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初心者の着付けも楽になる着やすいきものの生地感とは

きもの初心者の方から「着付けを練習する時、どんなきものが良いですか?」と聞かれることがあります。

きもの初心者の方たちが、その人にとって一番覚えやすい着付けを覚えるまでは、着にくい素材のきものは避けた方が良いと思います。なぜなら、まだ手の使い方に慣れていないからです。

たかはしでは、きもの初心者の方でも着やすいきものとして、ちょっとマットな質感の紬をおすすめしています。

なぜその結論になったのかも含めて、三種類の生地を例にしてお伝えしていきます。

これから着付けを練習するきもの初心者の方はもちろん、すでに自分で着られる腕があるのになかなか上手くならないと感じている方も、生地による着やすさの違いを知ることで、もっと楽に上達できるかもしれません。

やわらかものの小紋、マットな紬、浴衣を例に、生地感による着やすさの違いを知っていただければと思います。

摩擦力による生地感の違い

よく大島紬は着やすいという方がいらっしゃいます。確かに着きやすいです。
ただ、まだ手が慣れていない初心者の方が大島紬を着ようとすると生地が滑ります。

生地はその質感によって表面がツルツルとして滑らかな生地(摩擦力が小さい)と、表面に凹凸があって摩擦力が大きい生地とに大別されます。大島紬はツルツルとしている生地に属します。

結城紬はどちらかというと摩擦力の大きい生地に近いです。ただ、絹なので木綿に比べると滑ります。程よく滑って程よく止まる生地というのは、摩擦力が大きすぎないものです。

たとえば、十日町きものや結城紬などは、マットな質感の紬です。他の生地と比較するために、結城紬を用意しています。

やわらかもののきものは一見すると着やすそうに見えるかもしれません。でも実際は、着付けに慣れないうちは生地がズルズルと手から逃げやすく扱いにくいです。生地に落ち感があるため、生地を上に上げようとしても下に落ちやすいので、いつもの要領でやってみたらおはしょりが長くなるということもありがちです。

生地をキュッと体に張らないとスルスルと落ちていくので、手が慣れていないと扱いが難しいと思います。

ここまでの話から、ツルツルしていないし、汚しても自宅で洗えるし、木綿きものが気軽で良いんじゃない?と思われるかもしれません。確かに汚れた時のことを考えたら、浴衣で練習すれば良いのでは?と思うのも当然です。

たかはしスタイルの着方教室では、一番最初から浴衣は教えていません。

なぜかというと、生地の摩擦力が大きいので、上前と下前を重ねた状態で生地を引っ張っていくと、生地が滑らずゆがみができます。そのため、きれいな着姿にするには、体から離して重ねるようなコツが必要です。

では、生地感による着付けやすさの違いを、ボディへの着付けで見てみましょう。

初心者が特に着にくいやわらかもののきもの

生地を体に沿わせるようにぴったりと当てていないと、きものが全部下に落ちていきます。
そうならないためには、ぴったりとお尻に生地をつけた状態で生地をずっと持っていられたら生地が落ちにくいです。

このコツは、今から新しく習いますという方には難しくて、最初は体にぴったりと沿わせることなく、ゆとりがある状態で着付けようとしてしまいがちです。するとどんどん生地が落ちていきますし、片方の手で押さえながら上前に嚙んでいる下前の生地を抜こうとすると、手で押さえていない方の生地が落ちていったりと、とても扱いにくいと思います。

上半身の胸元をきれいにすることは難しいことではありませんが、下半身をきれいにするとなると、落ち感のあるきものはすごく大変です。

初心者にも着やすくおすすめ!マットな質感の紬

マットな質感の紬系のきものは、持った時点で軽いです。上前を合わせた後、下前を体にぴったりと沿わせることが無くても、生地が落ちていくことはありません。

たとえば、生地を押さえている手を替えるという時も、一か所でも押さえておけば、生地が止まっててくれます。

ゆるく体に沿わせてあげれば、程よい摩擦力があるので生地が止まっててくれます。
腰ひもを結ぶところをきれいに整える時も、生地が止まっているのでそれほど難しくなく生地を整えることができると思います。

きものを着付ける時、生地を体にピタッと沿わせることは基本ですが、最初はそれがうまくできないことが多いので、生地が軽くて押さえやすく扱いやすいきものが着やすいです。

本当は難しい浴衣や木綿、ウールのきもの

上半身だとわかりやすいので、腰ひもを締めた状態で他の生地との違いを見ていきます。

腰ひもを締めた後、おはしょりをトントンして整えていきます。
先に下前を整えた後、上前を体に沿わせるようにすると、生地の摩擦力が大きいため、上前の生地と一緒に下前の生地が動いてしまいます。

きれいに整えるためには、生地を体から離して重ねるようにします。

生地目も整えないと生地がぶかぶかしてきれいに整えることができません。
おはしょりの中の下前の生地も体に合わせてきれいに折りたたむ必要があります。

たとえば、誂た浴衣で生地にハリ感のあるものだと、ノリによるハリがあってきれいに着るにはコツが必要で、きもの初心者の方だと難しいわけです。

生地を下に下げたいと思っても、摩擦によって体に吸いついたようになって、なかなか思うように動かないと思います。生地を動かすためには、体と生地の間に手を入れて、体から生地をいったん離すと動きやすくなります。

生地目をきっちりひとつひとつ整えていくのが難しい生地は、摩擦力が大きい生地です。
木綿やウールもその傾向があります。

着やすい生地を選ぶための摩擦力を何で見分ける?

着るものの摩擦力の大きさを何で見分けるのかというと、毛羽立ちの多さです。

麻以外の天然繊維は生地に対しての毛羽立ちが多いです。毛羽立ちが多いほど、摩擦力が大きい生地になります。絹も天然繊維ですが、糸の生成によってツルツルと滑らかになっており、摩擦力が小さくなります。

大島紬もどちらかというとツルツルとして手から逃げやすい傾向があるので、ちょっとマットな紬が良いと思います。

浴衣はきものに比べると、手に取る気軽さがあるせいか、浴衣ぐらい着られるんじゃないかとよく聞きますが、実際には浴衣をきれいに着付けるのは難しいです。

なぜなら、体の線は出やすいですし、生地の摩擦を意識しながら体から離して整えていかないといけないので、意外と難しいのです。

これから着付けを練習されるきもの初心者の方は、程よく滑って程よく止まる軽い生地を目指して練習するきものを決めていただければと思います。

写真だと伝わりにくいですが、動画だと生地感がよりわかりやすいです。女将による生地による着付けのしやすさの違いの動画はこちらをご覧ください。

【知れば着付けが楽になる!『初心者必見!』着やすいきものの生地感】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」


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