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きもの業界三大女将!?座談会・季節の移り変わりはどうすればいい?

きものを楽しむ中で、季節によって着分けるとき、たとえば、ネットの動画で見聞きした情報とお店で聞いた情報と、身近な人から聞いた内容とが、すべて微妙に違っていて、どれが正しいの?どうすればいいんだろう?と迷子になった経験はありませんか?

誰もが一度は経験されたことがあるのではないかという、季節の移り変わりでのきものの装いについて、きもの業界三大女将が本音で語っていただきました!

豪華ゲストお二方が気仙沼に

きもの英 女将の武田佳保里さん(以降、英 女将と表記)と、新宿津田屋 女将の津田厚子さん(以降、津田屋 女将と表記)の豪華ゲストお二方をお迎えして、たかはし女将から季節の移り変わりについて、お客様にどんな風にレクチャーしているのか、ご自身でどうされているのかなどを聞いてみました。


※たかはし主催のウニツアーにご参加のため来訪されたお二方

長年きもの業界にいるからこそ、そして自分もきものを着るからこそ、さらに、様々なお客様と触れ合っているからこその、しっかりと説得力のある、それぞれの見解をお届けしていきます。

季節の移り変わりをお客様にどのようにレクチャーしているのか、まずはたかはし女将から。

たかはし女将が聞いてみたかったこと

たかはし女将:
きものの季節について質問をいただいたら、私は、日常ならば何でも良いですよと伝えています。

たとえば、極論ですが真冬に麻のきものを着ても良いです。真冬に半袖のTシャツで過ごしている人を誰が責めますか、と。
仮に、寒そうだねと言うことはあっても、「あなたそんな格好じゃダメよ」と叱る人はいないので、きものも日常で着る分にはそれで良いんじゃないかと思っています。

要は、礼を尽くしてきものを着るときと、自分がファッションとして楽しむためにきものを着るときでは、置いている軸が違うのではないかと考えています。それも言いたくて、以前、「きものの不安をスッキリ解決!」という本を出しました。

お二人にも、お客様にどのようにレクチャーされていて、ご自分でもどのようにしているのかを聞きたいです。

紗の羽織はいつから着るの?

たかはし女将:
もう10年ぐらい前になりますが、あっちゃん(津田屋女将)に「紗の羽織はいつから着るの?」と、すごく不安だったので聞いたことがありました。

その時あっちゃんは、私にとって明確な答えとして「お彼岸からお彼岸までと思っているよ」と答えてくれました。

ああ、なるほどわかりやすいと思って、「3月から紗の羽織を着て良いのね?」とさらに聞いたところ、「季節の先取りは少し早くても良いし、実際に暑いじゃない。」と私はあっちゃんに教わったことがあります。

収録をしている今日は6月。三人とも単衣のきものを着ています。お客様の中には、紗の羽織を着ている方もいらっしゃったし、紗のきものを着ている方もいらっしゃいました。

私も、気温が25度を超えると明石ちぢみぐらいの透け感なら着ていますが、季節の移り変わりについて、お二人はどう思っていますか?

英 女将:
私は、紗の羽織については、5月1日から9月の彼岸までと考えています。3月の彼岸を過ぎたら単衣の羽織を着ます。冬の羽織をやめて単衣の羽織を着て、5月1日から9月の彼岸までは紗の羽織を着ようねと言っています。

このことと、きものの暑さ対策は別に考えていかないといけないと思っています。もうすごく暑いし、すごいでしょ。だから、4月でも5月でもきものの単衣を着ていいよと、そして襦袢も色付きの絽を着たり外にわからないようにして軽く着るのはいいと思います。

ただ、表に見える半衿は5月までは冬の素材の半衿を着ましょうと言っていました。濃い色の襦袢を染めて、冬の素材の半衿をつけて暑さ対策をするような形です。

三大女将でも難しい秋口の装い

たかはし 女将:
秋に入るときはどうしていますか?秋に入るのは、難しいですよね。

全員:難しいよね~(同意)

たかはし 女将:
私たちの年代では、季節は先取りと言われていたので、冬に入るのも早いのがお洒落だと。そういう風に教わったから、秋も先取りだと思っています。

英 女将:
私が教わった先生は大正生まれの先生で、「夏は急いで、秋は急がず」と言われていました。夏は次に来る季節を取り入れていくけど、秋は急がずなので秋の最後まで絽だと先生が言ってました。だから今の人は間違ってますと言われてました。

それを言われたときには、世の中ではお洒落は先取りという世の中になっていたので、たとえ先生がどんなに言っても、時代の流れとしては先生が言うようにはならないのではないかと思っていました。

たかはし 女将:
そうですね、時代の流れはありますよね。

英 女将:
本当に時代は流れていますよね。昔、私が子どもの頃は、6月1日よりも前に単衣のきものを着ていたら、そんな格好で外へ出かけるな、と追いかけ回されたでしょう(笑)。それでそのまま外に出ちゃいけないって。

たかはし 女将:
そんな中でも、市田ひろみさんのように、京都のど真ん中に居て、一年中単衣のきものを着ていらっしゃった人や、宇野千代さんのように、私は桜が好きだから、年中桜を着るのよと言いきっちゃう人もいて。ファッションリーダーは批判されることもあるのでしょうけど。やっぱり自分で選び取っていく、自分が決めていくということが大事なんでしょうね。

では、あっちゃん(津田屋女将)が気をつけていることは何ですか?

女将が大事にしているお客様の二つのこと

津田屋女将:
やっぱりお客様のニーズはすごく大事です。そして、そのお客様がどなたに聞いてそれを言っているのかということもすごく大事。

私たち販売する側が、こうしなきゃいけませんということを言わないようにしています。
お客様は、お店の人にちょっと肩を押してもらいたい気持ちがあるんですよ。だからこそ、これはどうなんですか?どうしたらいいですか?といっぱい質問をされるんだと思います。

だから、その質問に対しての答えを出さなければいけないので、最初の話にあったような明確な答えをお伝えすることも、ある意味、親切ではあると思います。

ただ伝えるときに、私はそう思いますけれども、先生やお母さま、おばあさまにそれをお伺いになってみてくださいと。その上で、ご自身がどう思うのかが一番大事だと伝えています。

たかはし 女将:
あっちゃん、流石!今の言葉に尽きますよね。私もお客様から聞かれたとき、私はこうしているけど、たとえば、お客様にとっての師匠や先生、先輩などが居る場合、その中で嫌がられるようなことはしない方が良いと思って伝えています。

師匠や先生などの意見との間を取るとか、その中で考えていく創意工夫はある意味楽しみだと思って。これをやったら怒られるんじゃないかとビクビクして苦しまないように、創意工夫するところが楽しみになるんじゃないかと思って伝えています。自分の主義主張や工夫があって難しいからこそ楽しんでいただけたらいいんじゃないでしょうか。

自分の近場の人たちの空気感も大事にしつつ、暑さなどの体感も気にしながら考えていくと良いんじゃないかと思います。

英 女将:
お客様にとっては、目安になるものが欲しいから、一般論としてこうですよという目安をお話しします。最終的には、たとえば、お茶ならお茶のご自分が属するコミュニティにならってくださいというのがあります。所属するコミュニティにたてついてまでやることでもないですから。

最終的に、三大女将の結論とは?

英 女将:
目安になるものはあるけれども、この40年間の間に変わったことも沢山あるんです。
私はこの中で一番若いけれども(笑)その中でも、昔はダメだと言われていたことが今は全然普通でOKになっていることもあります。

きものにはガチガチの決まりがあるように感じられるかもしれないけど、緩やかでも変わっていっていると思います。

全員:本当、変わってきてるよね(同意)

たかはし 女将:そういうことを踏まえると、あなたが決めなさいというのが結論です。やっぱり自分が納得していなければ、楽しむことができないと思います。

たとえば、誰かにこう言われましたという逃げを持つと、主体性が無いことになるので、本気で楽しめないかなと。主体性を持って選び取ってもらえたらいいなと私は思っています。

全員:そうだよね(同意)

英 女将:
方程式みたいなものにがんじがらめにならないで欲しいです。これは良いんですか?これはダメなんですか?と答えを求める人の方が多いかもしれません。

たかはし 女将:
人に決めてもらった方がある意味簡単だから、そうなりがちですよね。

英 女将:
だから、あなたは今、何を着たいの?とお聞きすることがあります。「手持ちのきものがあるんです」という場合なら、それをお召しになるにはこう合わせたらと付随したものを足していく提案をしてお手伝いをしています。

いかがでしたでしょうか。
さすが、きもの業界の三大女将が語る話は、説得力があります。
きものについての不安がフッと軽くなるような、とても心強く感じられたのではないでしょうか。

今後もし、きものについて不安を感じるような場面があったときには、この女将たちのおしゃべりを思い出して、きものをもっと主体的に楽しんでみてください。

それぞれの女将の見解はもちろん、人柄までもが垣間見える三大女将による動画はこちらをご覧ください。

【日本三大女将⁉に聞く!教えて女将!季節の移り変わりはどうしたらいい?】たかはしきもの工房「ズボラ女将の和装の常識を斬る!」

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