものです。

仕立ても簡易だったから、縫い賃も安価でした。
見た目の素敵さから言えば、今の浴衣は何せ立派なので、そちらに軍配が上がると思うのですが、本来の浴衣が絶対によかった点は、圧倒的な涼しさと肌触りのよさです。

なににでも一長一短はあるものですが、それを思うと昔の浴衣が懐かしい気持ちになります。
おうちきもの派ではありませんが、昔の浴衣ならリラックスホームウエアになりえる気がします。

生地や染めも良くなって、仕立てまで単衣と変わらない(今は単衣きものと同じようなお仕立てになっています。なぜなら、浴衣もお出かけ着なのですから。)ってことになれば、それはもう浴衣というよりは夏の綿きものということだと思います。

私としては、浴衣という呼び方をもうやめて、夏きものと呼んでしまえばいいとさえ思っています。
そのくらい、昨今の浴衣は上質なものになりました。

今の浴衣と綿きものの明確な差を挙げてみてと言われたら、ほぼないと言っていいかと思います。
以前は綿であれば一様にバチ衿でしたが、今は広衿に仕立てる方もいますから、それくらいでしょうか。
時代とともにどんなものでも変化します。たとえそれが伝統文化ど真ん中のきものであっても、です。

何はともあれ、夏きものよりは浴衣の方がハードルを感じないで済むことだけは確かです。そう考えれば、本来の浴衣とはまるで違うけど、浴衣っていう呼び方を残すこともありかな。
こういうことは今の人たちが考えてくれればいいのかも、です。私など、昔を知っているだけに新しいことが入ってこないってこと、ありますから~