令和2年5月

きものよきもの

新型コロナウィルスを敵とみなす話ばかりが蔓延しておりますので、けっして良きものとは言いませんが、この騒動に教わったことを考えてみました。

まず、ものすごい売り上げの減少で数字に首っ引きです。弊社は7月末決算なので、とりあえず7月までの売上と経費の予想図を日々作っています。

日常的な状況では絶対にあり得ないことですが、そのおかげで弊社の経営というものについて、よくよく検証するいい機会になりました。経営者は数字に強くならなければと思いつつ、儲かっていればいいよねというように全くおおざっぱな想いのまま、日々に追われてきちんと向き合う機会を先延ばしにしていました。

危機的な今だからこそ、逃げようのない状況に背中を押され数字に向き合っています。不幸中の幸い、この使い方は変でしょうかね。笑

 

次に瓢箪から駒、の話です。

 

弊社はオリジナルとして80アイテムもの商品を作っています。だから生地の在庫も、ちょっとした家が建つくらい持っています。

生地によってはたくさんの量を買わないとだめなものもあり、出来れば減らしたいといつも念じているものが生地在庫です。ところがこの度、急遽マスクを作ることにしたのですが、その際、生地の調達に苦労せずに済んでいるのです。 だってみんなあるものですから。

しかもマスクを作ろうと思ったきっかけは工場の人が切れ端でマスクを作っているとわかったことと、まだまだ世の中にマスクは足りないんだと認識したからです。

 

とても大事なお話なのですが、目の前にある困難に対し弊社が貢献できることは何だろうと考えてみたら、縫製が出来て材料があるという事実でした。

有事の時にまず考えなければならないことは「自分たちで出来る社会貢献」なのだと震災を通して学びました。それが出来る会社は必ず強くなっていくという様もみてきました。今、マスクのパッケージをしながら思うのは、今はきものではない、マスクだけど、この騒動が落ち着いた暁には、よりきものを楽しめるようなものづくりを今のうちに準備しておくぞ!ということです。

 

仕事とは、誰にどのように喜んでもらえるかを一途に考え、それを行動と形にすることなのだと毎日肝に銘じています。

 

それから、これは怪我の功名というべきでしょうか。

きちんと働き、きちんと食べ、きちんと寝て、休日もある暮らしというものを久しぶりに楽しんでいます。

わぁーっと忙しいままだと副交感神経にスイッチが入らないまま、また戦闘モードということばかり繰り返していたのだと思います。忙しいことは好きなのですが、なんか、人らしい穏やかな暮らしだなと、これはこれでしみじみ幸せを感じたりしています。寿命が延びた気がします。